Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイリー

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NYの若手ヴィブラフォン奏者が自己のバンドを率いて来日

2010年06月02日

 昨年『ウルバヌス』を大手コンコードからリリースしたステフォン・ハリスが、自己のバンド“ブラックアウト”を率いて丸の内「Cotton Club」に出演。レコーディング・メンバーを中心としたステージは、最新作の世界を体感できる期待を抱かせた。ハリスはヴィブラフォンとマリンバをセットして、踊りながらプレイ。宇宙志向のサウンド作りを興味深く聴いた。またアルトサックスのケイシー・ベンジャミンが、ヴォコーダーを使用した場面は、ハービー・ハンコックの70年代のサウンドとも繋がり、ハリスの音楽性を物語った。日本語MCにも熱心で、親日家の一面を披露。アンコールで「さくら」を織り交ぜた演奏にも、ハリスのサーヴィス精神が感じられた。

人気ギタリストのオールスター・クァルテット

2010年06月03日

 マイク・スターン@ブルーノート東京。毎年の来日が定例になっているスターンは、今回オールスターズを編成した。メンバーはランディ・ブレッカー(tp)+リチャード・ボナ(b)+デイヴ・ウェックル(ds)。総花的なプログラムになるのかな、との予想はステージが進む中で修正させられた。バンドの中心はあくまでリーダーのスターン。ボナはむしろ後ろの壁側に張り付いていたし、フロントのブレッカーもリーダーよりも目立とうとしていなかった。これはスターンの指示にメンバーが従ったとも考えられるが、実際はそうではなかったのでは?、というのがぼくの見立て。永遠の若きギタリストの魅力を体感した。

世界最高峰のアコーディオン奏者が来日

2010年06月07日

 今年に入ってからもウイントン・マルサリスとの共演作やバッハ・プロジェクトをリリース。精力的な活動を続けるリシャール・ガリアーノが「ブルーノート東京」に登場した。今回は“フレンチ・タッチ・トリオ”のステージだ。これまでミシェル・ポルタルとのデュオ、寺井尚子が急遽参加した<東京JAZZ>などでガリアーノを観ているが、このトリオはいずれとも異なる編成ということもあって、楽しみにしていた。何度も体験していてわかっているのに、改めて音楽家としての素晴らしさに参ってしまった。アコーディオンはボタン式と鍵盤式に大別され、ガリアーノは奏法が難しいと言われる前者のマエストロ。その神業的プレイは本当に凄い。さらにボタン式ピアニカのアコーディナも披露してくれたのも収穫だった。ジャン・マリー・エカイ(g)+ジャン・フィリップ・ヴィレ(b)とのトリオの一体感を含めて、巨匠のテクニックに酔った一夜。

天才ギタリストの執念を体感

2010年06月11日

 新春にリリースされたパット・メセニーの『オーケストリオン』は、すべての楽器を同期させたPMGのワンマン・プレイと言うべき音作りが、世界中の人々を驚かせた。それと同時にファンの間で賛否両論が巻き起こったのも事実だ。今夜は「すみだトリフォニーホール」2デイズの初日。同作の世界がライヴでどのように再現されるのか、に注目していた。オープニングはギター独奏で代表曲をメドレーでプレイ。コンパクトに自身の歴史を聴かせるという意図なのだろうか。そしてステージ後方に覆われていた布が取り払われると、目にも鮮やかな楽器群が明らかになって、観客はヤンヤの歓声。さらに演奏は続き、今夜のステージが休憩なしだとわかった。開演から2時間が過ぎて、パットがオーケストリオン・システムの解説をし始める。もうこの時点でパットと我々客席のファンは、同じレベルでの音楽オタクの感覚を共有していた。アンコールは「ストレンジャー・イン・タウン」。アルバムに否定的な意見を述べたリスナーも、このパフォーマンスを観れば前言撤回となるに違いない。音楽創作に前人未到の執念を燃やすパットの姿勢に共感した、感動的なステージだった。

名フュージョン・サックス奏者のトリビュート・バンド

2010年06月12日

 グローヴァー・ワシントンJr.がどれほど好きか、に関しては99年に急逝した時、「スイングジャーナル」に追悼記事を書いたことでご理解いただければ幸いだ。それにしても56歳という若さでの他界は衝撃的だった。80年の『ワインライト』でフュージョン・サックスのトップを極めたグローヴァーは、その洗練されたサックス・スタイルによって後続の多くのプレイヤーに影響を与え続けている。先頃未発表ライヴ作『ラスト・ライヴ』がリリースされたことでも話題を集めるグローヴァーのトリビュート・バンドを、「ブルーノート東京」で観た。音楽監督のジェイソン・マイルスは、グローヴァーはもちろん、マイルス・デイヴィス、デヴィッド・サンボーンらのアルバム制作に関わってきた鍵盤奏者。他の共演者ではすでに単独の来日公演で“グローヴァー・ラヴ”を表明したエリック・ダリウス(sax)が、このプロジェクトに起用されたことを聴衆に納得させるプレイで嬉しくなる。サックス抜きの「イースト・リヴァー・ドライヴ」では、デヴィッド・サンボーンGのニック・モロック(g)が主役となって、隠れた魅力を披露。アンコールの「ミスター・マジック」まで、『ワインライト』参加メンバーでもあるラルフ・マクドナルド(per)の存在感たっぷりなプレイにも魅了された。

