Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイリー

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レコーディング直前のライヴ

2011年09月01日

 守屋純子オーケストラ@六本木STB。2月の日経ホール以来となるコンサートだ。この間、東日本大震災が起こり、守屋は音楽が演奏できる喜びを、改めて強く感じたという。セカンド・セットはピアノ独奏の「虹の彼方に」でスタート。震災後に書いた「フォーエヴァー・ピース」、急逝したフランス人ジャーナリストに捧げた「フォー・ダニエル」と、トリビュート曲が続いた。ラストはデューク・エリントンのビッグ・バンド名曲「スイングしなけりゃ意味がない」。2001年リリースのデビュー作以来、エリック・ミヤシロ、片岡雄三、小池修ら斯界のトップ・ミュージシャンとコンスタントに活動を続けてこられたのが、モンク・コンペを受賞した守屋の作曲力とリーダーシップにあることを再認識したステージだった。

東京JAZZ 2011 初日

2011年09月02日

 10周年の節目を迎えた今回も、例年通り東京国際フォーラムホールAをメイン会場の開催となった。「THE NEXT STEP」と題した夜の部のトップバッターは、菊地成孔DCPRG。昨年再始動した11人編成は、スタンディングの観客が踊りながら楽しむのが定石のところ、今夜は貴重な着席コンサートである。このセッティングは音響面で楽器の分離の良さを生み出し、そのおかげでアフロ・ポリリズムを含むバンド・サウンドと各メンバーの音の動き、個人技の魅力が明確に伝わってきたのが収穫。昨年の再始動公演にも参加したリッチー・フローレス(per)が好演。最後はバンド誕生のきっかけとなった菊地雅章の名曲「サークル/ライン」で、クライマックスを演出。菊地のコンダクションも見事だった。
 2番手はSSWのラウル・ミドン。独特のパーカッシヴな奏法でアコースティック・ギターを鳴らしながら歌う。時折、声でトロンボーンを真似るインスト・パートや、ボンゴを叩きながら歌う曲も織り交ぜたソロ・パフォーマンスに、目が不自由なハンディキャップを超えた天才的な閃きを感じた。
 今夜最後は特別編成のJAZZ FOR JAPAN “LIVE”。震災後にベネフィット作をリリースしたオールスターズだ。1人ずつ呼び込む“VSOP方式”でメンバーが登場し、トム・スコット、ヒューバート・ロウズらをフィーチャーした「オール・ブルース」「シュガー」「ウォーターメロン・マン」を演奏。スペシャル・ゲストのアル・ジャロウが加わると、「マイ・フェイヴァリット・シングス」でジャロウ劇場がスタート。「おいしい水」を経て、代表曲「スペイン」に至り、ファンは大喜びとなった。

東京JAZZ 2011 2日目

2011年09月03日

 今回のフェスティヴァルは例年通り、東京国際フォーラムホールAのメイン会場と、無料提供の地上広場で開催されるばかりでなく、初の試みとしてホールAと同時間帯に地上広場出演者が登場するホールD7公演が行われた。10周年を迎えた新企画は意欲的である一方で、ホールAのプログラムとバッティングする悩ましい問題が生まれた。ぼくはすべてのスケジュールを精査した上で、自分のための取材スケジュールを組み、3ヵ所を移動することを決定。昼の部はD7のレミ・パノシアン3からスタート。最新作『Add Fiction』のライナーノーツを書いたこともあり、注目していた。内部演奏やピアノを叩くトリッキーな動きを見せ、CDだけではわからなかった姿を体感できた。
 ホールAへ移動し、14:05から寺井尚子&リシャール・ガリアーノ。2008年のこの大舞台で、急遽決まったガリアーノとの共演を見事に務め上げたことで、寺井はさらに名声を高めた。2人の再会ステージは再度寺井にとってのチャレンジとなる12人編成のストリングス+ピアノのオーケストラ・カメラータ・ドゥカーレとの初共演だ。「オブリヴィオン」「リベルタンゴ」等、アストル・ピアソラのレパートリーで、亡き巨星を追悼した。引き続きホールAにミシェル・ルグラン3が出演。フランス・ポピュラー音楽界の巨匠は、サーヴィス精神が旺盛で、「これからの人生」等ではヴォーカルも披露。「シェルブールの雨傘」ではスローとアップの2種リズムを使用し、まだまだ衰えぬ表現意欲を示してくれた。
 夜の部はホールD7のトルド・グスタフセンで始まり、ホールAへ移動してインコグニート?上原ひろみザ・トリオ・プロジェクトを観る。新作『ヴォイス』のレコーディング・メンバーによる上原の日本でのお披露目ライヴは、期待に違わぬ圧倒的なパフォーマンス。「マイ・フェイヴァリット・シングス」を引用したピアノ・ソロにも共感した。その後、再びホールD7に戻って、アムステルダム・ジャズ・コネクションを鑑賞。大忙しの1日だった。

