Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイリー

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2013年04月01日  ヴェテラン・ピアニストのレコ発ライヴ

2013年04月01日

 山本剛トリオ@Body & Soul。「ジャズジャパン」に寄稿したライヴ・レポートを転載する。
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 14年ぶりのヴィーナスレコード復帰作『ジェントル・ブルース』をリリースした 山本剛の記念ライヴ。冒頭、収録曲を演奏するけれど、その後は自分のやりたい曲をやると、告知したあたりは山本らしい。ピアノ独奏のイントロから入り、肩の力を抜いたソロへと進む<バイ・バイ・ブラックバード>、一音一音を慈しむように弾く<想い出のサンフランシスコ>、アーマッド・ジャマルの代表的トリオ・レパートリーのテーマに独自のリズミカルなキメ・フレーズを入れた<ポインシアナ>、「本当はブルースではない」と注釈した曲調が<ディア・オールド・ストックホルム>を想起させる自作タイトル曲と、新作からのナンバーも、長年のキャリアで培ったスタイルで演奏された。イントロで示唆した曲はあくまで入り口で、本編のテーマは別の曲、という手法も山本流の特徴だ。<黒い瞳>と思わせて、自身の再人気曲になった<クレオパトラの夢>へとつなげたアイデアもいい。
 制約から解放されると、セカンド・セットの<ウォーターメロン・マン>では原曲とはパターンを変えて、リズミカルに仕上げた。そんな山本と40年来の付き合いにある大隈寿男はピアノに寄り添いながらも、先陣を切ってトリオを牽引。これは山本との信頼関係があればこそだろう。終盤に至ると山本の日本語歌唱が飛び出した。新しいファンには馴染みが薄いかもしれないが、2000年リリース作『ダイナ』で山本は全編ヴォーカルをとる新境地を打ち出しており、現在はすっかりライヴの定番になっている。山本がファンだというエノケン(榎本健一)譲りの調子で「のませてちょうダイナー」と歌うと、常連客が呼応して「バカヤロー」の大合唱。これが目当てでライヴに足を運ぶファンが少なくないのも納得の、楽しいお約束のシーンだった。安定した演奏とエンタテインメント性溢れるパフォーマンスに、オールドスクール健在なり、を知る一夜となった。

2013年04年03日  現代NYジャズを体現する新世代トリオ

2013年04月03日

 アーロン・ゴールドバーグ、ベン・ウィリアムス&ジャマイア・ウィリアムス・トリオ@Cotton Club。一昨日まで渡辺貞夫と共演公演を務めた3人の、トリオ・ライヴ。これまで色々な場面で共演経験がある3人が、今回初めて3人だけで組んだという。ベース・ソロのテーマによるオスカー・ペティフォード曲「トリコティズム」で幕を開けると、「ポインシアナ」のリズム・パターンを借用した「ドーン・オブ・ア・ニュー・デイ」、ウィリアムスが燃えたゴールドバーグ曲「オールズ・ブルース」、スタンダード曲「アローン・トゥゲザー」、ウィリアムスが書いたジャズ・ロック調の「ミスター・ダイナマイト」と進行。素晴らしい演奏。早くアルバムを出してほしい。

2013年04月04日  オーストラリア大使館の観桜会

2013年04月04日

 Australia Day in Spring 2013@オーストラリア大使館。広い中庭に1000人以上の関係者を招いたランチ・パーティー。ジャズ関係者ではディスクユニオン山本氏、東京JAZZプロデューサー八島氏と談笑しながら、美味しい料理とお酒を楽しんだ。日本ではまだまだ発展途上にある同国のジャズのスポークスマンとして貢献することを再確認。終演後は山本氏と麻布十番の有名居酒屋で呑み、赤坂のバーへとはしご。幸せな一日であった。

