Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイリー

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邦人女性歌手の発売記念ライヴ

2010年07月06日

キャリア的にはまだ若手と言っていい上西千波を、渋谷「JZ Brat」で観た。今夜は新作『ア・ブーケ・オブ・ローゼス』のリリース記念公演だ。前作でロニー・プラキシコのバックアップを得て話題を呼んだ上西は今回、ビッグ・バンド・リーダーでピアニストの守屋純子の全面協力を得て新作を完成させた。守屋BBのメンバーでもある3ホーンズが再登板したステージは、それだけで豪華。奥村晶(tp)、近藤和彦(as)、小池修(ts)のアンサンブル&ソロは聴き応えたっぷりだ。リー・モーガンの「ザ・サイドワインダー」、オスカー・ピーターソンの代表レパートリー「自由への讃歌」、チック・コリア(フローラ・プリム歌唱)の「ホワット・ゲーム・シャル・ウィ・プレイ・トゥデイ」と、邦人歌手はあまり取り上げないナンバーにも果敢に挑んでいるのが上西の個性。アルバム未収録曲で阿川泰子歌唱で有名な「スキン・ドゥ・レ・レ」を含め、観客を喜ばせた。

15年ぶりに来日した超個性派管楽器奏者

2010年07月08日

 1963?64年に名門ブルーノートに3枚のリーダー作を残したジョージ・ブレイスは、サックス奏者の呼称に納まりきらないユニークな個性を持つプレイヤーだ。70歳にして実に15年ぶりとなる2度目の来日公演を、新宿「ピットイン」で観た。今回の招聘に尽力したドラマー小林陽一を含む邦人3名とのクァルテットを編成した。そのセカンド・セットはブレイスがあくまで主役として進行。「恋に恋して」では2本のソプラノサックスを合体させた愛器を吹き、途中アルトに持ち替えて、誰とも違う世界を表出した。「ニカの夢」「バルバドス」「チェロキー」と、選曲だけを見るとオーソドックスだが、サウンドは個性的なブレイスらしさが全開のステージだった。

人気ピアニストがクラシックの殿堂に登場

2010年07月10日

 ジャズ/フュージョン・ピアニストの塩谷哲を、上野の東京文化会館小ホールで観た。ドイツとアフリカを巡演してきた塩谷が、クラシック音楽の名ホールにソロで出演するのは、かなりハードルが高い企画だ。それを承知の上で挑んだことに、何か脱皮したい意図があったのかもしれない。会場の性格を踏まえながら、いつもの脱線トークも盛り込みつつ、多くの女性ファンを楽しませてくれた。クラシック、ジャズ、ラテンのジャンルを超えて、このステージに至った塩谷のキャリアが重なって、感慨深い思いになった。

新作発売直前のクラブ・ライヴ

2010年07月12日

 EQ@南青山「ボディ&ソウル」。小池修(ts)+青柳誠(p)+納浩一(b)+大坂昌彦(ds)からなるクァルテットは、それぞれがジャンルを超えたファースト・コールであり、2003年のアルバム・デビュー以来、多忙な中でスケジュールを調整しながら活動を続けてきた。今夜は3ヶ月ぶりとなった同店への出演だ。益々逞しい風貌の小池が、強力なブロウでバンドを牽引。年季の入ったと思われるファンが客席を占め、その期待に応えるステージを展開した。EQは8月に3年ぶりの2枚組新作『ナウ&ゼン』をリリースする。

1970年代のリヴァイヴァル・プロジェクト

2010年07月13日

 ハービー・ハンコック73年の『ヘッド・ハンターズ』は、音楽的&商業的に成功を収めたブラック・ファンクの名作として、歴史に刻まれている。現在はフォープレイのメンバーなどフュージョン界のトップ・ドラマーにして、同作の参加メンバーであるハーヴィー・メイソンが、新プロジェクト“カメレオン・バンド”を発足。ステージは同作を助演したビル・サマーズのボトル・プレイでスタートした。詳しいレポートは8月28日発刊の『ジャズジャパン』創刊号を見てほしい。

