Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイリー

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2012年10月01日  NY在住の邦人男性ピアニスト

2012年10月01日

 野瀬栄進というピアニストの名前を知ったのは、2001年のデビュー作『Here Now Hear』を新譜として入手した時だった。以降たびたびリリースするアルバムはチェックしていたのだが、ライヴを観る機会はなかった。本日は渋谷タカギクラヴィア松濤サロンで、初鑑賞。NYでコラボを重ねてきた武石聡(per)とのデュオだ。天井の低い小さなスペースということで、インティメイトなサウンドを身近に感じることができた。逆輸入の形になるが、今後は徐々に会場の規模を大きくしながら、スケール感に見合ったパフォーマンスを期待したい。

2012年10月02日  生誕80周年記念コンサート

2012年10月02日

 フランスを代表するピアニスト/作・編曲家ミシェル・ルグランが、すみだトリフォニーホールで「シンフォニック・スペシャル・ナイト」を行った。トリオによるファースト・セットでは、アート・テイタム、デューク・エリントン、エロール・ガーナー、オスカー・ピーターソン、ジョージ・シアリングら名ピアニストの弾き真似を織り込んで、最後にカウント・ベイシーに落着し、巨匠のサービス精神とジャズ愛が浮き彫りになった。「ウォッチ・ホワット・ハプンズ」「これからの人生」「ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング」等の自作曲を歌って弾く姿からは、9月の<東京JAZZ>で観たバート・バカラック(4歳年長)を想起した。オリジネイターは老境に入ってもなお、特別な存在感を放つ、ということだ。新日本フィルとのセカンド・セットでは、数々の名曲を世に出したルグランの功績が明らかになった。

2012年10月08日  欧州の小内陸国からヴァイブ奏者が初来日

2012年10月08日

 リヒテンシュタイン出身のパスカル・シューマッハが、クァルテットを率いて丸の内Cotton Clubに初登場。ドイツ人ピアニスト&ドラマー、ベルギー人ベーシストとの編成は、両国に囲まれたリヒテンシュタインの地理的環境と歴史的交流を踏まえれば、自然な成り立ちだと思える。プログラムは1曲のポップス・カヴァーを除いて、全曲自作。ヴィブラフォン奏者としてはデヴィッド・フリードマン、デイヴ・サミュエルズから影響を受けている、との事前情報通りで、70年代にデビューしたダブル・イメージを想起。シューマッハの最新作と同じ独enjaつながりとも言える。自作曲は物語性の強いサウンドだった。今回、同店を訪れたのはピアノのフランツ・ヴォン・ショッシーから招待を受けたから。終演後に本人に話しを聞いたところ、ぼくが毎年海外のフェスティヴァルで会っているAll About Jazzのジョン・ケルマンから紹介されたと知って納得。欧米日のジャズ・トライアングルが奏功した。

2012年10月09日  取材とライヴで大収穫

2012年10月09日

セブンオークス・パブリシングが編集するマガジンハウス発行の隔月誌『YUCARI』。その連載企画「私の日本遺産」のため、ギタリスト村治佳織さんにインタヴューした。仕事抜きにCDを購入して楽しんできた以前からのファンである自分にとって、思いがけない形での初対面となった。生い立ちからこれまでのキャリア、そして影響を受けた日本人女性について、お話をうかがった。今やクラシック界を代表するギタリストは、気さくで飾らない人柄。人間として、女性としても素晴らしく、魅了された。詳しくは現在発売中の同誌Vol.05を参照してほしい。
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http://magazineworld.jp/books/all/?gosu=8798
 その後、渋谷へ移動してJZ Bratへ。バート・シーガー『オープン・ブック』リリース・パーティー。米ボストンを拠点に活動するヴェテラン・ピアニストを、デビュー時から長年にわたってウォッチしていて、最新作のライナーノーツを執筆した関係で迎えたステージだ。ファースト・セットはシーガー・トリオが「エアー」「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」等を演奏。セカンド・セットでは、まず仲野麻紀&ヤン・ピタールのKy.が演奏し、続いて作家・夢枕獏の朗読+Ky.+シーガー・トリオという初のコラボレーションに進んだ。予測不能のステージは、破綻がないどころか、調和のとれた最上のパフォーマンスを生み出したのだった。

2012年10月10日  若き名優の再挑戦

2012年10月10日

 松たか子主演の舞台「ジェーン・エア」を日生劇場で観た。3年前の日本版初演以来となる再演。シャーロット・ブロンテ原作はミュージカルなのでテンポが良く、2時間40分、出ずっぱりながら完璧な演技に感動した。たかちゃんの舞台は単独男性客が多いのだが、今日は年配の女性グループが多かった。これまでの鑑賞経験でもそうだったが、たかちゃんを好むミュージカル・ファンの裾野が広いことを改めて感じた。

