Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイリー

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2012年12月03日  人気サックス奏者の企画プログラム

2012年12月03日

 デヴィッド・サンボーン@ブルーノート東京。年末の同店出演が恒例のサンボーンが、今回は今年リリースされたワーナー時代のベスト盤『アンソロジー』にちなんだ選曲でステージを務めた。この日のサンボーンは終始ご機嫌で、MCも冗舌。ファーストセットながら、演奏もたっぷりと披露してくれた。古いレパートリーが本人にリラックスした気分をもたらしたのかもしれない。ラストは80年代の代表曲「シカゴ・ソング」。終演後、ステージを降りて楽屋へ向かう途中、店員とやり取り。店員がお金を渡し、サンボーンが受け取ってステージに戻る、がお約束のパターン。しかし今回はお金でサンボーンは動かなかった。そこで店員が取り出したのは日本と米国の国旗。つまり日米親善のために、アンコールに応えてほしいというリクエストで、これにはサンボーンも「参った」。そして始まったのが「ザ・ドリーム」。かつての黄金選曲を再現してくれた最高の一夜であった。

2012年12月09日  ノルウェーの若手トリオが初来日

2012年12月09日

 スプラッシュガール@ピットイン。アンドレアス・ステーンスラン・ローヴェ(p,syn,electronics)、ヨー・バルゲル・ミューレ(b)、アンドレアス・ロンモー・クヌーツルー(ds,per,electronics)の若手トリオが、ノルウェーから初来日した。2003年に結成し、これまでAIMから1枚、Hubroから2枚のアルバムをリリースしている。オープニングアクトが場内を暖めた後、20:30からトリオの演奏がスタート。静かなムードの中、少しエレクトロニクスが加わって、サウンドが展開された。終演は21:35で、約1時間のパフォーマンス。二部の入れ替え制ではなく、1時間しか演奏しなかったのだ。これには意表を突かれた。終演後にメンバーに話を聞くと、母国で日本のプロモーターに会ったのが来日のきっかけだったとのこと。来年2月リリース予定の新作『Field Day Rituals』を受け取った。

2012年12月10日  スムース・ジャズの新星が初来日

2012年12月10日

 ジェシーJ@Cotton Club。2008年にメジャー・デビューした女性テナー奏者は、6年前の「ブラスト」@国際フォーラムに参加経験があり、単独のリーダーとしては今回が初来日になる。ぼくが選曲したユニバーサルの7枚組ボックス『Best Hits 100 Fusion』に「テキーラ・ムーン」を収録しており、個人的にも待望の初ライヴだった。丈の短い光沢のワンピース姿で登場すると、「カーニバルの朝」「マシュケナダ」「テキーラ?」等を次々にプレイ。アルバムでも感じていたが、ジェシーのスタイルはグローヴァー・ワシントンJr.からの影響が濃いと改めて思った。

2012年12月15日  ヨーロピアン・トリオを本邦初披露

2012年12月15日

 山中千尋@ブルーノート東京。これまで海外ミュージシャンを起用した山中のトリオ・リーダー作は、多くがアメリカ人、それも黒人の重量級というイメージが強かった。ヨーロッパにも活動の場を広げている山中は近年、現地でのライヴではイタリア人のベーシストとドラマーを起用しており、“ヨーロピアン”トリオでのお披露目が山中のブルーノート東京初出演と共に、今回実現する形となった。「シング・シング・シング」で幕を開けたステージは、先頃永眠したデイヴ・ブルーベックに捧げた「テイク・ファイヴ」、ジャズ・メッセンジャーズ風の「アントニオズ・ジョーク」と進行。ドラムレスの新作『アフター・アワーズ2』収録曲「ドリフト・アパート」では、新たなトリオ・ヴァージョンを打ち出した。アンコールの「八木節」は中間部をスロー・テンポに落としてピアノをフィーチャーしたニュー・アレンジが新鮮。終始エネルギッシュなパフォーマンスで、満員の観客を満足させた。

