Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイリー

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2012年07月03日  オスロでの宴

2012年07月03日

 昨年同様、ノルウェーの《コングスベルク・ジャズ・フェスティヴァル》取材のため、オスロに向かった。今回はKLMオランダ航空の利用で、アムステルダム経由。いつものようにオスロ空港に到着したのは夕方だった。鉄道はまだ工事中のため、バスでオスロ市内へ移動。今回は8度目のオスロだが、今夜のホテルは初めての場所のため、ちょっと遠回りをしてしまう。チェックイン後、以前東京のノルウェー大使館に勤務していたマリアンネさんと1年ぶりに再会。外務省ルンデ氏主催のホーム・パーティーにご一緒した。昨年に引き続き、同氏が企画してくれたフェスティヴァル前日の“warm up evening”である。宴には「Jazznytt」編集長ヤン・グランリも参加。ヤンとは昨年12月の《ペナン・アイランドJF》以来の嬉しい再会となった。まずテラス席で心地よい空気の中、白ワインで乾杯。2003年にぼくが初めてコングスベルクに行った時、ルンデさんがセッティングしてくれた茶会の思い出話などで笑いが絶えない。室内に移動するとメインディッシュと赤ワインを楽しみながら、ディープなジャズ話に花が咲く。この雰囲気はノルウェーの伝説的なジャズ・ジャーナリスト、ランディ・ハルティンが、米国からやってきた著名ミュージシャンを自宅に招いた数々のエピソードと重なって、本当に嬉しく思った。

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2012年07月04日  コングスベルク・ジャズ・フェスティヴァル初日

2012年07月04日

昨年同様、まだ鉄道が工事中のため、オスロからバスでコングスベルクへ移動。中央駅で関係者と落ち合い、さらにバスでホテルへ。チェックイン後、フェスティヴァル(KJF)会場に向かった。ぼくが1組目に選んだのは、スールヴァイグ・シュレッタイェル(vo)&モッテン・クヴィニル@Kino。2003年に初めてKJFを訪れた時、この同じ映画館の会場で、パリッシュにゲスト参加したスールヴァイグを観ている。その時は初めて器楽的歌唱をしたということで、現地の評論家も驚いていた。彼女が率いるスロー・モーション・クインテット(オーケストラ)のメンバーで、10年来の音楽パートナーであるクヴィニル(p,key,laptop)とは、昨秋ローリング・ストーンズ、トム・ウエイツ、ABBA等のポップスをカヴァーした初のデュオ作『Antologie』をリリース。そのライヴ・ヴァージョンが期待されたステージは、同作でソングライターではなくシンガーとしての自分を強調したように、豊かな声量を印象付ける歌唱を披露した。「ワイルド・ホーセズ」ではクヴィニルのピアノに、キース・ジャレット『ザ・ケルン・コンサート』を想起。シゼル・アンドレセン&ブッゲ・ヴェッセルトフト以来、ノルウェーで脈々と流れる女性ヴォーカル&鍵盤デュオの現在形を聴いた。

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2012年07月05日  コングスベルク・ジャズ・フェスティヴァル2日目