2012年10月14日  北欧在住の邦人ピアニストが帰国

2012年10月14日

 平林牧子@ピットイン。米国留学中の出会いがきっかけで、デンマークに移住。そのままプロ活動を続けて現在に至っている女性ピアニストだ。前回のベース+ドラムスとのトリオとはメンバーを変えて、今回はトランペット(フリューゲルホーン)+アコーディオンの変則トリオで、再び新宿の老舗に登場した。メンバーは2010年録音作『ビノキュラー』(Stunt)と同じフレミング・アゲルスコフ(tp,flh)+フランチェスコ・カリ(accordion)。「双眼鏡」を意味する平林とアゲルスコフのデュオ・チームに、カリが加わったのがユニットの成り立ちである。同様の編成としてはヤン・ラングレン+パオロ・フレス+リシャール・ガリアーノが浮かぶが、こちらはまた別の音楽性を感じさせる。それが何に由来するのかと言えば、やはり“スカンジナビア”なのだろう、と感じた一夜だった。

2012年10月17日 ポップスのジャズ・カヴァー・トリオ

2012年10月17日

 スウェーデン・ポップス史上、最も世界的な成功を収めたABBAのジャズ・カヴァー集『ABBA JAZZ』をリリースしたばかりのトリオが“ビルボ?ドライブ東京”に出演。同国のアンデッシュ・ヴィーク(p)、スヴァンテ・ヘンリソン(b)と、フュージョン・ドラムの第一人者であるスティーヴ・ガッドの合体は、一見企画物のイメージが強い。しかし同作のガッドがお仕事モードではなく、本気度が伝わってきたこともあって、ライヴにも期待が高まっていた。そしてガッドの好演は期待を裏切らなかった。「ダンシング・クイーン」ではヴィークが故リチャード・ティーを想起させるプレイで、ガッドとの抜群の相性をアピール。管弦楽団の首席コントラバス奏者でもあるヘンリソンのチェロ演奏曲では、日本では無名ながら実力者ぶりを明らかに。ポップス界でも経験豊富なガッドの、楽しげな姿が印象的だった。

2012年10月18日  2組の米国人ユニット

2012年10月18日

 ザ・クッカーズ@Cotton Club。ビリー・ハーパー(ts)を中心とした4管セプテットが、同店に初出演。オープニング曲ではフロントが順にソロを取り、ソロ終わり近くで他の3管が合奏リフでバックアップするアレンジでリレー。久々に観たジョージ・ケイブルス(p)はマッコイ・タイナーばりの速弾で、バンド・コンセプトに貢献。MCはデヴィッド・ワイス(tp)が務めた。最新作『Believe』は顔ぶれの割りに、出来は今ひとつだったが、今夜はそれを挽回するステージだった。●エディ・ヘンダーソン(tp)、クレイグ・ハンディ(as)、セシル・マクビー(b)、ヴィクター・ルイス(ds)。
 急いで新宿へ移動し、ボブ・ロックウェル@ピットイン。以下に「ジャズジャパン」12月掲載のライヴ・レポートを転載する。
■1945年アメリカ生まれのボブ・ロックウェルは、83年にデンマークへ移住し、それ以降に本格的なソロ・キャリアを築いた。リーダー作がヨーロッパのレーベルから多数リリースされていることもあって、現在では北欧のサックス奏者のイメージが定着している。2006年に現地人とのカルテットで来日したロックウェルは今回、邦人3人とカルテットを編成。うちベースの荒巻とは2004年に横浜で共演したステージが、ライブ・アルバムになっている間柄だ。男性的で骨太な音色によってテナーをテナーらしく鳴らすのが持ち味であり、それは終盤にドラムスと熱い応酬を繰り広げたオープニングの自作曲<トリオロック?>から、早くも明らかになった。セロニアス・モンク曲を好んで取り上げてきたロックウェルが、今夜はモンクらしいユーモラスでよじれたメロディを表現するのに最もふさわしい楽器を駆使して、<グリーン?>を吹奏。フランスの映画監督・俳優のジャック・タチに捧げた<ア・リトル・ビット?>では、途中テンポアップする場面転換を導入し、最後はピタリと着地してみせる。セカンド・セットでは意外な選曲を聴いた。作曲者ビル・フリゼールのバージョンでは昭和歌謡と重なる曲調だった<ストレンジ?>を、リズムをアレンジしてワイルドにブロウ。自信を持って自身のレパートリーへと組み込んだ。「これはボサノバではない」と前置きした上で始めたアントニオ・カルロス・ジョビン曲<太陽の道>は、曲調はサンバで、やはりロックウェル流を崩さないプレイ。ジャズ・テナーのボサ=スタン・ゲッツのイメージとは違う、ということをアピールしたかったのかもしれない。各セットの最後は84年のリーダー作に収録のブルース<ソニーズ?>をテーマ曲に、メンバーを紹介。「初共演によってお互いを発見することがとても嬉しい」と、好演で応えてくれた3人のサイドメンに対する感謝の気持ちを表した。          
■Setlist:1st ?トリオロック・チュニジア・ノマド ?ソー・ナイス ?グリーン・チムニーズ ?デイ・ドリーム ?ア・リトル・ビット・オブ・ノワール?テーマ(ソニーズ・バック)2nd ?マーマデューク ?ストレンジ・ミーティング ?ラブ・レター ?太陽の道?テーマ(ソニーズ・バック) ?オブリビオン
■Personnel ボブ・ロックウェル(ts)、小野孝司(p)、荒巻茂生(b)、力武誠(ds)