東京JAZZ 2011 最終日

2011年09月04日

 昼の部はホールD7のシニッカ・ランゲランから。北欧の伝統弦楽器カンテレを奏しながら、伝承音楽を歌うソロ・パフォーマーだ。近年、日本にも紹介されつつある民族音楽が、この場で披露されたことに価値がある。昨年の来日時に八木美知依から琴の奏法を習い、取り入れた演奏も興味深く聴いた。引き続き同会場でポーランドのアガ・ザリヤンを観る。メンバーは明かされていなかったが、蓋を開ければミハウ・トカイ(p)、ウカシュ・ジダ(ds)ら最新作の参加ミュージシャンらからなるクァルテットの編成。途中ハイヒールを脱いで裸足になった“素”のステージに好感を抱いた。 
 夜の部はホールAから。日野皓正が今年リリースした新作『アフターショック』の参加メンバー+αで結成したスペシャル・プロジェクトだ。日野は巧みに若手を起用しながら、自分のバンドを運営してきた歴史がある。今回は日野とは縁がなさそうな矢野沙織(as)が加わり、サウンド・コンセプトに沿ってフリーキーなトーンも交えた矢野のプレイが収穫。80年代の「シティ・コネクション」を今風にアレンジして、時代に呼応する姿勢を示した。
 「TOKYO JAZZ SUPER GUITAR SESSION」はリー・リトナーがディレクターを務めるギターの饗宴。今年2月に「ブルーノート東京」で行われたリトナーとマイク・スターンの共演を発展させたものだ。布袋寅泰が加わったトリプル・ギターになると、ステージはさらに華やかに。最後はジェフ・ベックの「フリーウェイ・ジャム」で盛り上がった。
 ホールD7へ移動して、20:20からティグラン・ハマシャン。アルメニアで生まれ、モンク・コンペに優勝した才人は初来日。母国の伝統音楽を吸収した独特のメロディ・ラインや、終わりそうで終わらない曲展開がユニークなソロ・パフォーマンスだった。

スウェーデン最高の女性ヴォーカリスト

2011年09月08日

 マルガリータ・ベンクトソン&マティアス・アルゴットソン@丸の内Cotton Club。2007年夏にストックホルムを取材した時に、野外ライヴで初めてマルガリータを見て感激し、同年秋の東京公演では高い実力を再認識した。今回はそれ以来4年ぶりの再来日である。日本でも4枚のリーダー作をリリースしているマティアス・アルゴットソン(p)とのデュオということで、ヴォーカリストとしては自らパフォーマンスのハードルを上げた格好だ。マルガリータは何故スウェディッシュである自分がアメリカン・スタンダードを歌うのかについて、母国のジャズ史に触れながら説明。これは説得力があった。スキャット、ヴォーカリーズも自然にこなし、クラシック音楽に裏打ちされた伸びやかな高音域も自在に操る歌唱が圧巻。ノルウェーや母国の古謡も取り混ぜたプログラムで、幅広い表現力を印象付けたステージとなった。

フュージョンの大御所ユニット

2011年09月12日

5月から全米ツアーをスタートし、《東京JAZZ 2011》で3日目のトリを務めたDMSが、「ビルボードライブ東京」に出演。その最終日のファースト・セットを観た。ジョージ・デューク、マーカス・ミラー、デヴィッド・サンボーンのイニシャルをとったユニットは、各人のリーダー・バンドが同店に出演していることだけを考えても、超弩級であることがわかる。「ラン・フォー・カヴァー」で始まったステージは、マーカスとのやり取りが80年代のサンボーン・バンドを甦らせて、ファンにはたまらない。当時と同じようには高音が歌えないデュークを、他のメンバーがコーラスで支え、サンボーンのアルトがヒットするシーンに彼らのミュージシャンシップが表れていて感涙。特別な夜になった。
<セットリスト>
1. Run For Cover
2. Straight To The Heart
3. Brazilian Love Affair
4. Maputo
5. Chicago Song
6. Cobra/TUTU
7. Sweet Baby
8. Blast

