Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイリー

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2012年09月01日  第2回チャート・サミット

2012年09月01日

 毎月第2土曜日にFM COCOLOでHMVオンラインのチャート解説を担当して3年目になる。各ジャンルを担当する4名が一堂に会して、初めての「チャート・サミット」を行ったのは3月。その時の好評を受けて、今日は第2回を駒沢公園のスタジオからオンエアーした。司会はパーソナリティのちわきまゆみさんで、出演はワールド・ミュージックのDJ・選曲家フジカワPAPA-Qさん、ダンス&ソウルの大伴良則さん、ロックの今井智子さんと私。業界の経験が長い方々との話は、興味深い案件が続出。リアルタイムでリスナーからの質問にも答え、生放送の醍醐味を味わった。終演後、中華料理店での打ち上げでは、さらに話題が発展して、楽しい宴になった。

2012年09月05日  大使館での音楽イヴェント

2012年09月05日

 毎年ノルウェーで取材していることもあって、大使館とは密な関係を築いている。今夜はノルウェーのミュージシャンを数多く日本に紹介し、この分野で多大な貢献を果たしてきたOffice Ohsawaが招聘したマッツ・アイレットセン5が出演。まず大沢代表がノルウェー・ジャズに関する基調講演を行った。2002年に出版した拙著『ヨーロッパのJAZZレーベル』から、同国の今のジャズが日本に本格的に紹介されたのだなと、改めて感じた。ノルウェー人とフィンランド人からなるユニットは、2ヵ月前の≪コングスベルクJF≫でも観たのだが、今回はサックスがトーレ・ブリュンボルグからフレドリック・ルンディンに交代。この人事はバンド・サウンドに大きな影響を及ぼしていて、ヤン・ガルバレク直系のブリュンボルグに比べて、よりアグレッシヴなテナー・スタイルのルンディンは、このユニットに新たな魅力を吹き込んだ。終演後は米鶴酒造提供の日本酒を堪能。その後、音楽評論家・佐藤氏のお誘いを受けて、代官山で細野晴臣のライヴを観た。

2012年09月07日  東京JAZZ初日

2012年09月07日

 東京で開催される最大級の国際ジャズ・フェスティヴァルが、第11回を迎えた。これまでは9月第1週の金、土、日曜日の開催だったが、今年は金曜日の国際フォーラム ホールA公演は無し。ただし地上広場の無料ライヴは例年通りで、昨年フォーラムの200席のホールで行われたステージは、至近のコットンクラブに場所を移した。初日金曜日の今日は、「ザ・クラブ」@コットンクラブ夜の部で、ヤガ・ヤシストを鑑賞。数年前に知り合いの主催者スタッフから、このノルウェーの人気バンドをブッキングしたいと聞いていた。この間、<フジ・ロック>に出演して、日本での認知度を高めていた中での、待望の出演である。ぼくが前回、日本で観た渋谷の会場では広いステージを活用し、例えばメンバーのマティアス・アイクが移動しながらトランペット、ウッドベース、ヴィブラフォンを手がけ、ヴィジュアル面でもダイナミックに展開した。今回はその点で制約があったが、照明でステージングをアシスト。最後はストロボを使用して、盛り上げた。アンコール曲は「オスロ・スカイライン」。

2012年09月08日  東京JAZZ2日目

2012年09月08日

 ホールA昼の部は「ザ・ソングス」と題したポップス系のアーティスト。テイク6、ベン・E・キング、バート・バカラックのラインアップは、来日公演のリピーターなので、特別な新味は期待していなかった。しかし特別だと知ったのはバカラックのステージ。60?80年代の名曲を、3人のヴォーカリストをフィーチャーしながら進行したのだが、個人的なハイライトは、バカラックがピアノ弾き語りをした「アルフィー」。音程は違っているし、声に力もない。しかしそんなマイナスがプラスに転化して、感動を与えられた。これぞオリジネイターならではの力だろう。
 「ジャズ・ル?ツ」と題した夜の部は、ハプニングが待ち受けていた。トップバッターは小曽根真がエリス・マルサリスら米国黒人と共演した最新作『マイ・ウィッチズ・ブルー』『ピュア・プレジャー・フォー・ザ・ピアノ』との連動グループ。2番手はジョー・サンプル&ザ・クレオール・ジョー・バンド。サンプルの趣味性の高い演奏だった。3組目に予定されていたオーネット・コールマンは、健康問題を理由に直前にキャンセル。《東京JAZZ》史上最大の危機に、主催者は本番のわずか2日前に小曽根に打開策を打診。結局はフェスティヴァル参加ミュージシャンを上手に活用して、難局を乗り切った。オーネットのオリジナル曲を様々なバンドが演奏する構成は、一貫した主義が感じられて、オーネット目当ての観客にも説得力をもたらしたようだった。