2012年07月05日

 午前中はホテルで関係者のためのセミナーが開かれた。BBCのフィオナ・トーキングトンが、ノルウェーの若手ギタリスト、シュティアン・ヴェスターヒュスにインタビュー。2年前にベルゲンの《ナットジャズ》でフィオナと話した時、シュティアンがイチ押しと聞いていて、その後の活躍ぶりを踏まえるとフィオナの先見の明が実証された形になっている。ロンドンのジャズ・コースで学んだ後、現地にとどまるも、音楽だけで生活できなかったためにアイス・クライミングのインストラクターの仕事をした等の興味深い話を披露。
 KJF会場へ移動し、14:00?エプレ・トリオ&カール・セグレム@Energimolla。エプレ・トリオは5月下旬から6月上旬にジャパン・ツアーを行っており、その時にピアニストのアンドレアス・ウルヴォと再会を約束していた。ステージが進むにつれ、わずか1ヵ月ちょっと前に東京で観た彼らとは違う印象を抱いた。同トリオのアルバムの発売元であるNORCDの主宰者でもあるセグレムが加わった後半のセットは、KJFらしい収穫となった。
 17:00からはヴィジェイ・アイヤー3@教会。ハービー・ニコルス、ヘンリー・スレッジル、アンドリュー・ヒル、マイケル・ジャクソンのカヴァーを柱とした選曲。初めて観たアイヤーは、MCで意外にしゃべる人だということがわかった。
 19:00からはAll About Jazzがキュレーターを務める2組のデュオ@Energimolla。前半はアイヴィン・オールセット&トーマス・ストローネン。ワールド・プレミアとなった個性の異なる二人のノルウェー人ドラマーは、序盤は探り合いの様相だったが、次第に音圧を増してゆき、1曲目はノンストップで約30分の即興を演じた。続いて登場したのは初デュオ作『Didymoi Dreas』(Rune Grammofon)をリリースしたばかりのシゼル・アンドレセン(vo)&シュティアン・ヴェスターヒュス(g)。ハスキーで力強いヴォイス、ノルウェー語歌唱、語りのシゼルと、例によって様々なアタッチメントを駆使したギターの共演。シュティアンはソロとは違って、ヴォーカルとのデュオを意識した音作りだった。今日ホテルのランチで会話した時に、「シゼルは女性歌手のパイオニアだよ」と語ってくれて、シュティアンがシゼルをリスペクトする気持ちが、パフォーマンスから伝わってきた。
 22:30からはアルヴェ・ヘンリクセン(tp)@Kino。テリエ・イースングセット、インガー・ザックという2人のパーカッション奏者を含むカルテットが演奏し、スクリーンに映像が映る中、女性ダンサーがコンテンポラリーな踊りを披露。ステージは終始照明が落とされ、幻想的な雰囲気で進んだ。KJFが制定する<DNB賞>の昨年度の受賞者が、その記念としてさらに前進する独創的な総合芸術を目指したことは特筆したい。

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2012年07月06日  コングスベルク・ジャズ・フェスティヴァル3日目

2012年07月06日

 午前中は関係者向けのセミナー。AllAboutJazzのマイケル・リッチが、運営するウェブサイトに関して詳しく紹介してくれた。ぼくも日常的に利用しており、新しいサービスにも期待を寄せたい。
 14:00からはペル・ヨルゲンセン(tp,vo,per)&フレンズ@Energimella。近年パートナーシップを深めているテリエ・イースングセット(per)を含むクインテットは、今回が初顔合わせ。昨年のKJFでヨルゲンセン(1952?)を観た時に強い印象を受けていて、彼としては珍しいリーダー・バンドのステージは楽しみにしていた。30分が経過して、トランペット・ソロが終わり、4人の場面になったところでサウンドは急展開。ヨルゲンセンが器楽的ヴォイスを発しながらパーカッションを叩くと、イースングセットとの打楽器合戦に。90年代からヨン・バルケ・オーケストラで活躍したベテランが、ヴォーカリストとしても強力であることをまざまざと見せ付けられたステージであった。
 15:30からはエヴァン・パーカー&ジョー・マクフィー@Smeltehytta。昨年はここでペーター・ブロッツマンとの壮絶なサックス・デュオを演じたパーカーが、今回はノルウェー新世代との音楽交流もあるマクフィーと登場。マクフィーはまずポケット・トランペットを使用し、意外なほど大きな音や、高音と声を同時に出したり、朝顔に水を入れて少しずつ落としながら吹くテクニックを披露。パーカーは循環呼吸法や激しいタンギングで応酬。お互いに協調/反応しながら、緊張感と和やかな雰囲気を同時に醸し出してみせた。
 17:00からはヨン・バルケ・マグネティック・ブック@教会。2枚組の『Magnetic Works 1993-2001』(ECM)がリリースされたばかりのタイミングだ。AAJ提供のステージは9名のストリングスを含む14人編成。バロック弦楽団は、メンバーが会場内に散って、また定位置に戻る動きを盛り込んで、視覚的な面白さも打ち出した。特筆すべきは3時間前にリーダー・バンドのライヴをこなしたペル・ヨルゲンセンが、サイドマンとして参加したこと。それも一メンバーのレベルではなく、観客の耳目をさらってしまうほどの活躍ぶりだったのだ。特にこれほどまでにヴォーカリストとして強力だとは、認識を新たにした。日本ではほとんど無名のヨルゲンセン、これを機にぼくの媒体でアナウンスしていきたいと思っている。
 19:00からはマッツ・アイレットセン(b)・スカイダイヴ・クインテット。昨秋リリースした同名作クインテットである。フィンランドのアレクシ・トゥオマリラ(p)、オラヴィ・ロウヒヴォウリ(ds)を含む北欧バンドは、どの曲でもトーレ・ブリュンボルグ(ts)の色合いが濃く反映されており、サイドマンとして参加したテナー奏者が存在感を輝かせた。
 22:30からはアトミック@Kino。来日公演も重ねているノルウェー&スウェーデンのクインテットだ。東京で観た経験と照らし合わせると、ノルウェーだからの収穫があった。60年代の米国ジャズのハードバップとフリーを土台にした音楽性に、独自の新しさを加えたサウンドは、すでに王道を築いた貫禄さえうかがえる。
 23:59からはアルヴェ・ヘンリクセン+オウドン・クライヴ+ヘルゲ・ノルバッケン@Energimella。前日に受賞記念コンサートを行ったヘンリクセン(tp)が、2人の打楽器奏者を迎えたトリオで、コンセプトの異なるステージを披露。ジャンベ2台を中央に配したセッティングは、ヘンリクセンとクライヴが電気関係を、ノルバッケンがアコースティックを担当。近年のノルウェー・ジャズのトレンドを体現した、ツイン・ドラムスのパフォーマンスとなった。