2012年10月20日  知人のパーティーに出席

2012年10月20日

 「中山康樹さんの還暦を祝う会」が四谷「いーぐる」で開催された。会場にはジャズ関係者多数が出席。80年代に「スイングジャーナル」の編集長を務め、その後はマイルス・デイヴィス評論の第一人者としてご活躍の中山さんとは、ぼくがジャズ仕事を始めてからずっとすれ違いで、2000年代に入ってようやく知り合った。それからは色々な場所でご一緒する機会が続いている。日中に始まった宴は、長丁場に。会場で最新エッセイ「アイタタタのカンレキ・イヤー」を受け取った。

2012年10月23日  イタリアの伊達男が再来日

2012年10月23日

 マリオ・ビオンデイ@ブルーノート東京。前回の同店出演はハイ・ファイヴとの共演だったが、今回は事前にアナウンスされたメンバーにギターが加わった3管オクテットを率いての再登場となった。クラブ・ジャズ方面でブレイクした時から、若手男性ヴォーカリストで好きなタイプだと思っていて、今回の来日に合わせて日本のショップでは取り扱っていない『Yes You Live』と最新作『Due』をイタリア・アマゾンから取り寄せて、特集番組を組んだほど。ステージでは魅惑の低音を響かせて、女性客をノックアウトした。ラストは代表曲「This Is What You Are」で締めくくった。

2012年10月24日  新作発売記念コンサート

2012年10月24日

 井上ゆかり@代々木上原ムジカーザ。初のソロ・ピアノ新作『SAKURA』の発売日に開催された記念コンサートだ。トリオで自己の世界を追求してきた井上が、同作ではスタンダード・ナンバー、ジャズ・ナンバーのみならず、Jポップやクラシック曲にも挑戦。ファースト・セットはクラシカル・クロスオーバーなテイストが印象的で、セカンドに進むとベーゼンドルファーからパワフルな即興演奏も飛び出した。バースデー・ライブということで嬉しいワイン・サービスも。

2012年10月25日  プロモ来日したニューヨーカー

2012年10月25日

 オランダで長く活動し、現在はNYに在住のピアニスト、アミナ・フィガロヴァとフルート奏者でマネージャー兼務のバート・プラトー夫妻が、プロモーションのため初来日。オランダ大使館から紹介を受けたとのことで連絡があり、新宿DUGで面談した。今年リリースした新作『Twelve』は通算12枚目で、2012年の意味もアルバム名に重ねたとのこと。日本ではまだ無名だが実績と実力は申し分なく、今後の展開にも力を貸したいと思った。途中、オーナーの中平氏も合流して、ジャズメン談義に花が咲いた

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2012年10月29日  女性トランペッターのバースデイ・ライヴ

2012年10月29日

 今春全国リリースしたミニ・アルバム『パターンズ』が好評な高澤綾が、レギュラー・クインテットを率いてお茶の水NARUに登場。この老舗ジャズ・クラブにリーダーで出演するのが目標だった高澤が、誕生日にそれを実現させた。最終回になるサード・セットの直前に入店すると、店内は依然満員の盛況。ネクタイ族のファンは彼女にとっても頼もしい存在だろう。西口明宏(ts)、石田衛(p)ら各方面で活躍中の若手実力派を従えて、堂々のステージを披露。来年は色々な意味で飛躍の年になる予感がした。

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