Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー

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2008年04月アーカイブ

2008年04月01日

大阪からやってきた女性ヴォーカリスト

 大阪を代表するジャズ・クラブ「JAZZ・ON TOP」のオーナーである清水真吾氏は、自店をレーベル名とした原盤制作を行っている。日本人ヴォーカリストにフォーカスした制作姿勢は、大阪から新しい風を吹かせたいとの思いが伝わってきて、以前から注目していた。
 今夜は同レーベルから新作をリリースした2人の女性ヴォーカリストの記念ライヴを、高田馬場「コットンクラブ」で観た。デビュー作『ガール・トーク』で全国でのお披露目となった清谷莉絵は、ゴスペル出身の若手。ファースト・セットでは地元ではない初めてのクラブ・パフォーマンスということもあってか、硬さも見られたが、セカンド・セットに進むと吹っ切れたように地力を発揮。同作収録曲の「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」「ガール・トーク」等を歌った。
 もう1人のデビュー作『サムシング・グッド』をリリースした吉若えつこは、舞台俳優から歌手に転向した新鋭。「夜は千の目を持つ」のバラード・アレンジや、ヴォーカリストがあまり取り上げない隠れたスタンダード・ナンバーをカヴァーし、独自性を印象付けた。ステージのラストでは同レーベルの看板シンガーである清水ひろみが加わった3人で、「ルート66」を熱唱。終演後の打ち上げで2人のプロフィールを詳しく聞くことができたのも収穫だった。

2008年04月03日

孤高のテナー奏者が3年ぶりに来日

 1960年代にキース・ジャレットを擁したカルテットで一世を風靡したチャールズ・ロイド。70年代になると独自のライフ・スタイルを打ち出し、80年代に入るとミシェル・ペトルチアーニとの出会いによってジャズ・シーンに復帰。その後はECMを舞台にマイ・ペースの活動を続けており、そのスタンスは斯界のトレンドとの無縁を保っていた。しかしロイドの鋭い嗅覚は、ジョン・テイラー、ブラッド・メルドー、ジェリ・アレンといった優秀なピアニストを、常に自分のバンドに確保したことに示されてきた。現在は昨年丸の内「Cotton Club」に自己のバンド・ワゴンを率いて出演したジェイソン・モランがレギュラーで、今回は新作『ラボ・デ・ヌーベ』のメンバーからベーシストが欠席したトリオによるステージとなった。
 演奏内容については4/19発売の「スイングジャーナル」 5月号を参照してほしい。終演後、楽屋におじゃましてロイドと談笑。3年前のステージではほとんどMCをせず、アンコールも無しだったので、今回は想定外のアンコールに応えたことを含めてイメージ・チェンジを印象づけられた。直接話したロイドは、気難しい人物ではなく、こちらとの会話で両手を合わせながら感謝の意を示す紳士だったのが、意外な収穫。ジャズ・ミュージシャンにとって最も重要な要素である“個性の強さ”について、改めて考えさせられる公演であった。

2008年04月04日

ジャズ・ヴォーカルを再考させられたステージ

 ティファニー@丸の内Cotton Club。2006年に『ザ・ニアネス・オブ・ユー』でアルバム・デビューし、翌年ハンク・ジョーンズ参加の第2作『マイ・フェイヴァリット・シングス』で、さらに認知度を高めた黒人女性ヴォーカリストだ。今夜はいつもの同店に比べて、半額以下のミュージック・チャージを提供。1人でも多くの集客を望んだ主催者の思いが感じられた。
 日米混成カルテットを率いてステージに登場したティファニーは、日本語を交えたMCで楽曲を紹介しながらプログラムを進行。観客とインティメイトな空間を作った。キャリアは浅いものの、黒人ならではの地力によって現在の地位を築いたティファニー。しかし同時に問題点も浮き彫りになった。過去2作にも参加したテナーサックスのレイモンド・マクモーリンである。ステージの露払い曲となったインストで、いきなり音が裏返るハプニング。その後もおおよそヴォーカリストのバッキングという本分から外れたプレイが続出するに至り、この稚拙なプレイヤーを起用した理由が見つからず困った次第。アーチー・シェップやジェームス・カーターを尊敬しているのかもしれないが、それにしても技術が伴っていない。観客はそれなりに満足していたようだが、ぜひこの点に関して客席の皆さんにヒアリングしたいと思ったステージであった。