2012年09月09日  東京JAZZ最終日

2012年09月09日

 昼の部@国際フォーラム ホールAは「グルーヴ」と題して、3組が出演。バルカン・ビート・ボックスはソイル&ピンプ・セッションズが1曲参加して、盛り上がった。東京では毎年のクラブ公演が恒例のタワー・オブ・パワーは、大会場を得て老舗ホーン・バンドの貫禄を示した。ルーファス featuring スガシカオは、チャカ・カーンを欠いたソウルグループと邦人SSWの顔合わせが、事前には今一つわかりづらい印象があったのも事実。スガの音楽生活がどれほどファンクにどっぷりと浸かってきたのかを自らMCで説明したことで、観客に説得力を与えたのは良かった。後半にはTOPホーンズが加わって、ルーファス・バンドのトランペッターと掛け合い。フェスティヴァルならではの醍醐味を演出した。
 終演後、ギラッド・ヘクセルマン4@Cotton Club。ヘクセルマン(g)&マーク・ターナー(ts)の静と、マーカス・ギルモア(ds)の動の対比と融合を興味深く聞いた。
 ホールA夜の部はエスペランサ・スポルディングで開演。グラミー賞新人賞を獲得したシンデレラ・レディだ。今年リリースした新作『ラジオ・ミュージック・ソサエティ』のライヴ版を初めて観てわかった。リトル・ビッグバンドなのである。その直後に抜けて、地上広場へ。ピエリック・ペドロン(as)と、旧知のフランク・アギュロン(ds)とミート&グリートができた。ホールAに戻って2組目はカシオペア3rd。鍵盤奏者が交代したため、創立メンバーの野呂一生がMCを担当。不慣れなどころか新生カシオペアのリーダーとしての存在感と新たな魅力を発揮した。最終日のトリを務めたのはボブ・ジェームスだった。70年代のCTIにスポットを当てて、スタンリー・タレンタイン、グローヴァー・ワシントンJr.、エリック・ゲイルの楽曲を演奏。ジェームスが在籍するフォープレイの最新作に参加している松田聖子が、「上を向いて歩こう」と同作収録曲を歌った。大舞台に慣れている聖子の、さすがの貫禄を体感。

2012年09月12日  若手ピアニストのデュオ・コンサート

2012年09月12日

 丈青 VS. ハクエイ・キム「ツイン・ピアノ・デュオ・バトル」@大和田伝承ホール。SOIL & “PIMP” SESSIONSやJ.A.Mで活躍する丈青と、トライソニークでトリオ・キャリアの新境地を示しているハクエイの初顔合わせだ。まず丈青が登場して「ボディ&ソウル」「恋とは何でしょう」等を演奏。スタンダード・ナンバーに正面から取り組んだ演奏は、クラブ・ジャズ方面のこれまでのイメージを覆すもので、新鮮に感じた。ハクエイのソロは自作曲とスタンダードを交えて、ローランドのV-Piano GRANDの機能を活用し、楽曲ごとに音色を変えての演奏だった。最後に2人のデュオに進み、「ソーラー」「枯葉」「アイ・ラヴズ・ユー・ポーギー」を選曲。それぞれの持ち味が出たステージであった。

