Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイリー

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天才歌手のショーケース・ライヴ

2009年08月03日

 先月下旬、デビュー作が日本でリリースされたニッキ・ヤノフスキー。まだ15歳のヴォーカリストである。ぼくは先日バンクーバーへ行った時に、現地のショップでいち早く購入し、CDとDVDで掛け値なしの才能を体感していた。10代でデビューするミュージシャンは決して珍しくなく、その売り出しのために「天才アーティスト」のようなキャッチ・コピーが冠せられることはよくあるが、ニッキは規格外だ。芝公園のザ・プリンス・パークタワー内のジャズ・クラブ「メロディライン」で、関係者向けに開催されたショーケース・ライヴを鑑賞。今回ニッキは札幌のジャズ・フェスティヴァルに出演するため来日し、このタイミングで東京にもやってきたというわけだ。4人編成のバンドをバックにスタートしたステージは、1曲目の「A列車で行こう」から非凡な歌唱力を全開にする。ジャズ・ヴォーカルの基本をしっかりと身につけた上で、応用編のスキャットやフェイクで自分の個性を表現。ここまでの域へ到達するためにどれだけ多くの人々が四苦八苦しているかを考えると、この若さで易々と乗り越えているニッキの凄さに驚くほかない。約40分のパフォーマンスを聴きながら、近年ポップス界に多くの才人を送り込んでいる「アメリカン・アイドル」をふと想起した。つまり層の厚い人材から、特定ジャンルではなく“歌手”としての地金が強い若者が飛び出してきた、という印象。エラ・フィッツジェラルドを敬愛するニッキが全世界的なサクセス・ストーリーを築くまでに、多くの年月を要すことはないだろう。

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