Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイリー

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5月前半のまとめ

2011年05月18日

 3日(火)。ノルウェーのピアニスト、ヘルゲ・リエンが新妻と共にプライヴェートで来日。2月のオスロ以来の再会だ。ディスクユニオン山本隆氏のご厚意で、午後2:00からのホームパーティとなった。最初の1時間はヘルゲに単独インタヴュー。オフィシャルな形で話を聞くことはなかったので、収穫大だった。その後は5人で楽しく痛飲。
 5日(木)はカサンドラ・ウィルソン@ビルボードライブ東京。昨年、新作発表前に同店で観ており、今回はグレゴア・マレイ(hmca)が加わったバンド・サウンドが注目だった。ドラムスのジョナサン・ブレイクからアルバム・リリースに関する相談を受けていて、終演後に楽屋でミート&グリートができた。ブレイクの初リーダー作は9月リリースの予定。
 11日(水)はPYRAMID@ビルボードライブ東京。再始動したJフュージョンのヴェテランによるユニットのレコ発ライヴ。余裕のステージを堪能した。
 13日(金)はブライアン・ブレイド&ザ・フェロウシップ・バンド@Cotton Club。日本では2度目の鑑賞。ブレイドがこのバンドにいかにエネルギーを傾注しているかは、ドラム・ソロの場面にやって来た。あまりに強力な打撃のため、ブレイドが椅子から床に落ちて尻餅をついてしまったのだ。しかしそこはプロ。何事もなかったように演奏を続けたのが見事だった。
15日(日)は宮野寛子@ブルースアレイ・ジャパン。レギュラー・メンバーの鳥越啓介(b)+初共演のセバスティアン・カプテイン(b)+石川智(per)という、今回のためのユニットだ。宮野はオリジナル曲を中心に、真摯なピアノ演奏と、笑いを誘うMCのギャップが面白い。DIMENSIONの松崎孝司(g)がゲストに加わると、宮野の選曲によるニール・ラーセンの「サドゥン・サンバ」を披露。アコースティック・ジャズのイメージを持っていたカプテインが、フュージョン的なセットでもイケる実力者であることを発見したのも収穫だった。
18日(水)はクリヤ・マコト@ブルースアレイ・ジャパン。今年で日本デビュー20周年を迎え、その記念作『アート・フォー・ライフ』のレコ発ライヴである。レコーディング・トリオのTOKYO FREEDOM SOULに、ゲストが加わる形で進行。上原ひろみとの共演でジャズ・ファンにも認知されている熊谷和徳(tap)が、クリヤとの長年の友情をステージで示すと、フライド・プライドのSHIHO(vo)がクリヤとのデュオで名曲「ラッシュ・ライフ」を情熱的に歌い上げた。

渋谷で取材とライヴ

2011年05月23日

 デンマークの若手女性ヴォーカリスト、シーネ・エイがプロモーションのために来日。昨年末に輸入盤が入荷している最新作『ドント・ビー・ソー・ブルー』の国内盤が、6月下旬にリリースされることが決まったのだ。ぼくはすでに同作のライナーノーツを書き、歌詞の日本語対訳にも関わっているので、初対面のような気がしなかった。こちらの質問に対して、隠すことなく率直に語ってくれたのも好感度大だった。
 夜はアキコ・グレース@JZ Brat。2001年にアルバム・デビューしてから、早いもので10周年となる。昨年末に始動したトリオ・コレクティヴの、2度目の鑑賞。鳥越啓介(b)+岩瀬立飛(ds)とのユニットは、前回に比べて飛躍的な成長を印象付けた。詳しくは6月24日発売の「ジャズジャパン」7月号のライヴ・レヴューを参照してほしい。