2008年04月06日

先駆的女性サックス奏者の記念ライヴ

 矢野沙織、小林香織、堤智恵子、仲野麻紀と、日本人若手女性サックス奏者が活躍している状況は、以前であれば考えられないものである。現在かつてないほどの活況を呈している金管楽器界のトレンドが、人材輩出を後押ししているのかもしれない。今夜は早坂紗知率いるミンガの新作『Palpitante!』リリース記念ライヴを、新宿ピットインで観た。バンドはサックス+ピアノ+ギター+ベース+2パーカッションで、同作をやや縮小した編成。アフリカン・パーカッションを起用する日本人ジャズはミンガの独占物ではないが、思わず踊りたくなるほどの楽しいサウンドは、クリエイティヴィティとエンタテインメントを両立しながらバンドの音楽を主張する、巧みなアイデアを感じさせられた。早坂が昨年の入院生活中に書き溜めたオリジナル曲も、話題性豊か。ファースト&セカンド・セットの共にオープニング・ナンバーで口火を切った新澤健一郎の存在感あるピアノも特筆したい。会場では綾戸知恵ファンクラブ会長I氏や、管楽器エキスパートのS氏と久々に再会。ブレイクするポテンシャル大のユニットである。

2008年04月10日

日本最高記録の傑作ミュージカル

 3年ぶりとなる『ラ・マンチャの男』が東京・帝国劇場で上演中。今日はあいにくの雨模様の中、会場に足を運んだ。1969年から数えて、今回の公演中に通算上演回数1100回を迎えるというから、それだけで主演を務める松本幸四郎の“役者魂”の凄さが痛感できるというもの。主演女優の松たか子が、鳳蘭を引き継いでアルドンサ役を担ってから、今回3回目となる。帝劇のロビーに入ると、上演時間は休憩なしの2時間05分との表示を確認。前回はもっと長時間だったはずで、これは本作の演出家でもある幸四郎さんが回を重ねるごとにブラッシュアップした結果だとも言えるだろう。
 それにしても今回もたかちゃんの大立ち回りは凄かった。時代劇の殺陣と同じで、段取りを間違えると怪我を負いかねない。これはなかなかの見せ場であった。フットワークと反射神経の良さを兼ね備えていなければ、この場面は勤まるまい。貧しく生まれ育ったアルドンサが、セルバンテス(=幸四郎さん)からの度重なるコールを受けて、最期には心を開く。そしてラ・マンチャの男が示した「見果てぬ夢」。この舞台を生体験しなければ聴けない、たかちゃんのミュージカル歌唱にも感銘を受けた。心地よい感動に包まれた夜であった。

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2008年04月12日

若手実力派ヴォーカリストのお披露目ライヴ

 昨年10月にジャズ・デビュー作『ラヴ・レターズ』をリリースしたジョエルは、定石のプロモーション活動を敢えて積極的に展開せずにここまで来た。今夜は目黒「Jay-J’s Café」での待望のステージ。ぼくは同作のライナーノーツを執筆したこともあり、足を運んだ。お披露目ライヴが何故デビュー作から半年もかかったか、の理由は、あくまでレコーディング・メンバーでのパフォーマンスにこだわったからだという。確かにアンダーシュ・パーション(p)と森泰人(b)はスウェーデン在住のミュージシャンなので、スケジュール調整が必要だ。今回彼らのグループによる日本公演のタイミングに合わせて実現した、ジョエル・ライヴというわけである。
 1曲目の歌唱を聴いて驚いた。ネイオティヴ・スピーカーだから英語発音に問題がないことはわかっていた。それに加えてジャズ・ヴォーカリストとしての表現力にも優れた資質をすぐに感じさせたのだ。「ソー・イン・ラヴ」「ムーン・リヴァー」「ラヴ・レターズ」等々、歌詞の世界をきちんと咀嚼した表現に好感。キース・ジャレット『メロディーズ・アット・ナイト、ウィズ・ユー』収録曲でもある「ビー・マイ・ラヴ」「マイ・ワイルド・アイリッシュ・ローズ」も、個人的には嬉しく思った。終演後、本人に積極的なライヴ活動をリクエスト。実は気さくなクール・ビューティを応援していきたい。