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2012年07月07日  コングスベルク・ジャズ・フェスティヴァル4日目

2012年07月07日

 3泊したStoras Gjestegardから、フェスティヴァル・エリアのグランドホテルへ移動。13:00過ぎから教会前のVIPエリアで、KJFが制定する<DNB賞>の受賞者が発表された。本年度の受賞者はウーラ・クヴェンベルグ(vln)。昨年リリース作『Liarbird』が<ノルウェー・グラミー賞>に輝いており、今回の受賞で名実共に同国を代表するプレイヤーにステージアップしたと言える。
 15:00からリーヴェ・リエン@Energimella。女性歌手リーヴェ・マリア・ロッゲンとピアニスト、ヘルゲ・リエンのデュオ・チームは昨年デビューし、お披露目作『Lavesalg』(Jazzland)をリリースしたところだ。リーヴェは10年前にカム・シャインの一員として人気を集め、2003年のKJFでは3000人収容のスポーツホールで交響楽団と共演。ライヴ・アルバムも生まれている。ヘルゲはDIWからのリーダー作で、日本でもお馴染みの存在。昨年5月にヘルゲにインタビューした時、リーヴェ・リエンに関する情報を得ていて、ノルウェー語歌唱にこだわることがユニット・コンセプトの1つだとわかっていた。オリジナル曲、ボサ、「オーヴァー・ザ・レインボー」のようなスタンダードを選曲し、リーヴェは静かな雰囲気からスキャットやヴォーカリーズのテクニカルな歌唱まで、幅広いスキルを印象付けた。器楽的歌唱とピアノ内部演奏のリズミカルなナンバーも披露し、ノルウェーの女性歌手&鍵盤奏者のデュオ・チームにあって、独自性を打ち出していることが実感できたことが収穫となった。
 この日を迎える前に、ヘルゲとメールでやり取りをしていて、終演後にホテルのレストランでヘルゲ夫人のイーナ、ヘルゲのリーダー作の制作者であるOzella MusicのDagobertと再会を祝った。

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2012年07月08日   帰国〜食の話

2012年07月08日

 コングスベルクのグランド・ホテルを早朝にチェックアウトし、バスでオスロ中央駅へ向かうスケジュールは昨年と同じ。ただし今回は飛行機の出発が1時間遅かったので、余裕があった。6:00にチェックアウトした去年は、ホテルの朝食にありつけず、空腹のままオスロ空港まで移動した経験がある。ホテル客室のパンフレットには、日曜日の朝食は8:00からとなっていて、それは望めないのだが、早朝のサービスがあるような記載が認められる。前日に受付で問い合わせると、朝食を用意することはできないが、テイクアウトの朝食を提供することは可能とのこと。約750円はノルウェーの物価を考えれば決して高くなく、迷わずオーダーした。果たしてチェックアウト時に受け取ったのは、リンゴ2個とサンドイッチ4個のパッケージ。つまり2人分の朝食なのだった。しかも、その代金もインターネット使用料も主催者負担。ヨーロッパ旅行の個人的な悩みはパン食の連続なのだが、ホテルがわざわざ作ってくれたこのサンドイッチは、今まで海外で食べた中で最高に美味だった。瓢箪型のリンゴも美味。肉料理のディナー以上に、思い出に残る海外の食事となった。
 久しぶりに利用したKLMオランダ航空は、エコノミークラスでも、飲食のサービスが良好だった。2回のメイン・ディッシュではビールやワインのアルコールも充実していたし、消灯した時間帯にもソフトドリンクとアイスクリームを巡回。快適な空の旅のために努力する姿勢に、好感を抱いた。中継地で身体検査を受けた後は、特別なことがないのが通例だが、アムスエルダムのスキポール空港では搭乗直前に再度身体検査があり、そこで水は没収される。これって何とかならないですかね。