南青山から原宿へと移動取材

2011年05月24日

 昨日インタヴューしたシーネ・エイが、午後に関係者向けのプロモ・イヴェントを南青山「ボディ&ソウル」で行った。若井優也(p)ら邦人トリオをバックに歌ったシーネは、単なるスカンジナビアン・ビューティーではなく、王道ジャズ・ヴォーカルのスキルをしっかりと身につけた実力者であることを明らかにした。日本でのブレイクも間違いなし、と聴いた。
 午後7:30からは「美女JAZZ」@原宿ラドンナ。先日2時間のTV番組が放送され、大きな反響を呼んだプロジェクトのライヴ・ヴァージョンだ。五十嵐はるみ(vo)を中心としたオール女性のユニットは、初共演同士のメンバーもいて新鮮な組み合わせ。宮野寛子(p)+若林美佐(b)+川口弥夏(ds)のトリオによる「マイ・フェイヴァリット・シングス」でファースト・セットの幕が開くと、牧山純子(vln)が加わった「枯葉」、小林香織(ts)が加わった「アンソロポロジー?ハウ・ハイ・ザ・ムーン」と、インスト3曲を披露。場内が十分に暖まったところで五十嵐が登場し、「ドント・ゲット・アラウンド・マッチ・エニィモア」を歌って、トーク・コーナーへ。TV番組では声優の山寺宏一が司会を務めて、メンバーの本音を聞きだそうとしていたが、今夜は長女格の五十嵐を中心に女子会的なムードを醸し出した。セカンド・セットで特筆すべきが小林だ。クインテットによる「ウェイヴ」でフルートでも魅力を光らせると、続くワン・ホーン・クァルテットの「アルフィー」では「美女JAZZ」という看板とは関係ないとばかり、サックス奏者=小林の矜持を強烈にアピール。終盤にリズムを変えたアレンジも秀逸だった。約100席の同店は満席で、入店を断った来場者もいたほどの人気ぶり。今後どのように発展するか注視したいプロジェクトである。

現代最高のピアニスト、第1夜

2011年05月28日

 キース・ジャレット「ソロ 2011」を渋谷オーチャードホールで観た。近年は70年代のような長時間演奏ではなく、短い即興が主流になっており、ファースト・セットは全7曲と過去最多。足踏みをパーカッション的に利用した抽象的なプレイで、いきなり新局面を打ち出した。ファンにはお馴染みの「美旋律」「ゴスペル」「祈り」の曲もあったが、今夜のキースはかつてないほど冗舌だったのが驚き。「Very funny applause.」「One moment」。キースは数多くの来日公演を重ねてきたにもかかわらず、日本語を覚える気がほとんどないことも明らかに。アンコールは「ドント・エヴァー・リーヴ・ミー」「いつか王子様が」ほかだった。

現在最高のピアニスト、第2夜

2011年05月29日

 キース・ジャレット「ソロ 2011」@渋谷オーチャードホール。今夜のファースト・セットは、両手でピアノの中を打楽器に見立てて叩く内部演奏から始まった。昨夜同様、短い即興が続く。8曲目が終わって9曲目を演奏しようとするも思いとどまった。「以上でファースト・セット」。今回の来日はわずか2日間の連続公演であり、過去にないほどファンとのコミュニケーションをとっていた。ライヴ・レコーディング前提のステージだったことを含めて、キースには何か期するところがあったのかもしれない。アンコールの「虹の彼方に」は速いパッセージも繰り出して、ぼくが知るキースの同曲では最高の名演となったことを特筆したい。

ブラジル系シンガーが渋谷のメッカに初出演

2011年05月30日

 昨年12月に『アクアレーラ』をリリースしたTOYONOが、渋谷「JZ Brat」で記念ライヴを行った。レコーディング・メンバーが揃ったステージは、ポルトガル語歌唱のブラジリアン・サウンドを主体としたシンガーとしては、本邦最高の実力をアピールする格好の場となった。同作ではプロデューサー、ギタリスト、楽曲提供者として最大の貢献をし、ライヴでも欠かせないパートナーである竹中俊二との軽妙なトークも楽しい。フランス語朗読で作品に参加した加藤紀子は、変わらぬフォトジェニックなルックス共々華やか空気をもたらした。音楽的な収穫はアルバムには参加していない今夜のゲストのNAOTO。一枚看板のヴァイオリン奏者が増えている日本の音楽シーンにあって、初めて生鑑賞した彼のスキルはなかなかのものと聴いた。ステージ終盤にはTOYONOのライヴでお馴染みのサウンド・ウエイヴが現出。その要となった岡部洋一(per)の活躍を特記したい。

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