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2008年04月17日

大阪の名物男が完成させた労作

 きもの卸・小売りを本業としながらも、1年に数か月は海外を飛び回ってジャズ活動を続けているのが藤岡靖洋氏だ。藤岡氏とはかれこれ20年近いお付き合いになり、ぼくのラジオ番組にゲスト出演していただいたり、東京でのジャズ関係者の集いで情報交換するなどの関係である。今夜は藤岡さんが編纂された『The John Coltrane Reference』(Routledge)の出版記念パーティーのため、高田馬場コットンクラブを訪れた。コルトレーン・ディスコは初版本も立派なものだったが、それからさらに13年の歳月を費やして、国際A4版、英文820ページの重量本を完成させたのは、もう脱帽するしかない。
 ぼくもビル・エヴァンスのディスコグラフィー本を出版したことがあるので、この仕事の大変さはよく理解している。それにしてもこのヴォリュームは、やはり超弩級である。会場には多数のジャズ関係者が集い、コルトレーン・ナンバーを連発した竹内直の生演奏もあって、大いに盛り上がった。

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2008年04月23日

ヴォーカル賞受賞記念のホール・コンサート

 2007年度ジャズ・ディスク大賞ヴォーカル賞(国内部門)を受賞した平賀マリカが、記念コンサートを行った。会場は東京・赤坂サントリーホール ブルーローズ。ホール前広場へ行くと、かなりの人だかり。入口に近づくと、大ホールでヨー・ヨー・マ公演が行われるためだとわかった。ぼくは左手の小ホールに進む。場内は固定椅子ではなく、ホテルの広間のような趣である。ファースト・セットでは守屋純子(p)率いるクインテットが平賀をバックアップ。受賞作『クロース・トゥ・バカラック』からのナンバーを披露した。バート・バカラックは昔からジャズ・ミュージシャンの間でも人気の作曲家だが、最近ではオランダのトレインチャがカヴァー・アルバムをリリースしたり、バカラック本人の来日公演が実現するなど、再び注目が高まっている。
 平賀はツアーでステージを重ねてきたこともあって、地方での出来事を紹介したMCも滑らか。ヴォーカリストの場合、歌を聴かせることはもちろんだが、スムーズなトークも重要な要素。その点で平賀はどちらも安定感があるので、リラックスして空間に浸ることができる。セカンド・セットに進むと、フロントが4トロンボーンズに交代して旧作のレパートリーで進行。最後にバンド・メンバー全員がステージに揃って、観客を楽しませてくれた。

2008年04月24日

ピアノ大作戦 春の陣第2弾

 1か月前にも訪れた「門仲天井ホール」へ。前回は演奏中に子供が自由に楽しんでもOK、がコンセプトだったのだが、観客の声を総合的に判断して、今夜は通常のスタイルで運営された。2組のデュオが出演する3か月連続のシリーズ・コンサート。ファースト・セットは本シリーズの主宰者でもある黒田京子(p)と村田厚生(tb)の共演。約20年前にぼくが寄稿していたジャズ誌の編集長を通じて黒田の存在を知り、CDを入手していたことがあった。現在同誌とは縁がなくなったこともあり、今夜はどこか懐かしい気分で会場に入った。
 パートナーの村田は現代音楽畑で活動しているトロンボーン奏者。ぼくには初体験だったが、まず古曲と現代曲の独奏により、確かな実力を印象付けた。また谷川俊太郎の詩を朗読した直後、即興的なパスティーシュを披露し、懐の深さを見せた場面も客席を沸かせた。ジャズ・ファンにはガーシュインやモンク曲が楽しめたと思う。セカンド・セットは佐藤允彦(p)&加藤真一(b)デュオ。佐藤は改めて紹介するまでもないヴェテラン、加藤はB-Hot Creationsのリーダーとしても活躍中。2人は独Nagel-Heyerからデュオ・アルバムをリリースしており、お互いを熟知した間柄である。ステージでは佐藤がラップトップを使用し、さながらピアノ+ベース+パーカッション=トリオの様相を呈した。しかし厳密には佐藤が二役をこなしているわけで、バーチャル・トリオによるサウンドの面白さを味わった。
 終演後、ピアニスト西山瞳さんと談笑。来月のこのステージには西山さんが出演するので、今から楽しみだ。