最高峰の実力派ヴォーカリストが六本木に登場

2010年06月13日

 カサンドラ・ウィルソン@ビルボードライブ東京。近年ジャズ・ヴォーカリストとしての評価を強固にするカサンドラが、六本木に初登場。以下にミュージック・ペンクラブジャパンのウエブサイトに寄稿したライヴ・レポートを転載する。
 2008年度グラミー賞で『ラヴァリー』がベスト・ジャズ・ヴォーカル賞に輝き、黒人女性歌手の最高峰であることを改めて示したカサンドラ・ウィルソン。約2年ぶりの来日公演は、初登場となる六本木の新名所で行われた。定番となっているギター、パーカッションを含む5人編成のバンドがまず登場して、アフロ・サウンドを奏でながらステージを暖める。1曲目の途中でカサンドラが加わると、たちまち独自の世界がくっきり。扇子を動かしながら歌う姿は貫禄たっぷりで、まさに女王の名に相応しい。『ニュー・ムーン・ドーター』の日本盤ボーナス・トラックで、「私にとって特別な曲」と紹介した「ムーン・リヴァー」は、近年力を入れるスタンダードの中でも代表曲だと再認識。バンド・メンバーでは初参加のドラマー、ハーリン・ライリーのプレイが光った。

MJを敬愛するオランダ人歌手

2010年06月14日

 2枚のバート・バカラック作品集によって、日本でも人気上昇中のヴォーカリスト、トレインチャが来日した。当初発表されたスケジュールが、アイスランドの火山噴火によって延期され、ようやく実現したというわけだ。先月国内盤でもリリースされたマイケル・ジャクソン・ソングブック『ネヴァー・キャン・セイ・グッドバイ』の世界を披露するステージを、丸の内「Cotton Club」で観た。メンバーは2枚組デュオ・ライヴのパートナーでもあるギターのレオナルド・アミュエドと、男1+女2のバック・ヴォーカル。マイケルの逝去からちょうど1年のタイミングで、偉大な“キング・オブ・ポップ”への真摯な想いを歌声で聴かせてくれた。

スウェーデンからやってきたSSW

2010年06月19日

 ヨハン・クリスター・シュッツ with TOYONO@青山プラッサオンゼ。すでに来日公演の実績があるストックホルム在住の若手ヴォーカル&ギタリストが、本邦ブラジル音楽界の第一人者と共演するステージを観た。演奏が進むにつれてわかったのは、シュッツがボサやサンバに特化しているわけではなく、ポップなナンバーも自作するシンガー&ソングライターだということ。本人いわく母国のブラジル音楽シーンは小さいものなので、海外に積極的に出ていくことが重要なのだろう。パーカッションの岡部洋一も加わった日北欧のコラボ・プロジェクトだった。

フィンランディア2010

2010年06月21日

 アンサンブル・ノマド定期演奏会「フィンランディア2010」を東京オペラシティ・リサイタルホールで観た。97年の結成以来、現代音楽の作品を手がけてきたノマドが今回テーマに掲げたのがフィンランド。ステージは楽曲によってメンバーが出入りし、ゲストも迎えた編成で進行した。この日は出演者の森川栄子(sop)から案内を受けたもの。5月のドイツ取材で知り合ったドイツ人映像作家と森川さんが古い友人だという縁で、今日につながった。93年から同国で学び、近年まで欧州を拠点に活動した第一人者の、豊かな声の響きを体感した。

オランダのトップ・ギタリストの新展開

2010年06月24日

 セロニアス・モンク・コンペで優勝。アルバム・デビュー時から日本でも人気を得たジェシ・ヴァン・ルーラーが、4月リリースの新作『チェンバー・トーンズ』のレコーディング・メンバーで、丸の内「Cotton Club」に出演した。ジェシは過去にトリオ作をリリースしているが、ギター+クラリネット+ベースの編成は今回が初めて。アルバム未収録曲「イット・クッド・ハプン・トゥ・ユー」や、トリオの緊張感が伝わってくるジェシの古いレパートリー「サークルズ」等を演奏。誠実な人柄で新境地を示した。

フュージョン界のトップ鍵盤奏者が来日

2010年06月28日

 デヴィッド・ベノワが今年も来日。丸の内「Cotton Club」公演を観た。今回は新作『アースグロウ』のリリース直後というナイスなタイミングだ。レギュラー・トリオに同作参加メンバーのジェフ・カシワ(as,EWI)がスペシャル・ゲストで加わった4人編成。ラス・フリーマンとの双頭名義作を制作しており、カシワとはリッピントンズつながりでの来日となったようだ。最新作と前作『ヒーローズ』からのレパートリーを中心にしたプログラム。「トルコ風ブルー・ロンド」ではカシワがポール・デスモンド風のプレイで新味を表現したり、トリオでの「ワルツ・フォー・デビイ」ではベノワがビル・エヴァンスを徹底的に研究した跡が確認できたのが収穫となった。個人的にはデイヴ・グルーシンの「マウンテン・ダンス」も嬉しい選曲だった。

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