NYで研鑽した邦人女性ヴォーカリスト

2010年07月16日

西山瞳&東かおる@六本木「Soft Wind」。東は西山を通じて共演関係にある大阪出身者だとは聞いていて、今夜はライヴ初体験だ。即興的な歌唱が得意で、ウエイン・ショーターやジョン・コルトレーンの楽曲に自作の歌詞をつけて歌うスタイルがユニークな東。2008年作『フットプリンツ・イン・ニューヨーク』がヴォーカル・ファンの間で話題を呼んだ個性は、西山との気心の知れた関係によって、より共感できる形で披露された。「オン・トラヴェル」「バロック」が印象的だった。今後、東京への進出を加速するだろう。

ニューオリンズの実力派トランペッター

2010年07月22日

ニコラス・ペイトン@丸の内「Cotton Club」。ルイ・アームストロングへのトリビュート作や、ドク・チータムとの共演作を通じて、伝統への共感が世界的に認知されていたペイトンが来日。スーツを着こなした真摯なマナーは、ヴォーカル曲でもそのまま。詳細は8月28日発売の「ジャズジャパン」創刊号を参照してほしい。

北欧の女性歌手が初来日

2010年07月26日

 リグモール・グスタフソン@丸の内「Cotton Club」。近年はドイツのトップ・レーベルACTからリーダー作をリリースし、欧州では存在感を高めてきた。今回の公演では同国のカール・オルジェ(p)とNYを拠点にする井上智(g)がサポートする、日本仕様となった。約74分のステージで明らかになったのは、グスタフソンが多彩なレパートリーで自分の世界を築いていること。オープニングが「降っても晴れても」「ノー・モア・ブルース」で、バート・バカラック・メドレーの「雨に濡れても」「アルフィー」「恋よさようなら」をはさんで、「ディア・オールド・ストックホルム」「メイキン・ウーピー」を選曲。アンコールのジャック・ブレル曲「行かないで」ではファルセットの巧みさを表現した。

話題必至のアフリカの音楽映画

2010年07月27日

 『ベンダ・ビリリ!』の試写会を観る。経済的に貧困にあえぐコンゴ、それも身体的に不自由な二重苦を背負った人々が音楽を通じて自分自身をアピールするドキュメンタリー映画だ。その逞しい生命力は観る者多くの共感を喚起するだろう。終演後にフランス人の制作者が同国の事情も含めて、リアルな情報を提供してくれたのが有益だった。10月には来日公演も決定している。

35年前の名盤リユニオン・プロジェクト

2010年07月30日

 マリーナ・ショウ@ビルボードライブ東京。1975年リリースの代表作『フー・イズ・ディス・ビッチ・エニウェイ』のレコーディング・メンバーが再結集し、同作収録曲を中心に構成するプロジェクトだ。昨年も同店に出演しており、会場にはリピーターと思しきファンが多数詰め掛けた。ハーヴィー・メイソンとの掛け合い、デヴィッド・T・ウォーカーの燻し銀のギターなど、ヴェテラン・ミュージシャンの妙技も聴きものだった。詳しいライヴ・リポートは8月28日発刊の『ジャズジャパン』を参照してほしい。 

神社の境内で行われたジャズ・ライヴ

2010年07月31日

 港区三田の御田八幡神社で4日間にわたって開催された定例の大祭。その会期中に野外ライヴが行われた。宮野寛子(p)トリオにゲストでヴォーカリストのnoonが加わるプログラムだ。普段は伝統芸能が披露される舞台に、スタインウェイのグランド・ピアノを入れた本格的なセッティング。地元の親子連れが数多く来場した会場は、通例のジャズ・コンサートとは異なる雰囲気を醸し出していた。序盤は「マイ・フーリッシュ・ハート」「マイ・フェイヴァリット・シングス」といったスタンダード・ナンバーで、一般リスナーにアピール。自作曲「ア・ソング・フォー・ユキ」「アン・インプレッション・オブ・ブラジル」も織り混ぜたステージに、観客が次第に引き込まれていく様子だ。noonが登場するとさらに華やかなムードに。「素顔のままで」「クロース・トゥ・ユー」「ユー・アー・ザ・サンシャイン・オブ・マイ・ライフ」等のポップスを、ジャジーなバック・サウンドと共に歌い上げた。終演後にメンバーと深夜まで打ち上げを楽しんだ。

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