2013年04月05日  日本在住米国人のレコ発ライヴ

2013年04月05日

ジェイコブ・コーラー@STB。以下に「ジャズジャパン」6月号掲載のライヴ・レポートを転載する。
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1月に新作『シネマティック・ピアノII』をリリースしたジェイコブ・コーラーの記念ライヴ。同作は2011年秋に出た前作が好評を得て、本人もまだまだカバーしたい映画音楽があるということで制作された。当夜はレコーディングのバンド・メンバー5名がそのまま参加する理想的な編成。ファースト・セットの幕開けは前作のやはり1曲目に入っているエンニオ・モリコーネの名曲で、アルバム・バージョンとは変えて中間部にピアノとピチカート・バイオリンのデュオを挿入した。一転して全員でアストル・ピアソラのタンゴ名曲を情熱的に演奏すると、映画『ディア・ハンター』からのナンバーの美旋律を際立たせる。かつて映画音楽の作曲家を志望し、そのための勉強を続けたキャリアを反映したのが自作曲<シネマティック・ピアノ・テーマ>。バイオリンが主旋律を奏で、やがてトリオが一つのメロディに重なってゆく書法センスは、コーラーの今後の可能性を示唆した。本シリーズ作に連続参加した畠山美由紀が赤のドレス姿で登場すると、ステージは一気に華やいだムードに。「ムーン・リバー」を正調バラードで歌い、コーラーの提案を受けて前作で歌った「スマイル」をすっかり自分のレパートリーにした。
 セカンド・セットに進むと、トリオのみのショパン曲ではジャジーなアレンジに、ロック調やスロー・テンポで変化をつけ、映画『タイタニック』の収録曲をドラマティックな原曲よりもしっとりとまとめる。やはり新作に参加した青木カレンが、故郷のような地元の公園を思い出しながら歌った「ジョージア・オン・マイ・マインド」は、ブルース・シンガーではない青木の声と同曲の組み合わせの面白さを狙ったコーラーの企図が奏功。タッチの美しさがライヴでも映えたコーラーが、「マイ・フェイバリット・シングス」ではジョン・コルトレーンに由来するモーダルなプレイで、別の一面も披露。ピアノを共通楽器として、ジャズ・トリオとクラシック・トリオが合体した5人編成のアイデアが光るステージだった。

2013年04月07日  ECMアーティストの単独公演

2013年04月07日

 昨年ECMから第2作『Canopee』をリリースした4人組“ダン・レザルブル”のピアニストであるクリスティアン・ヴァルムルーが、バンドのジャパン・ツアーを本日昼に終えた余韻を残しながら、夜にソロ・ライヴを行った。初めて訪れたカルラホールは、経堂の個人宅の地下にある小さな会場。ホーム・コンサートのような雰囲気の中、約40分の連続演奏とアンコール曲「ボーイ・1970」の計約1時間のステージ。終演後に本人と話をすると、40分の前半が即興、後半がオリジナル曲で、ソロ・ライヴはいつも1セット制とのことだった。

2013年04月12日  進境著しいトランペッターのクインテット公演

2013年04月12日

 高澤綾クインテット@Tokyo TUC。高澤は1月から2ヵ月間、NYとニューオリンズで過ごし、現地ミュージシャンとの共演など様々な音楽経験を積んできた。今夜は自身の活動の中心に置くレギュラー・バンドでの帰国ライヴである。2セットを聴いて思ったのは、アメリカでの体験が確実に成果となって、トランペット・プレイに反映されていたことだ。音楽性の幅が広がっている。ぼくが知る中では、キャリア最上のステージだった。この方向でさらに精進してほしい。

2013年04月13日  70年代ポップスを歌う夜

2013年04月13日

 ニコール・ヘンリー@Cotton Club。予告通り、70年代ポップスをカヴァーした新作『So Good, So Right』と連動したプログラムとなった。同店にはクリスマス・シーズンを含め、これまで3回出演しており、すっかり常連アーティストと言える。クァルテットをバックに、ジョニ・ミッチェル「ビッグ・イエロー・タクシー」、グラディス・ナイト&ザ・ピップス「ニーザー・ワン・オブ・アス」、ジェームス・テイラー「ファイアー・アンド・レイン」等を歌唱。アンコールではデイヴ・ストライカー(ac-g)とのデュオで、フリートウッド・マック「ランドスライド」を歌い、ニコールが少女時代に親しんだであろう名曲への愛情を示してくれた。

