Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイリー

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10月第2週のまとめ

2011年10月08日

 3日はデヴィッド・スキナー(p)&アンダース・ロンネ・グロンセット(ts,ss)@ノルウェー大使館。スフインクスのメンバーでもあるデュオ・チームが、オリジナル、リゲティ、メシアン、モンク等を演奏。カヴァー曲のアレンジが興味深い。アンコールは「枯葉」だった。
 5日は宮野寛子5@BAJ。新作『ノーツ・オブ・コンフォート』のリリース記念ライヴ。PVを効果的に使用しながら、収録順に全曲を演奏した。ぼくがライナーノーツを書いている素敵なデザインのブックレットも必見。●宮野寛子(p)、馬場孝嘉(g)、早川哲也(b)、石川智(ds)、渡辺亮(per)
 8日はトゥーツ・シールマンス4@すみだトリフォニーホール。以下に「ジャズジャパン」12月号掲載のリポートを再録する。
 昨年5月に91歳でハンク・ジョーンズが大往生してから、多くのジャズ・ファンの心にぽっかりと穴が開いていた中、いやまだこの長老が健在じゃないかと注目を集めたのがトゥーツ・シールマンスだ。御年89歳。現役ジャズ・ミュージシャンではチコ・ハミルトンと双璧をなす。2000年代後半の活動をまとめた最新作『ヨーロピアン・カルテット・ライヴ』は日本でもお馴染みのカレル・ボエリー・トリオとの共演で、今回の来日メンバーは近年のステージをそのまま日本に運んでくる形になった。同作とはかなりプログラムを変えていたのが嬉しい。トゥーツが安住せずに日本のファンのためのサービスを考えてくれたのが明らかになったからだ。<イン・ユア?>から始まったステージは、<酒バラ><アイ・ドゥ・イット?><スノ・ピーズ>と、『アフィニティ』収録曲が序盤を占め、ビル・エバンスへのトリビュートがテーマであると浮き彫りになった。エヴァンスとの共演作は78年の同作が唯一だが、没後30年を超えた今でもトゥーツが変わらぬ友情を抱いているとわかって、ファンには堪らなく嬉しい。
 中盤に進むと『ブラジル・プロジェクト』を制作したほどMPB関係者との広い交流を反映して、ルイス・エサ、オスカル・カストロ・ネビス、ジョビンの3連続曲で、ホール全体を和ませてくれる。またスクリーン・テーマの<ミッドナイト?>と自作名曲<ブルーゼット>の、60年代に生まれた代表的な2曲に、長いキャリアを築いてきて今があることを再認識した。どこまでもサービス精神豊かなトゥーツは、<この素晴らしき世界>でルイ・アームストロングの歌真似まで披露すると、観客に大受け。アンコールの<バイ・バイ?>では客席から自然と手拍子が起こり、ステージとの一体感が生まれた。そして予期せぬ2度目のアンコールに応えた<セント・トーマス>は、当夜の選曲では異色だったこともあって得した気分。安定感抜群なボエリー・トリオの好演も特筆したい。●トゥーツ・シールマンス(hca),カレル・ボエリー(p,key),ハイン・ヴァン・デ・ハイン(b),ハンス・ヴァン・オーステルホウト(ds)

10月第3週のまとめ

2011年10月14日

 9日はPiano Collection@北とぴあ さくらホール。木住野佳子+中村由利子+村松健=トリプル・ピアノの東京初公演。近年特に邦人ミュージシャンの間でこのようなコラボ・ライヴが増えている印象が強い。同じ楽器の演奏者ながら、ジャンルが異なるがゆえの新たなサムシングを企図したステージなのだろう。「フェイス」「マイ・フェイヴァリット・シングス」「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」等を演奏。隣席のnoonさん(vo)と休憩時間に談笑し、新作『ワンス・アポン・ア・タイム』を受け取った。
 10日はヴォルフェルト・ブレデローデ・ソロ@松濤美術館。先頃ECMからリーダー作を出したオランダの新世代ピアニストが、昨年に続き2度目の来日。自作曲を中心とした美しい即興演奏だった。
 11日はボビー・コールドウェル@BBLT。70?80年代に人気を確立したAORの人気ヴォーカリストは、根強いファンが多かった。ポップスに関しては先日のジノ・ヴァネリといい、この時代が今も元気という現象が顕著だ。声量と声域は衰えていなかった。フュージョン好きとしてはアンドリュー・ニュー(as,ts,key,vo)をチェックできたのが収穫。
 14日は一噌幸弘3@渋谷メアリージェーン。学生時代に何度か訪れたが、その後は疎遠になっていたジャズ・スポットを、約30年ぶりに訪れた。様々な笛を駆使した超絶技巧に圧倒された。ダジャレMCは苦行。

