Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイリー

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日本との結びつきを深める欧州ピアニスト

2011年03月01日

 昨年4月、世界で最も好きなジャズ・クラブだというブルーノート東京に出演。その時のステージをライヴ・アルバムとしてリリースしたジョヴァンニ・ミラバッシが、録音から1年後に同店へ帰還。今回はミラバッシが惚れ抜いてトリオへの参加を請うたドラマーのレオン・パーカーから、新顔に交代していた。プログラムはバラードとアップ・テンポのナンバーが交互に並ぶ進行で、未知数の新加入ドラマー=ルクミル・ペレスの実力が次第に明らかになった。キューバ出身でパリ在住のペレスは、近年主流となっている手数の多いタイプ。パーカーに劣らぬパワーの持ち主ではあるのだが、所々詰めの甘さが認められ、それがトリオ・サウンドの流れの中でマイナスに響いた。スロー・テンポで始まった曲でも、結局ほとんどが途中からアップ・テンポに変わっていて、これは前回との相違点。ドラマーの交代理由は不明なので断言はできないが、ペレスは現在、試雇期間かもしれない。

六本木と目黒でのクラブ・ライヴ

2011年03月02日

 ちょうど1年ぶりの来日公演となったジョージ・デューク@ビルボードライブ東京。前回よりもメンバーが少なくなった4人編成だ。レパートリーに大きな変化はないと予想したのだが、それは嬉しく裏切られた。1曲目の「6オクロック・イン・ザ・モーニング」はソロ・リレーで楽曲を発展させる、即興性の高い内容。80年代のマイルス・デイヴィスへの提供曲をメドレー仕立てにし、前半はフュージョンと言うよりもジャズ色の濃い演奏となった。中盤ではアコースティック・ピアノに向かって「スウィート・ベイビー」と『ブラジリアン・ラヴ・アフェア』収録曲で、長年のファンを喜ばせた。さらにアンコールでは「高音が出ない」と断りながらも、大ヒット曲「シャイン・オン」を熱唱。その心意気を含めて、デュークのサービス精神が光った。
 その後、目黒ブルースアレイ・ジャパンへ移動。小林香織の新作『プレシャス』のリリース記念ライヴを観た。小林のステージに接したのは「クロスオーヴァー・ジャパン ‘05」以来、実に6年ぶり。ほとんど出ずっぱりのパフォーマンスとテンポのいいステージ運びに、大きな成長の跡が認められた。近年人材が増えているフュージョン系邦人女性アルト奏者にあって、小林は第一人者だと再認識した。

カペルマイスターの懇親会

2011年03月03日

 ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の指揮者であり、クラシック音楽界の前例を打ち破ってきたリッカルド・シャイーが、ホール・コンサートの前日に、ホテル西洋銀座で関係者との懇親会に出席した。新聞記者や評論家などクラシック関係者約30名と女優・山口智子、ヴァイオリニスト川井郁子も列席。ジャズ関係者は自分だけという異空間だった。シャイーの来日のタイミングで国内リリースされたのがステファノ・ボラーニとの共演作『ラプソディ・イン・ブルー』で、ぼくは同作の発売元であるユニバーサルからのボラーニECMリーダー作で解説を書いている関係である。主催者側とシャイーからのコメントに続いて、取材側からの質疑応答が続いた。個人的にジャズ寄りの質問をしたかったのだが、そのような雰囲気でなく、終宴後に本人を直撃。ボラーニとの出会いからレコーディングまでに至った経緯をヒアリングした。大御所なのにフレンドリーなシャイーの人柄に魅了されたのも収穫だった。

関西シンガーの東京定期ライヴ

2011年03月10日

 清水ひろみは個人的な付き合いもあり、以前から応援しているヴォ?カリスト。先頃ニューヨークでの録音を行っており、今夜はそのアルバムが世に出る前のタイミングでの東京ライヴとなった。会場の代々木NARUは清水が東京の拠点にしているクラブであり、常連客も多い。共演者は常連の里見紀子(vln)と初共演の清水絵理子(p)。NY録音に参加した里見とは回を重ねるごとに、協調関係を深めていることが感じられた。

ジャズ界の重鎮サックス奏者が嬉しい来日

2011年03月22日

 11日に起きた大震災は、多くの人々の生活に甚大な影響を及ぼした。ジャズ界では海外アーティストの来日キャンセルが相次ぎ、都内のクラブはダメージを受けている。そんな中、超ベテランのフィル・ウッズが丸の内Cotton Clubに2日間出演した。今夜は初日のファースト・セットを観た。オープニングの「チェイシン・ザ・バード」はチャーリー・パーカー所縁のナンバーで、ウッズのルーツをまずは明らかにした格好。長年のバンド・メンバーであるスティーヴ・ギルモア(b)、ビル・グッドウィン(ds)とのコンビネーションは、勝手知ったる趣だ。グラミー賞受賞で意気上がるブライアン・リンチ(tp)は、このメンバーでの最年少(と言ってもヴェテランだが)ながら、自作曲も提供して確かな実力を披露した。ラストの「柳よ泣いておくれ」はベースラインに「オール・ブルース」を使用し、ユニークな効果を上げていた。

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