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2012年07月12日  エリントン楽団と共演した邦人女性歌手

2012年07月12日

 今春、『シングス・ウィズ・ザ・デューク・エリントン』をリリースした平賀マリカが、六本木STBに出演した。近年は毎年のように来日公演を行っているエリントン楽団と、どうしても共演作を制作したいとの一心で、半ば「ストーカー状態」(本人からヒアリング)の追っかけ活動が実を結んだというわけである。ステージは19人編成のビッグバンドを従えて、ファースト・セットはエリントン・ナンバーを中心に進行。最新作の選曲に関しては、平賀サイドの提案ばかりでなくエリントン楽団からもアイデアが出された。同楽団の現在のリーダーであるトミー・ジェームスの提案曲「アイ・ディドント・ノウ・アバウト・ユー」は、日本人歌手による録音は少なく、平賀にとっての特別な一曲になった趣だ。
 セカンド・セットでは太田剣(as)&トリオや4トロンボーン&トリオとの、ボサやポップスを盛り込んで、平賀のキャリアを反映。後半は再びビッグバンドとのエリントン・ナンバーにシフトし、本編の最後は「A列車で行こう」で締めた。観客の1人として、安心して聴くことのできる数少ない邦人女性歌手である平賀は、今後も継続して応援したいと思っている。

2012年07月14日  夏にふさわしいラテン・ジャズ・グループ

2012年07月14日

 デイヴ・サミュエルズ率いるカリビアン・ジャズ・プロジェクトを、丸の内 Cotton Clubで観た。70?90年代にスパイロ・ジャイラのメンバーとして活躍後、同プロジェクトにシフトし、ラテン・ジャズの魅力の普及に努めてきた。オリヴァー・ネルソンの「ストールン・モーメンツ」で幕を開けると、コンガ・ソロがテーマを導くスタンダード「あなたと夜と音楽と」やオリジナル曲を取り混ぜて進行。70年代半ばに出世ユニットとなったダブル・イメージ時代のシリアスな音楽性がサミュエルズに対する第一印象だったのだが、MCでは大学教授然とした風貌からジョークが飛び出して、イメージとのギャップを面白く受け止めた。アンコールは「チュニジアの夜」。ヴィブラフォンとマリンバの2台を駆使し、このサウンドとの親和性の高さを示してくれた。

2012年07月16日  デュオ作の記念ライヴ

2012年07月16日

 3月に『アストロラーベ』をリリースした西山瞳が、共演者の馬場孝喜(g)とのデュオ・ライヴを行った。会場は田町のFazioliショールームで、前回とは場所が移転しており、よりライヴ向きのスペースが設計されていた。ピアノ・トリオを作品の中心としてきた西山は、デュオ作がセールス面を含めて難しいことを認識した上で、粘り強くリリースに漕ぎ着けた経緯がある。その過程を知っているだけに、この日を迎えたことを祝福したい。物語性を帯びた組曲は、世界レヴェルで作曲家として高い評価を獲得している西山の、こだわりの挑戦。現在サポート・ギタリストとして引っ張りだこの馬場の安定感は、頼もしく映った。このタイミングで同作を世に出したことは、後々価値を生むだろう。

2012年07月20日  90年代の英国人気バンドが来日

2012年07月20日

 Soul II Soul@ビルボードライブ東京。ジャズ以外の音楽も楽しんできたぼくにとって、ソウル、レゲエ、ハウス、ヒップホップを融合したサウンドを打ち出したSoul II Soulは、忘れられないユニットだ。そんな彼らが初代ヴォーカリストのキャロン・ウィーラーを含む布陣で来日するというので、これは見逃せないとなった。バンドはもう1人のリード・ヴォーカリストのシャーリー・ペリーと3人のコーラスを配した総勢10名。そこに2名の女性ヴァイオリニストがいたのだが、演奏が進むにつれて彼女たちがストリング・セクションを最小編成で機能させる目的の布陣だとわかった。リーダーのジャジーBは、ラップトップでベーシストとドラマーを務め、自分流儀の音作りを貫いた。最後はスティーヴィー・ワンダー「迷信」のリフを使用して終結。今スウィング・アウト・シスターの拡張版新譜『It’s Better To Travel』を聴きながら本稿を書いているのだが、ジャズとポップスが関連した80年代の英国音楽シーンに関しては、いずれまとまった原稿を書くべきだと思っている。