2012年09月13日  凄腕ギタリストの新ユニット

2012年09月13日

 元デヴィッド・サンボーン・グループのギタリストとして知られるディーン・ブラウンが、新作『Unfinished Business』を引っさげて丸の内Cotton Clubに出演した。今回の新ユニットは初来日のバーナード・マセリ(el-vib)を含むカルテット。同作を中心としたプログラムは、4本マレットから鍵盤音も繰り出すマセリの活躍により、これまでのブラウン・グループにはなかった音風景を生み出した。また注目していたのが、15年ぶりの来日となるマーヴィン“スミッティ”スミス。80年代に登場した新世代ドラマーの筆頭格は、現在もそのテクニックが衰えないどころか、ヒップホップ的な技巧も示しながらリーダーをサポートしてみせた。アンコールでは「We don’t have to talk about it. Just do it」を観客に歌唱指導。ブラウンの最新形を印象付けてくれた。

2012年09月14日  新作のライヴ・コンヴェンション

2012年09月14日

 アルトサックス奏者、矢野沙織が新作『アンサー』の関係者向けコンベンションを、六本木サテンドールで開催。2年ぶりとなる同作は、デビュー10周年に入った矢野の節目を踏まえて制作されたものだ。この間、邦人女性アルト奏者は急激に若手の層が厚くなり、まだ20代半ばの若さでありながら、気がつけばこのジャンルの先駆者というポジションにいる。投票によって収録曲を決定した新作は、ファン・サービスの企図もあったのだろう。これまでのキャリアや制作エピソードを包み隠さずに語りながら、コンベンションの域を超えた約10曲の演奏と共に自身を披露してくれた。終演後に初期から取材を重ねている彼女とミート&グリート。

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2012年09月16日  イタリアン・ドラマーのトリオ公演

2012年09月16日

 ドラマーのアンドレア・マルチェリは、ミッチェル・フォアマン、ボブ・ミンツァー参加のリーダー作『ビヨンド・ザ・ブルー』(2005年)の日本発売によって、その存在が広く知られた。数年前にトリオで来日した時をきっかけに知己を得て、今回の来日の前に本人からライヴの案内が届いていたのだ。南青山Body & Soul公演はデンマークのトーマス・クラウセン(p)+中村健吾(b)との新結成の国際トリオ。ファースト・セットは「オール・オブ・ユー」「ワルツ・フォー・デビイ」「アーマンドズ・ルンバ」を演奏。セカンド・セットでは「モーメンツ・ノーティス」「ニュー・シネマ・パラダイス」等で、このトリオの魅力を醸成。アンコールの「エスターテ」ではクラウセンがビル・エヴァンスのナンバーを引用して、長年のファンの共感を誘った。


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2012年09月18日  横浜のダブルビル・ライヴ

2012年09月18日

 ジャズ・フェスティヴァルとホ?ル・コンサートのために来日した2組のバンドを、横浜のFive Stars Recordsで観た。文豪の末裔として日本に紹介されたスウェーデンの歌手ヴィクトリア・トルストイは、「アイ・ソート・アバウト・ユー」「ザ・ニアネス・オブ・ユー」のスタンダード曲に加えて、ハービー・ハンコック・トリビュートの最新作から「バタフライ」も歌ってくれて嬉しかった。第2部のロザリオ・ジュリアーニ4はロベルト・タレンツィ(p)+ダリル・ホール(b)+ジョー・ラバーベラ(ds)。「レニーズ・ペニーズ」「ウォーキング・アラウンド」等を演奏。イタリアン・アルトの実力者ぶりを、遺憾なく発揮した。終演後にはミュージシャンたちとの打ち上げで、親交を深めた。トルストイとエリック・ベネイの「ハリケーン」をデュエット。

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2012年09月21日  新世代ドラマーの来日公演

2012年09月21日

クリス・デイヴ@ビルボードライブ東京。ミュージック・ペンクラブ・ジャパンのレヴューとしてすでに公表している拙稿を、下記に記す。
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 ロバート・グラスパーやケニー・ギャレットのジャズメンにとどまらず、メアリー・J・ブライジ、アデル、サンダーキャットといった他ジャンルのミュージシャンのサポート・ワークでも注目される新世代ドラマーがクリス・デイヴ。5人編成と告知されていたのだが、お目当てのゲイリー・トーマス(sax)と鍵盤奏者は不在で、レギュラー・バンドを縮小したトリオによるステージとなった。ギタリストがスキャットをしながら、アンダーグラウンドなムードを延々と継続。メドレー風に進行すると、ハービー・ハンコックの70年代名曲「アクチャル・プルーフ」が飛び出して、期待が高まった。しかし鍵盤とサックスの不在を補うには至らず。デイヴは独特のセッティングとエフェクター使用で個性を表現したが、緊急事態をプラスに転化することはできなかった。次回のリヴェンジに期待したい。