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2012年12月17日  UKジャズ界の重量戦車が丸の内に来襲

2012年12月17日

 コートニー・パイン・セクステット@Cotton Club。これまでは姉妹店のブルーノート東京に出演してきたが、今回久々の来日で丸の内に初登場。昨年リリース作『Europa』と同様、パインは全編でバスクラリネットを使用した。しかもテナーサックス的なブロウで、限界に挑戦するかのような高音域連続演奏を多用。まさに圧巻のパフォーマンスだが、デビュー時からのパイン・ファンでも、少し過剰な印象を受けた。個人的に注目していたゾエ・ラフマーン(p)は、最新リーダー作のジャケットにも似た青いドレス着用だったが、あくまでもリーダーをサポートする姿勢だったために、あまり目立ったプレイではなかったのが惜しまれる。次回はぜひ、自分のバンドでの再来日をお願いしたい。

2012年12月18日  米国、カナダ、日本の合体クァルテット

2012年12月18日

 前回は弟のドラマー、ジョーとの兄弟ユニットで来日したパット・ラバーベラが、カナダのドン・トンプソン(p)と共に、日本勢の金澤英明(b)、ジーン・ジャクソン(ds)とクァルテットを編成。新宿ピットインに出演した。パットがMCを務めての進行は、チェット・ベイカーに教えてもらったという「Beatrice」、ベニー・ゴルソンがハーブ・ポメロイ・ビッグバンドのために書いた「Stablemates」、チャーリー・パーカーが初演でテナーを吹いたマイルス・デイヴィス作曲の「Half Nelson」などと、楽曲のエピソードを交えて紹介。「Moments Notice」と「It's Easy To Remember」にはジョン・コルトレーンの影が見えた。ポール・チェンバース作曲のブルース「Whims Of Chambers」では、エルヴィン・ジョーンズ・ジャズ・マシーン時代にパットが同僚だった辛島文雄(p)が飛び入りで参加。アンコールは季節を反映して、メル・トーメの「The Christmas Song」。トンプソンのベテランらしい巧者ぶりも印象的だった。

2012年12月20日  フィンランドのヴェテランが初来日

2012年12月20日

 エーロ・コイヴィストイネン(ts)4+ユッカ・エスコラ(tp,flh)@赤坂B flat。ランディ・ブレッカー、ジョン・スコフィールド参加作『Altered Things』(Timeless)でその名が知られるコイヴィストイネンは、近年注目を集めるフィンランドのジャズ・シーンでは重鎮的な存在だが、日本にやって来る機会はこれまでなかった。今回はファイヴ・コーナーズ・クインテットで日本でも人気のエスコラと2管を組み、邦人トリオとのクインテットを編成した。7,8回モザンビークを訪れた経験で作曲した「Mos」や、2管ユニゾン・テーマのオリジナル等を演奏。安定したリズム隊の好演も手伝って、ヴェテランが本領を発揮できたのが収穫だった。現在はヘルシンキ在住の名手の気さくな人柄に触れることもできた。

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2012年12月29日  チャート・サミット2012 大忘年会

2012年12月29日

 FM COCOLOの番組「The Majestic Saturday」で毎月HMVオンライン・ジャズ・チャートの解説をしている。今日は4つのジャンルの解説者がスタジオに集まって、今年の音楽界を語り合う生放送に出演。パーソナリティちわきまゆみさん、ワールド担当のフジカワPAPA-Qさん、ダンス&ソウル担当の大伴良則さん、ロック担当の今井智子さんとの楽しい座談会となった。ぼくも音楽の趣味が幅広いが、皆さんそれぞれのジャンルのエキスパートなので、このチャート・サミットでは毎回発見があって、仕事の域を超えた収穫があるのも楽しみだ。ジャズからは最優秀新人賞の意味も込めて、挟間美帆『Journey to Journey』を紹介した。終演後はスタッフを交えての忘年会に突入。1年間の労をねぎらった。

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