2012年07月23日  異色の編成による邦人トリオ

2012年07月23日

坂田明(as)+八木美知依(箏)+本田珠也(ds)@新宿ピットイン。フリー・ジャズの枠内にとどまらないユニークな活動を続けるヴェテランの坂田、海外のフリー系ミュージシャンとのプロジェクトによりジャズ界で独自のポジションを築く八木、そして参加仕事が幅広いながらも一貫したポリシーを持つ本田。この3人がいっしょになると、どのようなサウンドが生まれるのか?結果は圧倒的なパワーに満ち溢れたサウンドだった。MCで笑いが起こったのは、坂田のキャラクターならでは。アンコールでオーネット・コールマンの「ロンリー・ウーマン」を演奏した。

2012年07月24日  アイランド・ジャズ・ナイト

2012年07月24日

 NYを拠点に活動するギタリストの西藤ヒロノブは、自身の音楽を「アイランド・ジャズ」と名乗って、独自性を打ち出してきた。今夜は新作『アルフィー』の発売直前となるライヴを、渋谷JZ Bratで観た。舞台美術はcoyote music & seaが担当。目立ちたがりが普通のギタリストにあって、西藤のパフォーマンスはむしろ控えめなくらいの印象があった。その点で今夜のステージはこれまでのベストと言える。菱山正太(p)+杉本智和(b)+岡部洋一(per)の実力者がサポートしたのも、西藤には幸いだった。スペシャル・ゲストの中西圭三(vo)は、Zoo時代にハマったことを思い出して、個人的な収穫となった。

2012年07月25日  世界に誇れるピアニストのコンヴェンション

2012年07月25日

 9月5日に新作『ムーヴ』をリリースする上原ひろみが、ブルーノート東京でのコンヴェンションに出演。昨年春リリースの前作『ヴォイス』で新しいトリオを結成し、欧米のツアーを通じて結束力を強化。個人的には1枚限りのプロジェクトかと思っていたのだが、アンソニー・ジャクソン(b)+サイモン・フィリップス(ds)との活動を重ねたことが、上原に同じメンバーでの次の1枚を決意させたのだろう。コンヴェンションは上原へのインタヴューで始まり、続いてジャクソンとフィリップスが登場して、トリオの演奏が行われた。様々な環境と条件でのステージで鍛えられたトリオが生み出すサウンドは、もちろん説得力が豊か。いつでも全力投球のひろみちゃんは、この昼間のイヴェントでも同様だった。

2012年07月26日  NY在住の邦人サックス奏者が帰国

2012年07月26日

ペットボトル人間@ピットイン。1月に帰国公演を行った吉田野乃子(as)率いるトリオが、同店に初出演した。これは東京での活動に関しては、ステージ・アップと言える。昨年ジョン・ゾーンのTzadikからデビュー作をリリースし、欧米で好意的なレヴューを得ている中での凱旋だ。近年、邦人ジャズ界は女性アルト奏者の人口が増加傾向であり、海外在住のミュージシャンも少なくない。吉田はフリー・スタイルということもあって、日本のメディアで取り上げられることは少ないが、ぼくは2年前にドイツの《メールス・フェスティヴァル》で会って以来、応援している。同祭で観た吉田がリーダーのSuper Seaweed Sex Scandalは活動を停止したとのこと。

2012年07月27日  3年ぶりとなるトリオでの来日公演

2012年07月27日

 ブラッド・メルドー・トリオが2009年の前回と同じく、サントリーホールに出演した。「休憩なしの約90分間」とアナウンスされたステージは、基本的に前回を踏襲したスタイルと思えた。演奏曲目はステージに登場する直前に、メルドーからラリー・グレナディア(b)とジェフ・バラード(ds)に口頭で伝えられたとのこと。注目のオープニング・ナンバーはアルバム未収録のポール・マッカートニー作「グレイト・デイ」。ビートルズ・ナンバーを好んで取り上げてきたメルドーが、解散後のポールの曲をカヴァーするのは不思議ではない。さらにこれが本編ラストへの布石だったと、後に知ることになる。初めてビーチ・ボーイズの楽曲をレパートリーにしたのも、当夜のトピックだ。6曲目に演奏したのは、ポールの最新作『キス・オン・ザ・ボトム』からの「マイ・ヴァレンタイン」。ジャズ・ピアニストのカヴァーではおそらく世界初だろう。その選曲理由を終演後、本人に尋ねると、「悲しい物語の歌詞が気に入ったんだよ」と答えてくれた。

2012年07月28日  血筋のいい実力派ピアニストのトリオ公演

2012年07月28日

 ジェラルド・クレイトン・トリオ@丸の内Cotton Club。クレイトン=ハミルトン・ジャズ・オーケストラのジョン・クレ