Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイリー

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2012年08月01日  米国の高校生ビッグバンド

2012年08月01日

 《モントレー・ジャズ・フェスティヴァル・イン・能登》のステージを務めたMJFネクスト・ジェネレーション・ジャズ・オーケストラが、今回唯一の都心での公演となるTokyo TUCに登場。これまでベニー・グリーン、ジョシュア・レッドマン、エリック・マリエンサルらを輩出している若手名門ビッグバンドだ。高校生であることを踏まえれば、やはりレヴェルは高い。もちろん全員が日本では無名の卵たちだったが、フルート専従のエレナ・ピンダーヒューズに光るものを感じた。若手の育成に長年情熱を注いできたディレクターのポール・コントスも特筆されよう。

2012年08月04日  NY在住の邦人フルート奏者

2012年08月04日

今年2月に帰国ツアーを行ったYukari(fl)を、その時と同じ新宿ピットインで観た。海外で活動する邦人女性は数多いが、フルート奏者となると少数派。そんな中で実績を重ねてきたYukariは、もっと日本で知られるべきミュージシャンだと思う。カヴァー曲ではセロニアス・モンクの「エヴィデンス」をテーマにアダプトしたチャーリー・パーカー曲「ドナ・リー」にオリジナリティを感じた。自作曲では前回の来日から半年間に、引越しや盗難など様々な出来事があって書いたという「ターニング・ポイント」が印象的だった。Yukariのリクエストを受けて、ピアノよりもキーボードを主体に弾いた菱山正太が好演。
■Yukari(fl) 菱山正太(p,key) 安田幸司(b) 大村亘(ds)

2012年08月06日  女性フュージョン鍵盤のパイオニア率いるオールスターズ

2012年08月06日

 パトリース・ラッシェン&フレンズ@丸の内Cotton Club。たびたび来日しているラッシェンだが、自身がリーダーのオールスターズは今回が初めてかもしれない。気がつけば70年代から現在までのシーンを生き抜いてきたヴェテラン、というポジションにいるラッシェン。ステージはメンバーのエヴァレット・ハープ(as)、ポール・ジャクソンJr.(g)、ロンダ・スミス(el-b)、レオン“ウンドゥグ”チャンスラー(ds)のレパートリーをフィーチャーしながら進行。後半には代表曲「フォーゲット・ミー・ノット」や、ショルダー・キーボードも繰り出して盛り上げる。ラッシェンとチャンスラーのティンバレス合戦もハイライトに。最後は観客がオール・スタンディングのディスコ状態で、それを目的に来場した年配の音楽ファンも満足げだった。

2012年08月07日  金字塔を打ち立てたミュージカル公演

2012年08月07日

 松本幸四郎主演のミュージカル『ラ・マンチャの男』を帝国劇場で観た。2002年以降は3年ごとに再演しており、幸四郎さんは単独主演ミュージカルの上演回数を更新中。今月19日には通算1200回の節目を迎える。演出家も務める幸四郎さんは、脚本を手直しするのが常で、それがリピーターにとっての見所になっている。ぼくが最初に観たのは、アルドンサ役を鳳蘭が演じた10年以上前で、その後を引き継いだ松たか子は、今回すっかりこの役が板についた印象。男たちとの立ち回りのシーンでは、これまでで最も激しい体当たりの演技で驚かされた。今夜の幸四郎さんは歌声も素晴らしく、最後の場面で歌った「見果てぬ夢」には感涙を禁じえなかった。日本が誇るこのミュージカル、これからもライフワークとして継続されることを願う。

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2012年08月09日  新開発LPの先行試聴会

2012年08月09日

 ユニバーサルミュージック主催の試聴会@小川町「ジャズ・オリンパス」。近年ブルーノートに代表されるオリジナル盤のクオリティを再現するLPの復刻が、ファンから支持を得ている。この流れに呼応するように、大手の同社は「100% Pure LP」と名付けられた商品を開発。その製造に関する説明を交えて、LPレコードの聴き比べが行われた。ローリング・ストーンズ盤では、ミック・ジャガーのヴォーカルが生々しく、バックのタンバリンも明瞭に聴こえた。またビル・エヴァンス『ワルツ・フォー・デビイ』ではスコット・ラファロのベース音の輪郭がくっきりとし、心なしか客席のノイズも臨場感があった。このシリーズは12月に第1弾15タイトルが発売予定だ。

2012年08月11日  ジャンルを横断する鍵盤奏者

2012年08月11日

 クリヤ・マコト“リズマトリックス”@目黒ブルースアレイジャパン。ファンクでポップなクロスオーヴァー・サウンドは、クリヤ(p,key)の幅広い音楽性を反映したものだ。今夜はコモブチ・キイチロウ(el-b)+安井源之新(per)+村上広樹(ds)を基本メンバーとし、曲によってゲストを迎えて進行した。Saigenji(ac-g,vo)との共演では、やはり南米の爽やかな風が吹く。アフリカン・パーカッションが加わると、ステージは一気に賑やかに。上田裕香のパワフルな歌唱も収穫だった。