2012年09月25日  情熱のイタリアンが丸の内に再登場

2012年09月25日

ジョヴァンニ・ミラバッシ@Cotton Club。反戦歌や革命歌を取り上げた独奏作で、独自のポジションを築いているピアニストが、再び1日だけのステージのために、同店へ帰ってきた。プログラムが進むにつれて、情熱と美旋律が融合した空間を醸成する。アントニオ・カルロス・ジョビン作曲の「想いあふれて」と「ハウルの動く城」が合体した演奏は、そのハイライトとなった。
■Reflections, Portrait Of Black & White, Libertango, El Pueblo Unido Jamas Seva Vencido, Le Chant Des Partisans

2012年09月26日  老舗サックス・ユニットが久々に来日

2012年09月26日

 ワールド・サキソフォン・カルテット@Cotton Club。フリー・ジャズの流れを汲む4人のサックス奏者が1976年に結成。<ライヴ・アンダー・ザ・スカイ>で初めて観た時の衝撃は、今も鮮明だ。オリジナル・メンバーのジュリアス・ヘンフィルが95年に他界後も、新たな奏者を迎えて活動を継続。今回は英国出身のトニー・コフィが参加しており、新顔がどの程度の活躍をしてくれるのかが、1つのポイントだった。結論を言えば、期待以上の貢献で、他の3人がコフィの入団を認めたことにも納得できたのである。オープニングでは4人が吹きながら入場。デヴィッド・マレイがハル・シンガーのために書いたナンバーでは、サーキュラー・ブリージングによるテナー・ソロで存在感をアピール。マレイがNYに出てきた頃、多くのミュージシャンが演奏していた、というエピソードを紹介した「ジャイアント・ステップス」で、コルトレーンとジャズ・サックスの歴史をトリビュ?ト。ハミエット・ブルーイェット(今回はブリュート表記)が奏でるバリトンサックスの美しさに感銘を受けた。これぞ楽器を十分に鳴らす本物の音色。大収穫だった。

2012年09月27日  ノルウェーのベテランが新トリオで来日

2012年09月27日

 ダーグ・アーネセン・トリオ@渋谷クラシックス。母国の古謡やクラシック曲のジャズ・カヴァー作によって、内外で大変な反響を呼んだピアニストが、最新作と同じトリオで来日した。新加入の女性ベーシストEllen Andrea Wangは、今年の<オスロ・ジャズ・フェスティヴァル>で新人賞を受賞するなど、評価を高めている才人。ぼくが長年懇意にしている同国外務省のルンデ氏が同賞の審査員を務めたことで、事前に情報を得ていて、本人とメールのやり取りもしていた。初来日のWangと終演後にミート&グリート。来年の再会を約束した。
 その後、新宿ピットインへ移動し、トライソニークのセカンドセットを鑑賞。ハクエイ・キム(p)がリーダー格のピアノ・トリオは、エフェクターを大胆に導入するユニットへと変貌していた。終演後ハクエイに取材したところ、今夜がエレクトリック・トライソニークとしては2度目とのこと。今後このサウンド・コンセプトを練り上げた段階で、レコーディングを希望しているという路線を応援したい。

2012年09月28日 カナダ大使館のイヴェント

2012年09月28日

 生誕80年と没後30年を記念して、グレン・グールドのトリビュート・イヴェントがカナダ大使館で開催された。クラシック界の神童ピアニスト、ヤン・リシエツキと、山中千尋が生演奏でグールドの偉業を讃えるプログラム。ぼくはクラシックを仕事にしていないが、長年のグールド・ファンで、グールドはジャズ好きにもファンが多い。常識にとらわれない生き様がジャズにも通じることで、ジャンルを超えたファンを獲得している。山中はレギュラー・トリオのベーシスト、東保光とのデュオで「星に願いを」等を演奏。普段とは違う、このイヴェントだからこその一面が見えたのが収穫となった。終演後に出演者を交えた打ち上げで、関係者と談笑。

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