Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイリー

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オランダ大使館でのフェアウェル・パーティー

2011年08月04日

 午後7:00、神谷町のオランダ王国大使館大使公邸へ行く。報道・文化担当のマリオンさんが退任することを受けての宴が開かれたのだ。会場には大使館とつながりのある各界の関係者約100名が集った。ジャズ関係者は4人。これまで各国の大使館での宴に参加してきたが、オランダ大使館はホスピタリティのレベルが高い。今夜は新潟の菊水が協賛したようで、大樽の升酒がふるまわれた。カジュアルな雰囲気の中、宴は9:00過ぎても終わる様子はなかった。

エヴァンス追悼の野外フェスティヴァル

2011年08月06日

 「真夏の夜のJAZZ in HAYAMA」と題したフェスティヴァルが、神奈川県の葉山マリーナで開催された。ビル・エヴァンス1961年の名盤『ワルツ・フォー・デビイ』から50周年の節目を迎え、再発やトリビュート新作がリリース。さらにユニバーサルミュージック主催の関連イヴェントとして、この野外公演が企画されたわけである。午後4:00スタートのステージには、ハクエイ・キム・トリオがトップ・バッターで登場。前衛的な演奏でインパクトを与えると、そこに韓国のトリオWinterplayが加わってオシャレな午後を演出。続く大西順子は中川(tb)+原(tp)+山口(ts)をフロントに配したオールスター・セクステットを率い、貫禄のリーダーシップを発揮した。山中千尋はトリオで数曲を演奏した後、稲垣潤一(vo)がゲスト参加。名曲「夏のクラクション」は原曲をリアルタイムで聴いていただけに、感慨もひとしお。音楽祭のトリを務めたのは小曽根真 featuring. NO NAME HORSES。ここにもゲストでクリスタル・ケイと青山テルマの歌姫が華を添えた。2人にとっては“アウェー”のステージに違いないのに、スタンダード・ナンバーをヴォーカリーズで聴かせる高いハードルに挑戦。凡百の邦人女性ジャズ・ヴォーカリストを凌駕するクリスタルの歌唱力には驚いた。昨年まで同時期同所でのイヴェントはJポップ系が中心だった経緯があり、稲垣らの参加はジャズに特化した今回のスパイスとして、予想以上の効果をあげていた。

南アフリカの名ピアニストが丸の内に登場

2011年08月09日

 アブドゥーラ・イブラヒムがトリオを率いて、丸の内Cotton Clubに初登場。昨年9月にソロでサントリーホール公演を行っているイブラヒムは、NHKでドキュメンタリー番組が放映された効果もあって、70代後半の今、再び注目度が高まっている。今夜はまず1人でステージに現れ、ピアノ・ソロで1曲演奏。続いてベーシストとドラマーが入場し、いつものイブラヒムのソロ・パフォーマンスと同じく、ノン・ストップでの演奏が展開された。内側から自然に生まれるメロディを絶え間なく、静かに紡ぎ続ける。メンバー2人はそんなイブラヒムの流儀に寄り添うように、デリケートにサポートする印象。長い音楽旅行が終わると、手を合わせて観客に頭を下げる。イブラヒムが同様のマナーを2人にも促し、三方に向かって丁寧にお辞儀をした光景は微笑ましかった。

名優の遺作となった映画

2011年08月12日

 銀座の丸の内TOEI2で『大鹿村騒動記』を観た。出演者の舞台挨拶で主演の原田芳雄が車椅子姿で登場し、7月19日に71歳で他界するという悲しい出来事が、映画の話題を高めた状況である。そんな現実とは逆に、本作は喜劇だ。随所に笑いを誘う人間模様が描かれている。それが本作の企画段階から関わった原田が意図したものだから、と思い、映画の世界を楽しんだ。原田と実年齢で17歳年長の三國連太郎が会話する場面では、複雑な気持ちになったが。作品のハイライトとなる大鹿歌舞伎が無事に閉幕し、道柴を演じる大楠道代が、村役場勤務のたかちゃんに「ありがとう」と声をかける。それに対して嬉し泣きの表情を見せたたかちゃんのアップが、最も印象的なシーンだった。入場料が一律1000円なのも特筆したい。