2012年08月14日  最強ベーシストが新グループで登場

2012年08月14日

六本木「ビルボードライブ東京」でマーカス・ミラー・グループを観た。以下にミュージック・ペンクラブ・ジャパンのHPに寄稿したライヴ・レポートを転載する。
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 昨年のマイルス・デイヴィス追悼作とは共演者を刷新した、若手中心の新作『ルネッサンス』を発表。そのレコーディング・メンバーを率いた6人編成のバンドで、マーカスが六本木の人気店に帰ってきた。これまでのリーダー作における一貫したバンド・コンセプトはそのままに、ステージでの見せ方に工夫を加えていた.点が見逃せない。ソロ・リレーで繋いだ後に、場面転換があってメドレーなのかなと思いきや、またテーマに戻るという曲構成は、ホール・コンサートとは異なる約80分のステージを観客に対して立体的に提示する効果的なアイデアなのだなと感じた。期待通りにチョッパー・ベースがサウンドをリードする中、アコースティック派のショーン・ジョーンズ(tp)とクリス・バワーズ(p,key)がリーダーの意図に沿った演奏によって、新味を表出してくれたのも特筆したい。
■Marcus Miller(el-b,b-cl) Alex Han(sax) Sean Jones(tp) Kris Bowers(p,key) Adam Agati(g) Louis Cato(ds)

2012年08月18日  急成長中の女性サックス奏者が帰国

2012年08月18日

 ハイティーンでアルバム・デビューし、高校卒業後にバークリー音大へ進学。現在、同大に在学中の寺久保エレナが、新宿ピットインに出演した。会場は超満員の盛況。アート・ペッパーの演奏で知られる「ムーヴ」を皮切りに、チャーリー・パーカー、キャノンボール・アダレイ、ジョン・コルトレーンのナンバーを取り上げて、サックス・レジェンドへのシンパシーを表明。セカンド・セットに進むと、ブルキナファソを訪れた時の経験を元に作曲した新曲「ブルキナ」を披露。ビバップとモードを融合させたような作風に、米国生活での成長ぶりを実証した。アンコールではパーカーの「アンソロポロジー」をカヴァー。13歳から共演を続けている大林武司(p)、NYベースで今回が初共演の中村恭士(b)、ブルキナファソに同行したマーク・ホイットフィールドJr.(ds)と、メンバーの好演も特筆したい。

2012年08月25日  恒例の本邦ジャズ祭は今年も盛況

2012年08月25日

 「サマージャズ」@日比谷公会堂。44回目を数える長寿イヴェントは、今年も内容充実。毎年思うのだが、観客は60歳以上と思われる高齢者が多い。これは彼らにとって年中行事であり、リピーターに定着していることを意味する。ジャズ業界にとっては嬉しく有り難いことなのだが、ジャズ専門メディアとは違う世界がここにあるとも毎回感じていて、手放しで喜べない感覚も否めない。それはともかく、ステージは著名ミュージシャンが次々と登場して、お得感の高いイヴェントとなった。高澤綾(tp)+駒野逸美(tb)+纐纈歩美(as)+小林香織(ts)の若手女性4管を要した今田勝グループは、今後の発展を期待させるステージに。森寿男とブルーコーツにゲスト出演した秋元順子(vo)は貫禄の歌唱だった。

2012年08月29日  渡米直前のビッグバンド・ライヴ

2012年08月29日

 バンド・リーダーとして活動を続けてきた宮嶋みぎわとは、昨年のヴァンガード・ジャズ・オーケストラ関係で知り合い、その後、上智大学の後輩だと知った。8月25日の<サマー・ジャズ>楽屋で、渡米の経緯を聞き、応援したいと思った。バンド・リ?ダーおよび作・編曲家としてさらに高いレヴェルを目指すべく、宮嶋がターゲットにしたのはジム・マクニーリー。VJOばかりでなく、メトロポールJOなどヨーロッパのオーケストラで指揮するマクニーリーは、今やたいへんな売れっ子で、弟子を取る余裕はない。そんな状況ながら、宮嶋は関係者を動員したオファーによって、見事に1年間の師事を取り付けた。
 今夜はその直前ライヴをTokyo TUCで観た。初期の楽曲にスポットを当てたということで、個人的には新鮮だった。30代後半での留学は英断に映る。でも今ここでやっておくことが、長い目で見た時のプラスになる、なのだろう。帰国コンサートに期待を寄せたい。

2012年08月30日  偉大なリーダーを偲ぶ節目のステージ

2012年08月30日

 1979年にチャールズ・ミンガスが他界した後、その音楽遺産を継承するために始動したのがミンガス・ダイナスティ。それを拡大・発展する形で93年にアルバム・デビューしたのがミンガス・ビッグバンドだ。今年ミンガスの生誕90年迎えたタイミングで、7年ぶりの来日が実現。前回、2005年の来日時に『Live In Tokyo』を収録した“ブルーノート東京”への再登場である。若手からヴェテランまで、著名ミュージシャンがずらりと揃った14人編成にあって、今回はアレックス・フォスターがMCを務めた。82年のジャコ・パストリアス・ワード・オブ・マウスBBのメンバーだ。個人的な収穫は若手のジェイソン・マーシャル(bs)とヴェテランのアール・マッキンタイヤ(tb,tuba)。メンバーの交代を含めて活動を絶やさぬ限り、ミンガスの遺志は伝えられ続けるだろう。終演後に紅一点のピアニスト、ヘレン・サングと談笑した。

2012年08月31日  アンサンブルの進化と変遷1

2012年08月31日

 東京ブラス・アート・オーケストラ@赤坂B flat。アメリカ在住の渡邉晋が音楽監督と指揮を務める邦人ビッグバンドだ。斯界の歴史をクロノジカルな選曲でたどる趣向で、ファースト・セットはデューク・エリントン、ディジー・ガレスピー、マイルス・デイヴィス、ウェイン・ショーターのナンバーを演奏。セカンドに進むと、マイケル・ブレッカー『テイルズ・フロム・ザ・ハドソン』からの「アフリカン・スカイズ」を取り上げて、現代的なサウンドへの対応力も示した。また日本人としてはジョージ・ラッセル最後の直弟子である作曲家、山口紀子の「霧の交わるところ II」の世界初演も特筆される。

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