大ヴェテラン歌手のホール・コンサート
ジャズ・ヴォーカルの世界は奥が深い。何故ならば器楽と違って、評価の軸がその歌手の声を好きになれるかそうでないかに基づくからだ。今夜登場するピンキー・ウインターズは70歳代半ばのヴェテラン。日本ではマニアックなファンから支持を集め、近年再注目されている。フランク・シナトラ没後10周年と絡めた企画が、半蔵門のTOKYO FMホールで開催された。ファースト・セットを務めたのは金丸正城。邦人男性としては屈指の実力者と評される金丸は、ギター・カルテットをバックに、シナトラの愛唱曲を取り上げた。この曲は不得意だったけれど、企画者からのリクエストに応じた、と断りを入れた上で歌った「マイ・ウエイ」は、あの有名なヴァージョンとはアレンジを変えて、独自性を表現する努力の跡を感じさせた点に好感を抱いた。セカンド・セットに登場したピンキーは、シナトラとの個人的なエピソードを交えながら有名曲を披露。収録曲のアルバム・カヴァーをスクリーンに映し出すサービスは、このイヴェントの主旨を踏まえたgood jobだと感じた。最後に金丸が登場して、ピンキーとのデュエットを実現。貴重なシーンとなった。マイ・ペースで歌うピンキーの魅力と、シナトラの偉大さの両方を浮き彫りにした意味で、有意義なステージであった。