Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイリー

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2012年11月03日  ノルウェー最高のピアノ・トリオ

2012年11月03日

 ヘルゲ・リエン・トリオ@ピットイン。拙著『ジャズと言えばピアノトリオ』でも紹介したノルウェーを代表するトリオが、9年ぶりに来日を果たした。一昨年プライヴェートで来日した時にインタビューし、今年7月のコングスベルク・ジャズ祭でもヘルゲとは会っているので、久々という感じではないが、やはり来日してくれたのは嬉しい。今回の東京公演は同店での2デイズ。プログラムは同店の通例2セットとは異なり、休憩無しの1時間40分連続のステージとなった。選曲は近作『ハロー・トロール』『懐かしい』収録曲が中心。研ぎ澄まされたトリオ・サウンドが素晴らしく、またその音作りに欠かせない専属エンジニアの功績も特筆したい。終演後はメンバー、関係者と居酒屋で再会を祝った。

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2012年11月06日  ポーランドの要注目トリオ

2012年11月06日

 マルチン・ヴァシレフスキ・トリオ@白寿ホール。学生時代に結成したユニットが母体となってシンプル・アコースティック・トリオ名義で活動。日本でも輸入盤が2000年にヒットし、その後トーマス・スタンコに抜擢されて、ECMでのデビューにつながったキャリアを持つ。今回トリオとしての初来日公演を、プレミア感の高い白寿ホールで開催した。ステージには所狭しとスピーカーが設置されていて、これはオノ・セイゲンのデザインによるものと判明。アルバムでは繊細な音作りの印象を受けていたトリオは、ドラマーが意識的にパワフルなプレイも繰り出して、聴きごたえのある内容となった。
 終演後には急いで六本木へ移動。STBでラーシュ・ヤンソン・トリオの後半30分を観ることができた。

2012年11月09日  ようやく生鑑賞した欧州トリオ

2012年11月09日

 Meadow@吉祥寺Star Pine's Cafe。イギリスの巨匠ジョン・テイラー(p)+ノルウェーの実力者トーレ・ブリュンボルグ(ts)+同国の売れっ子トーマス・ストレーネン(ds)からなるメドウは、オールスターズと呼ぶべきトリオだ。2010年にノルウェーの<Nattjazz>を取材した時、彼らのデビュー作『Blissful Ignorance』を入手したのだが、ライヴはこれまで観る機会がなかった。今回思いもかけない形で初来日公演が実現。やはり最年長で格上のテイラーが、サウンドの重要なポジションを担っていた。テイラーは<ECMフェスティヴァル>でのジョン・サーマン・グループ以来、約20年ぶりの来日。終演後に昨年の<コングスベルク・ジャズ祭>以来の再会を祝った。

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2012年11月10日  異色の組み合わせによるデュオ

2012年11月10日

古佐小基史(harp)&中村仁樹(尺八)デュオ@要町GGサロン。アメリカ在住の古佐小は近年、毎年のように帰国コンサートを行っており、数年前のポール・マッキャンドレスとのデュオでは米国生活の成果を披露してくれた。今回は尺八とのデュオということで、洋楽器と邦楽器、しかもあまり日常的ではない組み合わせがどのようなサウンドを生み出すのかに興味があった。初めて観た中村は29歳の若手で、プログラムが進むにつれてオール・ジャンルをこなすテクニシャンであることが明らかに。アドリブのセンスも良く、古佐小の狙いは成功したと言えよう。未知の優れたミュージシャンを知る良い演奏会になった。

2012年11月12日  岩浪洋三さんを偲ぶ会

2012年11月12日

 先月5日に79歳で永眠されたジャズ評論家・岩浪洋三さんを偲んで、半蔵門 TOKYO FMホールに所縁のある関係者が集った。ぼくは評論活動を始めた1990年から様々な場面でお世話になっていて、今年の4月に岩浪さんの番組にゲスト出演したのがお目にかかった最後の機会だった。ステージでは在りし日の岩浪さんを伝える写真がスライドで上映され、数多くのミュージシャンが追悼の演奏を行った。200名あまりが集まった会場は、次第にかつてのスイングジャーナル主催のパーティーのような雰囲気に。これも人徳のある岩浪さんが人々を結びつけたからにほかならないと、改めて故人の存在感を認識したのだった。

2012年11月14日  熱狂に包まれた赤坂の夜

2012年11月14日

 9月リリースの新作『ムーヴ』を引っさげて、上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクトが赤坂Blitzに登場。単独では初のスタンディング公演ということで、会社帰りと思しきスーツ姿の男性やOL客で立錐の余地もないアリーナは、開演前から熱気が充満していた。ステージが始まると、いきなり観客が大熱狂。エネルギーが沸点に達し、それは休憩なし2時間のラストまで続いた。毎年欧米各地をツアーしている彼女にとって、日本のファンの前で演奏するのはほっと安心できる気分があるという。いつも通りの疲れを知らぬ全力投球のパフォーマンスを堪能。終演後に「お疲れさま」のミート&グリート。