2008年04月25日

渋谷〜新宿&More

 今夜はライヴのはしご。まず渋谷「JZ Brat」へ向かう。3月に本邦デビュー作をリリースしたジーナ・サプート公演。LAを拠点に活動するイタリア系若手シンガーである。スタン・ケントン楽団で活躍したヴィド・ムッソを叔父に持つという。確かに血筋はいいが、等身大の実力を確かめることも、今夜の主な目的だった。ステージはサプートを含む3人の女性シンガーがステージを分け合うショーケース・ライヴ。その意図は明らかではなかったが、約20分でそれぞれが魅力をコンパクトにまとめたことで、結果的に奏功したと思う。アルバム・カヴァーはオーガニック派美形ヴォーカリストをイメージさせたが、どうして本格派であることがすぐに明らかになった。ポルトガル語によるボサノヴァ曲等の全4曲は、アルバム未収録曲ばかり。「これも私の一面なの」との声が聞こえてくるようだった。 
 2番手は一昨年に『四月の思い出』を国内リリースしたアニー・セリック。ナッシュヴィル出身者らしいカントリー・レディ色を持ち味とした歌唱を披露してくれた。ラストを務めたのはニコール・ヘンリー。数年前に日本デビューした折、メール・インタビューしたことがあって、それ以来情報を送ってくれている。今日は初めて生ステージに接した。アルバムを聴いた時には気づかなかったが、ニコールの歌唱はホイットニー・ヒューストンを彷彿させるものだった。思った通り、ぼく好みのシンガー。オーラが違う。ラストでは3人がハーモニーで合唱。終演後、ニコールと談笑できたのも収穫となった。
 休む間もなく新宿ピットインへ移動。スウェーデンからやってきたパーションクレッツである。懇意にしている森泰人(b)さんがメンバーのクインテットで、彼らの最新作は「スイングジャーナル」の輸入盤情報ページで紹介している。セカンド・セットから観たステージは、アルバム収録曲を中心に新曲も交えながら、室内楽的なバンドの音楽性を楽しませた。終演後リーダーのピアニスト=アンダーシュ・パーションと談笑。その後、六本木へ移動し、いつものダイニング・バーで森さん、サックスのヨーハン・ボリストゥルムと早朝まで痛飲した。

2008年04月26日

ストイックなスイス人ピアニストの異色舞台

 ニック・ベルチュ@新宿ピットイン。先頃ECM第2弾『ホロン』をリリースしたばかりの、タイミングのいい再来日である。前回、2006年の来日ではスイス大使館の関係者向けイヴェントで初めて会い、直後のクラブ公演でステージをレポートした。今夜は前回のグループ公演ではなく、ダンサーとのデュオ。会場は若い音楽ファンを中心に満席となった。ファースト・セットはニックのソロ・ピアノで、武士道に傾倒し日常的に心身を鍛えている成果が表現されたパフォーマンスであった。自己を律する表現者の姿勢というものを改めて考えさせられたステージ。セカンド・セットに進むと、場内の照明が落とされ、後方からダンサーが登場。いわゆる白塗り系の舞踏家が、ゆっくりとステージへ歩を進める。観客は固唾を呑んで、ダンサーの一挙手一投足に注視。その間、ニックはピアノで伴奏者を務め、自らが主役になる場面はなかった。
 終演後、本人に話を聞くと、数年前からコラボレーションを続けている関係だとのこと。ファンからサインをせがまれるなど、日本でも着実に支持者を増やしている様子を目の当たりにして、ぼくも嬉しくなった。