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10月第4週のまとめ

2011年10月20日

 18日はガブリエル・ミラバッシ&アンドレ・メーマリ@イタリア文化会館。ブラジル原盤デュオ作『ミラマリ』が今年イタリアEGEAから再発されたチームが、待望の来日公演を実現してくれた。今回、主催者の意向もあり、ガブリエーレ・ミラバッシ&アンドレ・メマーリと改称。当意即妙・変幻自在の演奏に驚嘆。ガブリエーレのダンシング・クラリネットは本年度屈指の衝撃だった。
 19日はThe Core@ピットイン。北欧最強のモード・ジャズ・ユニットに、7月のノルウェー《コングスベルク・ジャズ・フェスティヴァル》で会ってステージを観ていたヨナス・クルハマーをフィーチャーした特別編成。終演後は3ヶ月ぶりの再会を祝った。●ヨルゲン・マティセン、ヨナス・クルハマー(ts)、エアレン・スレッテフォル(p)、トルビョルン・ゼッターバーグ(b)、エスペン・アールバーグ(ds)
 20日は山下洋輔ニューヨーク・トリオ@渋谷さくらホール。88年の結成以来、20年を超えて定期的な活動を続ける日米トリオとしては、最長寿の存在だ。ちょうど1年前に行ったコンサートとほぼ同じ内容で、その時は新作『ディライトフル・コントラスト』のリリース前だった。金子飛鳥ストリングスが加わって、華やいだステージに。

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スピリチュアル・ジャズの巨匠が六本木に降臨

2011年10月24日

 ファラオ・サンダース4tet@ビルボードライブ東京。同店のホームページに寄稿したライヴ・レポートを以下に再録する。
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 ファラオ・サンダースが遂に「ビルボードライブ東京」に初出演した。フリー・ジャズの嵐が吹き荒れた激動の1960年代に、ジョン・コルトレーン・グループでの鮮烈なプレイでその名を知らしめたテナー・サックス奏者。90年代以降はスピリチュアル・ジャズの人気と共に再評価され、来日公演で感動を呼んできた。
初日ファースト・ステージはまずアップ・テンポのナンバーからスタート。テナー・ソロはいつ果てるともなく続き、結局15分もの長時間にわたった。このロング・ソロはコルトレーンから受け継いだ演奏スタイルの1つにほかならない。その後ファラオはステージから姿を消して、予想通りメンバー3人による長いソロ・リレーが続く。再びトリオ演奏に戻ったのだがファラオは現れず、時間が過ぎてゆく。何か事故でもあったのかと不安がよぎる中、ようやく再登場しテナー・ソロで40分間の楽曲を締めた。このハラハラ、ドキドキ感も計算済みなのだろうか。2曲目にコルトレーン作曲のバラード「ナイーマ」を正調で演奏。ここで1曲目とのコントラストが生きた。
ラスト・ナンバーでは観客から自然に手拍子が起こると、気を良くしたファラオは踊りながらメンバーを紹介。「The creator has a master plan」の歌声に、今夜がコルトレーンに捧げたステージであることを改めて印象付けたのだった。

トップ・ベーシストのアコースティック・プロジェクト

2011年10月25日

 クリスチャン・マクブライド@丸の内Cotton Club。2009年発表作『カインド・オブ・ブラウン』で立ち上げたユニット“インサイド・ストレート”としての来日公演だ。近年はエレクトリック・プロジェクトにも積極的に取り組んできたマクブライドにとって、同作は久々のアコースティックものであり、原点を踏まえながら非電化ユニットを打ち出した現在の心境にも興味があった。5人のメンバーのうち、3人はアルバム不参加の新鋭。ウォーレン・ウルフのヴィブラフォンとアルトのユニゾン・テーマによる同作収録曲を聴いているうちに、マクブライドがこのバンドで企図したことがわかってきた。ミルト・ジャクソン?レイ・ブラウンである。相変わらずウッド・ベースらしい音色と鳴りの良さを体感。共演者はいずれも実力派揃いで、中でもマクブライドの最新ビッグバンド作に参加しているユリシーズ・オウエンスJr.(ds)の超絶的なプレイに驚かされた。
●Christian McBride(b)、Christian Sands(p)、Tim Green(as)、Warren Wolf(vib)、Ulysses Owens Jr.(ds)

女性SSWの記念コンサート

2011年10月31日

 5年ほど前にTVの音楽番組で観て以来のファンである柴田淳が、10周年アニバーサリー・ツアー2011を中野サンプラザで開催。3年前に塩谷哲のライヴにゲスト出演した時が生では初めてで、ようやく本人のコンサートに行くことができた。8月リリースの新作『僕たちの未来』からのナンバーなどを歌唱。アンコールでは観客からリクエストを募って、テレサ・テン等々をアカペラで歌った。伸びやかで美しく、心に染み入る歌声が素晴らしい。バンド・メンバーは音楽監督の青柳誠(key)のほか、グレッグ・リー(b)、石川智(ds)、弦トリオと、ジャズ関係者がしっかりと彼女をサポート。終演後本人に挨拶すると、フレンドリーな人柄で、益々ファンになった。

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