Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー

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2009年07月アーカイブ

2009年07月03日

新進女性ヴォーカリストのクラブ・ライヴ

 昨日カナダから帰国した。今日はさっそく日常的なペースに戻ってのライヴ鑑賞。北川真美(まさみ)を「代々木NARU」で観る。大阪を拠点に活動する北川は、清水ひろみに師事し、昨年デビュー作『クローズ・ユア・アイズ』をリリース。今夜が東京でのデビュー・ステージである。3月に清水が同店に出演した時、北川も来店していて、その時に挨拶をしていた。実は同デビュー作を事前に聴いていない状態で、ライヴに接する形となった。これは自分の行動としては珍しいことだ。予備知識のない状態で臨んだステージの第一印象は、声の美しさだった。北川が敬愛するペギー・リーのレパートリーやスタンダード・ナンバーを歌う姿は、プロ・キャリアが豊富ではないにもかかわらず、落ち着いたもの。聴き手が安心してその空間に身を任せられる点で、北川は基本条件をクリアしていた。邦人ヴォーカリストには、プロであってもこの部分を習得できていない者も散見できるだけに、魅力的な新人を発見した思いが嬉しさを呼び込んだ。今夜の伴奏者はピアノ&ベースで、『クローズ?』はピアノ+ベース+ギター。どちらもドラムスが不在で、普段のライヴでも同様なようである。この編成が自分の音楽性に合致しているとの考えが理由なのだろう。この安定感のある歌唱力を、通常のピアノ・トリオやギター、サックス入りの編成でも聴いてみたいと思った。今回をきっかけに、東京での露出を増やしてほしい新星である。

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2009年07月04日

話題の2世ヴォーカリストが登場

 先月「ブルーノート70周年記念パーティ」で生パフォーマンスを観たチャイナ・モーゼス。母親がディー・ディー・ブリッジウォーターという血筋の良さは、先月国内リリースされたジャズ・デビュー作『フォー・ダイナ』で存分に発揮されていた。今夜は同作の重要メンバーでもあるピアニスト、ラファエル・ルモニエを含むカルテットを従えて、「ブルーノート東京」に登場した。ソウル/R&Bでのプロ・キャリアがあるということで、ステージ度胸は申し分なし。2週間前のパーティ@代官山でも感じたが、マイペースなマナーは“新人”の枠を超えている。同作がダイナ・ワシントンのトリビュート作ということもあって、曲間のMCではダイナにまつわるエピソードを披露。ジャズ・デビュー作なのにダイナをテーマにしたアルバム作りの必然性を、次第に観客に浸透させた点は特筆できる。個人的に注目していたのはドラマーのアン・パセオ。まだ20代の若手女性は、トリオのリーダー作をリリースした成長株。同作のレーベルLaborieのプロデューサーと先月ビジネス・ミーティングをした時に推薦されたこともあって、等身大の実力をこの目で確かめたかった。中盤にメンバー全員が楽屋に下がると、ドラム・ソロ・パートに。パセオはここぞとばかり、モーゼスのバッキングでは発揮できないスキルを全開に。その後メンバーが復帰すると、アップテンポの「ティーチ・ミー・トゥナイト」で最高潮を迎えた。今夜のセカンド・セットは、通例の演奏時間を超えた1時間半に及んだのであった。

2009年07月06日

10年ぶりの日本ツアー

 フランスのサックス/クラリネット奏者ルイ・スクラヴィスが、10年ぶりの日本ツアーを行った。共演者はベルリン在住の邦人女性ピアニスト高瀬アキ。両者の共同名義作『Yokohama』がリリースされたばかりでのデュオ・ライヴである。今回の来日公演が実現した背景に、横浜開港150周年記念のプロジェクトと連動したことがあったそうで、このような形で商業主義的ではない音楽が日本に紹介されることを喜びたいと思った。“新宿ピットイン”はコアな2人の支援者たちで満席。それぞれのコンポジションで構成したオリジナルな世界は、スクラヴィスの循環呼吸奏法が繰り出されながらも、時折見せるユーモア・センスで、インプロヴィゼーション主体のステージゆえの緊張感がほぐれながら進行。楽器を操る力量一つをとっても、その高度なテクニックに圧倒されてしまった。

2009年07月07日

新世代ファンク・バンドが六本木に初登場

 ソウライヴ@ビルビードライヴ東京。99年にアラン&ニールのエヴァンス兄弟を中心に結成されてから、今年で10年。最新作『アップ・ヒア』をリリースしたばかりのタイミングでの、クラブ出演である。この間、ニールがトニー・ウイリアムス・ライフタイムのトリビュート・バンドに参画したり、バンド・メンバーのサム・キニンガー(sax)がソロ・アクトとして名をあげたりといった、メンバーのステージ・アップが認められた。公演は鍵盤のニールとドラムスのアランがバンド・サウンドの核を担いながら、サウンドを推進する。その展開に特段目新しい要素はなかった。初期に確立したサウンドを揺ぎ無く現在も続けている、という印象。聴衆の期待を裏切らない点では間違いないのだが。音楽シーンの移り変わりの速さを同時に感じるイヴェントであった。

2009年07月16日

新世代女性歌手の丸の内公演

 アリッサ・グラハム@コットン・クラブ。日本デビュー作『エコー』は、オリジナル曲のほか、ポール・サイモン、スティングといったポップスやルグラン、ジョビンといった名作曲家のナンバーもカヴァーし、個性をアピールした。ぼくはジャケット写真が伝える落ち着いた雰囲気の女性をイメージしていたのだが、ステージに登場したアリッサは元気一杯で、フリフリのワンピース姿でジャンプする陽気なキャラクターのシンガーであった。レパートリーのアレンジに関しては入念になされていたようで、インストの比重が多い曲もあって、それが聴きどころを生んでいた。それにしてもこのギャップを、どのように理解するべきなのか。その答えは次作で見つかるのだろうと思う。

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