2013年04月18日  現代最高峰のピアノの詩人

2013年04月18日

 昨日に続き、フレッド・ハーシュ@Cotton Club二日目。2007年以来、6年ぶりのソロでの来日。2008年には生死の境をさまよう深刻な病魔に襲われたものの、奇跡的な復帰を果たした経緯があるだけに、すべてのファンがこの日を待ち望んだに違いない。印象的なシーンが数多くあった中で、最も魅了されたのは魔法のような左手の動き。主旋律の右手の伴奏にとどまらず、実に色彩感豊かな動きをするのだ。この点を本人に直接尋ねてみると、子供の頃からバッハや弦楽四重奏が好きで弾いてきた経験が、自分のスタイルを作っている、と教えてくれた。セットごとに曲目を替えていたが、アンコールは自作曲「ヴァレンタイン」が定番だった。

2013年04月20日  フィンランドの若手ピアニスト

2013年04月20日

ヨーナス・ハーヴィスト・トリオ@武蔵野スイングホール。以下に「ジャズジャパン」6月号掲載のライヴ・レポートを転載する。
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世界的にピアノ・トリオ全盛時代が続く中、日本におけるフィンランド産トリオの認知度はまだ発展途上だ。昨年12月にリーダー第2弾『ミクロ・トゥ・マクロ』で日本デビューを果たしたヨーナス・ハーヴィストが、レコーディング・メンバーと共に初来日。東京では唯一となる会場の完売公演を観た。スーツ姿で登場した3人から、スタイリッシュなイメージを大切にする姿勢が伝わってきて、好感度アップ。全曲オリジナルの新作がそうだったように、このピアニストには美旋律を生み出す血が流れているのだなと再認識した。ファースト・セットは3曲目まで新作と同じ選曲によって、アルバムの世界観を再現。5曲目の「パーティイング・クォークス」になると、ハーヴィストは低音域での表現を意識した左手のプレイで、アルバム・ヴァージョンとは異なる音風景を演出。その意図を汲んだかのように、ヨーナス・リーパがタムとフロアタムの低音ドラムを中心にソロを展開して、前半のハイライトを現出した。
 セカンド・セットはメンバーが会場の雰囲気に慣れたようで、1曲目に新曲「シバルバ」をプレイ。シンバルをスティックで擦るドラム・ソロで始まると、3人がそれぞれの見せ場を繰り出した。「カラー・コンファインメント」は原曲にないフリー・インプロヴィゼーションも飛び出して、多様性を持つトリオの音楽性を実証したことが特筆される。当夜のステージで明らかになったのは、常識にとらわれないリーパの多彩なテクニックと状況判断のセンス。つまり冒頭のスーツ姿のイメージが次第にほぐれて、トリオの本性が顕になったことに意味があると感じたのである。最新作の全8曲を演奏した後のアンコ?ルに「ラッシュ・ライフ」を選曲。アルバムだけでは知ることのできなかったトリオの多彩な魅力が感じられたのが収穫だ。現代北欧ジャズの美点を体現するハーヴィスト・トリオが、フィンランドの代表格に昇格する日も遠くないと確信したステージだった。

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2013年04月24日  再出発した女性ヴォーカリスト

2013年04月24日

石井智子@JZ Brat。昨年11月に歌手生活10周年記念作『ベルラ』をリリースし、ジャズ・ヴォーカリストとして決意を新たにした石井のバースデイ・ライヴを観た(生年非公開)。西直樹トリオをバックに、スタンダードとポップスをカヴァー。夫婦で来場した男性客のリクエストにこたえて、杏里の「サマー・キャンドルズ」をデュエットで歌ったファン・サービスも。昨年のコンサートでも感じたが、改めて彼女は歌が巧いと思った。

2013年04月30日  創業25周年の特別公演

2013年04月30日

 1988年のオープン以来、日本を代表するライヴ・レストランとして、数多くの感動を提供してきたブルーノート東京。インターナショナル・ジャズ・デイの今日、10年ぶりに再結成した秋吉敏子ジャズ・オーケストラの特別公演が、音楽関係者を招いて開催された。プログラムは渡米以降のキャリアを凝縮したもので、70年代にビッグバンドの頂点を極めて十分な業績を残しながら、まだやり足りない情熱を再燃させたトシコの、音楽家としての執念に敬服。開演前にビュッフェ・フードが提供され、終演後も継続してお酒を惜しまない同店の最高のホスピタリティに感激した。

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