希少作再リリース直後のトリオ・ライヴ

2011年08月20日

 西山瞳@池袋アップルジャンプ。2006年のメジャー・デビュー前、2004年にリリースした自主制作盤『I’m Missing You』は、2007年に完売。西山が人気と名声を高めるにつれ、同作はお宝化し、廃盤市場で高値をつけていた。このたび未発表音源3曲を加えた形で、待望のリイシューが実現。HMVオンラインでは予約段階でチャート上位にエントリーし、数多くのファンからのニーズがあることを実証した。今夜は同作収録曲を含め、すべて西山のオリジナル曲で2セットを構成し、独創的な世界をたっぷりと味わうことができた。佐藤恭彦(b)+池長一美(ds)は本人が最上のトリオ・メンバーと認識しており、11月発売予定のトリオ新作の共演者でもある。同作の収録曲で、米国主催の「国際ソングライティング・コンペティション2009」で、見事ジャズ部門の第3位に輝いた「アンフォルディング・ユニヴァース」も披露。佐藤だけが演奏可能なベースの難曲を、約20席のライヴ空間で体感できる贅沢さも収穫となった。アンコールではメジャー・デビュー作『キュービウム』から、「ユー・アー・ノット・アローン」をプレイ。改めてバラード名曲だと実感したのだった。

東京在住のアメリカ人ピアニスト

2011年08月23日

 2009年に移住し、日本のレコード会社から早くも3枚のリーダー作をリリースしているジェイコブ・コーラーを南青山マンダラで観た。メンバーは10月発売の新作『シネマティック・ピアノ・パラダイス』にも参加している現在のレギュラー・トリオに、コーラーのレーベル・メイトでもあるヴォーカルの樹里からんがゲストで参加。「ニュー・シネマ・パラダイス」「ノルウェーの森」といったコーラーのレパートリーと、樹里の持つポップスやJポップのレパートリーをバランス良く配したプログラムで、2人の魅力を同等にアピールする狙いが感じられた。すでにアジアでの高い人気を獲得している樹里は、ポップスとジャズを股にかけたスタンスで、安定した歌唱力に好感を抱いた。

初のソロ・ホール・コンサート

2011年08月27日

 今年1月にユニバーサルから移籍トリオ作『トライソニーク』をリリースしたハクエイ・キムが、めぐろパーシモン小ホールに出演。めぐろJAZZ研の主催で、ソロでのホール・コンサートは今回が初めてとなった。ハクエイは12月リリース予定のソロ・ピアノ新作をレコーディングしたばかりのタイミングということで、同作収録曲も披露してくれた。最も印象的だったのはスタンダード・ナンバーの「恋とは何でしょう」。キース・ジャレットからの影響を随所で表しながら、実力と音楽性のすべてが明らかになる独奏ステージを成功させた。

渋谷と丸の内のクラブをはしご

2011年08月29日

 キャサリン・ファーマー with 佐藤文子クァルテット@JZ Brat。ぼくは「ジャズジャパン」9月号で佐藤がリーダーのグループ Anonymous 5の『New Hope』を紹介していて、今回は新作のリリースに合わせたジャパン・ツアーである。同作への参加は1曲だけだったファーマー(vo)が、今夜は全面的にフィーチャーされ、クラーク・テリー、ルー・ドナルドソンら著名人と共演してきたキャリアに裏打ちされた、自信溢れるパフォーマンスを披露。同作で作曲家としての才能をアピ?ルした佐藤には、“ピアニスト”の部分を期待したのだが、ファースト・セットだけではそれを十分に聴き取ることができなかった。
 丸の内へ移動し、「Cotton Club」でミカリンバのセカンド・セットを観る。ニューヨーク在住のマリンバ奏者、吉田ミカをスティーヴ・ガッド(ds)がプロデュースした『ミカリンバ!』が昨年話題を呼び、今回の来日公演に繋がった。まず吉田とガッドがデュオで2曲演奏。70年代のスタッフ以来、何度もガッドのステージを観てきたが、このようなシチュエーションは初めてで新鮮に感じた。同店初出演のガッドとエディ・ゴメス(b)が、チック・コリア“フレンズ・クァルテット”の2リズムだと考えると、感慨もひとしお。ビル・エヴァンスの「ヴェリー・アーリー」や「A列車で行こう」の選曲に、彼らの歴史が重なる。ヴェテランの妙技が満員の観客を魅了した。

NYゆかりのミュージシャンが六本木で再会

2011年08月31日

 10月に新作『シネマティック・ピアノ・パラダイス』をリリースするジェイコブ・コーラー(p)をインタビューした。2009年にアメリカから日本へ移住してまだ2年ながら、この間すでに3枚のリーダー作を世に出している幸運の持ち主だ。日本語も堪能で、人間的にも好感を抱いた。インタビュー記事は9月23日発売の「ジャズジャパン」に掲載される。
その後マヤ・ハッチ&黒田卓也セクステット@六本木STBへ。2年前に日本でデビュー作を発表したマヤ(vo)は日米のバイリンガル。黒田は2003年に音大進学のため渡米し、現在もNYを拠点に活動するトランペッター。セクステットのメンバーを含めて全員がニュースクールの同窓生という、若手ミュージシャンのステージである。ハードバップと新伝承派を土台としたバンド・サウンドと、マヤのソウルフルな歌唱がマッチ。初めて聴いた黒田は会場を満席にする実力の持ち主であることが確認できた。今後もウォッチしていきたい。

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