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2012年11月15日  ノルウェーの若手クァルテット

2012年11月15日

 スフィンクス@大泉学園 in F。早いもので今回が4度目の来日になるサックス・クァルテットだ。フライヤーには2011年リリースの最新作『Harmonogram』が中心のプログラムだと予告されていた。しかし蓋を開けてみると、2セット通じて全曲セロニアス・モンクのカヴァー特集。この予想外の展開は、しかしオリジナル曲だけでは知ることのできないバンドおよびメンバー各人の音楽性が明らかになって、大いに楽しむことができた。

2012年11月16日  渋谷と六本木のライヴをはしご

2012年11月16日

国府弘子 plays 国府弘子@JZ Brat。デビュー25周年記念の特別企画は満員の盛況。5人編成のスペシャル・グループが、国府のオリジナル曲を中心に息の合ったサウンドを聴かせてくれた。デビュー時と変わらない若さと、重ねてきた豊かなキャリアが、現在の国府の魅力になっている。アット・ホームな雰囲気も良かった。
六本木へ移動し、ビルボードライブ東京でヴァンガード・ジャズ・オーケストラのセカンド・セットを観る。以下にミュージック・ペンクラブ・ジャパンのHPに寄稿したライヴ・レポートを転載する。
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 秋の来日公演がすっかり定着したニューヨークのトップ・オーケストラが、今年もやってきた。昨年の東日本大震災の直後には現地でベネフィット・コンサートを主催し、1年前の東京公演では楽団と所縁の深いボブ・ブルックマイヤーの訃報を受けて、急遽追悼曲を演奏したことも記憶に新しい。今回の話題は楽団の編曲家で、ヨーロッパを含めて斯界の最重要人物であるジム・マクニーリー(p)が、本楽団で初来日したこと。ブルックマイヤー作曲のバラード「ザ・ファースト・ラヴ・ソング」では、美しいピアノ・ソロを聴かせてくれた。本楽団の前身であるサド・ジョーンズ=メル・ルイス楽団の創立メンバーで最古参のジェリー・ダジオン(as,ss,fl)は、今年80歳とは思えないほどの力強い演奏で収穫。本編最後は代表曲「ザ・グルーヴ・マーチャント」のサックス・ソリで、楽団の伝統を輝かせたのだった。

2012年11月19日  大使館でのライヴ&パーティー

2012年11月19日

 オランダを代表するビッグバンドであるジャズ・オーケストラ・オブ・ザ・コンセルトヘボウの来日を記念して、ピックアップ・メンバーによるライヴとパーティーが同国大使館で開催された。スタンダードとバップ・ナンバーを中心とした選曲と演奏は、各メンバーがメインストリーム・ジャズのスキルをしっかりと身につけた実力者であることが明らかになって収穫。ジャズ関係者ではなさそうな大使館とのお付き合いがあるゲストの皆さんに、ジャズの魅力を知ってもらう上でも、良い機会になったと思う。終演後はオーストラリア大使館恒例の美味しい料理とワインを堪能した。

2012年11月21日  北欧貴公子の一夜限りのライヴ

2012年11月21日

ニルス・ラン・ドーキー3@ブルーノート東京。終演後にバック・ステージで旧交を温めた。これほどの著名人になっても、気さくな人柄が変わらないのが嬉しい。以下はミュージック・ペンクラブ・ジャパンに寄稿したライヴ・レポート。
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 ニルスがトリオを率いて、5年ぶりに東京のステージへ帰ってきた。この間、新録トリオ作を2枚リリースし、生地コペンハーゲンの名店の復活に尽力。80年代に“デンマークの貴公子”と呼ばれたピアニストも、来年には50歳の大台に乗るが、その風貌は頭髪が少し白くなっただけで、ほとんどあの頃のままだ。今回は最新作『Human Behaviour』と同じ、母国の若手ベース&ドラムスのお披露目でもあった。意表を突いてオリジナル・バラードで幕を開けると、「リターン・トゥ・デンマーク」「デュ?ク・ジョーダン・メドレー」で母国への愛情を表明。ギターのトレモロで有名なクラシックの名曲「アルハンブラの思い出」を、そのイメージを失わずに自然体で演奏した場面が収穫。躍動的なメロディの新曲「ラフ・エッジズ」に、不変のメロディ・センスを聴いて嬉しくなった。

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2012年11月22日  デビュー作発売記念コンサート

2012年11月22日

 ヴォーカリスト石井智子の名前を知ったのは、つい最近のことだった。本人から直接の連絡を受けて、銀座ヤマハホールでのコンサートに招待されたのである。98年から米バークリー音大で学び、帰国後はジャズの研鑽を積んで10年というタイミングで、デビュー作『ベルラ』をリリース。会場は何故か和服姿の女性が多く、300席がすべて埋まった。事前にCDをチェックしていない初対面の石井の歌唱は、美しく澄んでいて、なかなかの技巧派と聴いた。家庭を持ちながらの活動はマイペースになるのだろうが、邦人女性ジャズ・ヴォーカル界のレヴェル・アップのためにも、継続的な活動を期待したい。