デビュー作ダブル・リリース記念ライヴ

2011年09月13日

 『ユートピア』の佐藤浩一(p)と『イントロスペクト』の大村亘(ds)。今年デビュー作をリリースした2人の若手のジョイント・ライヴを、渋谷JZ Bratで観た。2人はお互いのアルバムに参加している間柄ということで、今夜の企画が実現した。3年前から活動中の佐藤トリオはオリジナル曲で勝負。ピアノのアドリブはハービー・ハンコックやレニー・トリスターノを吸収した経験をイメージさせる。オーストラリアで学んだ大村は定型ビートにこだわらず、バンドにエネルギーを吹き込む。そのプレイはこの10年あまりで定着したNYの新世代ドラマーに通じるもので、ぼくはアンブローズ・アキンムシーレ盤やジェラルド・クレイトン盤のドラマーであるジャスティン・ブラウンとの共通性を感じた。ダブル・ピアノ+ダブル・ベースにサックスの山本まさひろが加わった6人編成のナンバーも、面白く聴いた。

編集プロダクションでの酒宴

2011年09月17日

 ぼくがいつもお世話になっている西葛西のセブン・オークス・パブリシングに初めておじゃました。以前、水道橋にオフィスがあった時は、DVDイヴェントを主催するなど、密に足を運んでいた。今夜は再会した人や初対面の人との約10人の宴。次々とお酒とお料理が出てきた至福の時間に酔った。自分の仕事にギアチェンジできた収穫。

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9月第4週のまとめ

2011年09月23日

 9月18日は西藤ヒロノブNY4tet@六本木STB。緑の星(=地球)をコンセプトとしたステージ。真面目な人柄ゆえに、バンド・メンバー以外の知人も協力し、PVの上映や演奏中のペインティングも盛り込んだ。アンコールではTOKU(flhvo)も登場したが、全体的にはやや中途半端になった印象も。●西藤ヒロノブ(g)、Milton Fletcher(p,key)、Marco Panascia(b)、John “Lil John” Lumpkin(ds)
 19日は16:00?ビル・メイズ3@Tokyo Tuc。「Waltz For Debby」に引き込まれた。今更ながら魔法のような曲。ジョー・ラバーベラも熱演。エヴァンスが重なったステージだった。●Bill Mays(p)、川村竜(b)、Joe LaBarbera(ds)。その後丸の内へ移動し、20:00?ジノ・ヴァネリ@Cotton Clubセカンド・セット。13年ぶりの来日を待ちわびたファンで超満員。大人たちが大興奮して、場内は熱気に包まれた。6ステージ完全制覇の熱狂的なファンも。「I Just Wanna Stop」では女性客をステージに上げ、肩を抱きながらデュエットするサービス精神旺盛なパフォーマンスだった
 23日は陰陽師 朗読コンサート@代々木能舞台。Ky(仲野麻紀 sax+ヤン・ピタール oud,g)の演奏と夢枕獏(朗読)の共演。昨秋フランスで開催したコラボレーションの、本邦初ステージ。第2部では獏さんのぶっちゃけトークで、観客は爆笑。会場は約150名の満席だった。

9月第5週のまとめ

2011年09月30日

 25日はポール・マッキャンドレス(oboe,her,b-cl,ss)&古佐小基史(harp)@ピットイン。古佐小の情熱でマッキャンドレスとのデュオ・レコーディングが実現。好評につき、今回再来日を果たした。スキルの高いマルチ・リード奏者ぶりは、巨匠の風格。やはりマッキャンドレスのファンだというtomocaがゲスト参加し、珍しいWオーボエに。アンコールは名曲「ウィッチ・タイ・ト」だった。
 30日は19:00?スカーラ・ノービレ・デュオ&パーティー@スイス大使館。初めて聴いたサンドロ・シュネーベリ(g)、マックス・ピツィオ(ss,EWI)は共に実力者だった。終演後にシュネーベリにヒアリングすると、最近マッキャンドレスと共演しているとのこと。その後、渋谷へ移動し、21:45?ジルデコ・ラウンジ vol.8@JZ Brat。クラブ・ジャズ方面での人気は知っていたが、この日が初体験。ユニットの看板ヴォーカリストであるchihiRoは女性ファンが多かった。

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