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2008年04月27日

オランダからやってきたバカラック・シンパ

 トレインチャ@ブルーノート東京。バート・バカラックのソングブックを2枚連続でリリースした、新進女性ヴォーカリストである。ぼくはアルバムを聴いて、なかなか上手いなと感じていた。今夜は最新作がリリースされてからほどないタイミングでの単独公演だ。今日は日曜日なので、平日のBNTとは客層が異なる。休日だから仕事を忘れさせてくれるような、特別な時間を過ごしたい。そんな観客の思いは、トレインチャが提供するお馴染みのバカラック・ナンバーに好ましく反映された。「ザ・ルック・オブ・ラヴ」「恋よさようなら」「遥かなる影」・・・。これらの選曲は10代のぼくが洋楽を聴き始めた70年代とそのまま重なる。50年前にバカラックが書き、トレインチャに録音を勧めて自らアレンジを担当した「ウエイティング・フォー・チャーリー」で、単なるバカラック・カヴァーではない繋がりの深さもアピール。最初のアンコールではバカラックがトレインチャのために書き下ろしたバラードを披露。再度のアンコールでは有名な映画音楽「雨に濡れても」で、日本人観客との距離を縮めたのであった。

2008年04月28日

個性派男性ヴォーカリストが丸の内を再訪

 1年前にティル・ブレナー・プロデュース作『ラヴ・イズ・ホワット・ステイズ』をリリースした他、ファイヴ・コーナーズ・クインテットとのコラボで若い音楽ファンからも注目されるマーク・マーフィーのステージを、丸の内「Cotton Club」で観た。前回の同クラブでの公演も観ており、実は今回のお目当てはピアニストのミーシャ・ピアティゴルスキだった。ミーシャは2004年のモンク・コンペ優勝者ということで、実力は文句なし。ただし日本ではまだアンダーレイテッドな存在である。まずバンドで登場すると、ミーシャがメンバー紹介をして、インストゥルメンタルを演奏。マーフィーがステージに登場すると、そこはまさに独壇場となった。ぼくはミーシャのリーダー作の国内配給をしているガッツプロダクション笠井代表と同席していたこともあって、終演後にミーシャと談笑。そこにドラムスのクリス・ワビッチが加わって、リーダーCDもいただいた。ミーシャに「変則的な歌唱をするマークとの共演は、やりにくくないか」と尋ねたところ、「ぼくはピアノをオーケストラのように演奏する。これは他のヴォーカリストと共演する時には演らない」とのコメントをもらった。

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2008年04月30日

30年ぶりの異例なデュオ・ライヴ

 チック・コリア&上原ひろみ@日本武道館公演が発表された時、真っ先に反応したのはぼくの知人独身30代女性だった。いまやひろみちゃんは、ジャズ・ファンではない女性をも虜にするポテンシャルを持っている。同館でジャズ・デュオ公演が開催されるのは、チック・コリア&ハービー・ハンコック以来、30年ぶり。ぼく自身、ここでコンサートを観るのは実に久しぶりである。共に1960年代のマイルス・デイヴィス・グループ出身者のチック&ハービーに比べると、チック&上原は出自もキャリアも違うパートナーシップ。一昨年の「東京JAZZ」およびアルバム化された昨年の「ブルーノート東京」公演を経て迎えた、この大ホール・コンサートである。
 チック&ハービー公演ではアリーナ中央にステージが作られ、全角度に集客したが、今回は通常の北側にセッティング。その代わりステージ両側にプロジェクターを設置して、2人の手の動きが楽しめるという趣向だ。『デュエット』収録曲を中心とした演奏は、最新作の世界を再現する趣でありながら、予定調和に終わらない2人の決意とアイデアが感じられて、嬉しく思った。それぞれ5000人の集客力があるとしても、日本武道館のキャパシティは難関。今回、そのハードルに果敢に挑んだことも評価したい。日本のジャズ史に大きな足跡を刻んだ一夜となった。

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