2012年11月24日  久々のトーク・イヴェント

2012年11月24日

 四谷のジャズ喫茶「いーぐる」で、久々にトーク・イヴェント(レコード・コンサート)を行った。「キース・ジャレット:1979?2012」と題して、今年発掘された79年録音作『スリーパー』をたたき台として、キースのヨーロピアン・クァルテットの真実を浮き彫りにすることを企図した。「マイ・ソング」のヒットゆえに、その甘美な美旋律が広くイメージされている同クァルテットが、実は活動の末期には無きアメリカン・クァルテットの音楽性をも体現していたことを物語るのが『スリーパー』であることが明らかにできたと思う。以下は当日の曲目リスト。
1. Personal Mountains (from『SLEEPER』ECM 2290/91)
●Keith Jarrett(p) Jan Garbarek(ts) Palle Danielsson(b) Jon Christensen(ds) 1979.4.16, Tokyo
2. Oasis (from『SLEEPER』)
●same as (1)
3. Oasis (from『PERSONAL MOUNTAINS』ECM 1382)
●Keith Jarrett(p) Jan Garbarek(ts) Palle Danielsson(b) Jon Christensen(ds) 1979.4.17, Tokyo
4. So Tender (from『STANDARDS, VOL.2』ECM 1289)
●Keith Jarrett(p) Gary Peacock(b) Jack DeJohnette(ds) 1983.1, NY
5. So Tender (from『SLEEPER』)
●same as (1)
6. So Tender (from『FREE / AIRTO』CBS ZK 40927)
●Hubert Laws(fl) Joe Farrell(fl) Keith Jarrett(p) George Benson(g) Ron Carter(b) Airto(ds) 1972, NJ
7. New Dance (from 『NUDE ANTS』ECM 1171/72)
●Keith Jarrett(p) Jan Garbarek(ts) Palle Danielsson(b) Jon Christensen(ds) 1979.5, NYC
8. For All We Know (from 『JASMINE / KEITH JARRETT & CHARLIE HADEN』ECM 2165)   ●Keith Jarrett(p) Charlie Haden(b) 2007.3,NJ
9. The Song Is You (from 『STILL LIVE』ECM1360/61)
●Keith Jarrett(p) Gary Peacock(b) Jack DeJohnette(ds) 1986.7.13, Munich

2012年11月26日  フュージョン界の名バイプレイヤーがリーダーで来日

2012年11月26日

 ウィル・リーズ・ファミリー@Cotton Club。リーと言えば古くは渡辺貞夫バンドの日本武道館公演でジャンプしながらベースを弾いた姿が、今も目に焼きついている。数年前に観たステージも、当時と変わらない若さを発散していた。今夜はスティーヴ・ガッド、チャック・ローブという名手を擁したファミリー・バンドで、丸の内に再登場。始まってみると、「ジョージー・ポージー」、24丁目バンド「ショッピング・アラウンド・アゲイン」等、1曲を除きすべてリーの歌入りだった。来年発売の新作『Love, Gratitude & Other Destrictions』からのナンバーもいち早く披露。やはりガッドのソロには観客が大興奮。ヴェテラン・ベーシストの存在感をアピールするステージだった。

2012年11月28日  女性ピアニストのインタビュー

2012年11月28日

 デビュー時から親しくしているピアニスト、アキコ・グレースに、正式なインタビューとしては久々の面談が実現した。媒体は音楽誌ではなく、「日本の大切なモノコトヒト」をテーマにした隔月誌『YUCARI』(マガジンハウス)。大切な日本として挙げてくれたのが、「百人一首」「座禅」だったのが興味深い。また音楽家として日本を表現する時に一番大切にしているものが「間合い」という話も、彼女の知られざる音楽性が明らかになって、有意義な取材となった。この模様は1月21日発売の同誌Vol.06に掲載される。↓
http://magazineworld.jp/books/all/?gosu=8806

2012年11月29日  ポーランド映画音楽の巨匠

2012年11月29日

 12月7日まで開催中の「ポーランド映画祭2012」の開催記念コンサートが、トッパンホールで行われた。初めて訪れた会場は手ごろなサイズで清潔感のあるホール。ジョニー・デップ主演作『ネバーランド』でアカデミー賞作曲賞に輝いたヤン A.P.カチュマレクと、『戦場のピアニスト』のヴォイチェフ・キラルという二人の作曲家の楽曲にスポットを当てて、ポーランド放送室内合奏団が演奏。四半世紀の歴史と幅広いレパートリーを誇る同オーケストラが奏でる美しいサウンドで、心地良い時間を過ごした。

2012年11月30日  ケルト音楽の最高峰

2012年11月30日

 今年で結成50周年を迎えたアイルランドの国宝級バンド、ザ・チーフタンズを、すみだトリフォニーホールで観た。第一部は10名のバンドが至芸を披露したソロ。第二部はトリフォニーお得意の新日本フィルとの共演。これは一体どのようになるのかと期待したが、予想以上の成果を生んだと言えよう。初共演のぎこちなさのようなものがまったくなく、両者が相乗効果を挙げたのだ。ダンサーが加わって、客席からは50周年を祝う手拍子が自然に起こり、視覚的にも楽しいシテージとなった。

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