Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー

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2008年10月アーカイブ

2008年10月01日

邦人女性ピアニストの新作記念ステージ

 2年ぶりに新作『グレースフル・ビジョン』のリリース記念ツアーで各地を訪れているアキコ・グレースの、東京公演を六本木STBで観た。同作は過去作でも共演しているベースのラリー・グレナディアと、初共演のドラマー=アリ・ホニックとのトリオ。今夜は確かな腕が買われて多方面で活躍する鳥越啓介(b)&小山太郎(ds)とのジャパニーズ・トリオで、同作の全曲を演奏してくれた。グレースのステージはこれまで何度も観てきたが、今夜最も印象的だったのはピアノに対峙するグレースの姿勢。楽器と一体化して音楽を創造する喜びを全身で表現した姿に、新しい段階に進んだ変化が感じられた。また原因はわからないのだが、グレースのピアノがECMに通じる響きを発していたのも新鮮。
 今夜のステージの詳細は、11月20日発売の「スイングジャーナル」12月号に掲載されるので、そちらも参照してください。

2008年10月02日

ジャズ/フュージョン界の2大スターの饗宴

リー・リトナーとデイヴ・グルーシンはトップ・アーティストとして、30年以上も斯界で活躍し続けてきた盟友。リトナーが頭角を現した70年代の初期リーダー作やジェントル・ソウツ名義作にも、グルーシンのクレジットがある。その後も両者はコラボレート作をリリースしており、今夏には共同名義作『アンパロ』でエレガント・サイドの2人の今を伝えてくれた。今夜は「リトナー&グルーシン meets 新日本フィル〜シンフォニック・スペシャル・ナイト」と題した、オーケストラとの共演ステージ@すみだトリフォニーホール。日本との関係が深いリトナーにとって、これは初めてのプロジェクトである。ステージは曲ごとに編成を変えながら、グルーシンがMCを務めて進行。映画音楽のヒット・メイカーの側面もあるグルーシンは今夜、交響楽団を得たことによって自身の楽曲をよりゴージャスな形で観客に届けられる喜びを味わっていたに違いない。
 リトナー+グルーシン+エイブラハム・ラボリエル+ウィル・ケネディのバンドと楽団が同じステージにいることの妙味に客席で感慨にふけりつつ、日本で実現したプロジェクトの喜びを体感。本編が終わり、アンコールに応えて登場したリトナーは、それまでのアコースティック・ギターではなく、初期のトレードマークである赤いギブソンを持っていた。もうこれだけで長年のファンは興奮。そしてカルテットで演奏したのは、グルーシンの名曲「マウンテン・ダンス」だった。こんな感動的な演出を用意してくれたトリフォニーのスタッフに感謝。

2008年10月03日

ミュージック・フロム・ノルウェー第1弾

 マッツ・アイレットセン・カルテット@恵比寿「天窓スイッチ」。マッツはこれまでボボ・ステンソン、トーマス・スタンコと共演してキャリアを高め、昨年はヤコブ・ヤング・グループで来日したベーシスト。今回は結成して間もないカルテットを率いてのステージだ。サックスのトーレ・ブリュンボルグは5月にノルウェーのMaiJazzで会っているので、再会の楽しみもあった。演奏は北欧らしさが自然に表出されたクールで繊細でピアニシモなサウンド。休憩なし、1時間半のステージで魅了した。
 終演後にブリュンボルグと談笑。来日はヨン・バルケといっしょに来た1993年以来2度目。2日前にこのバンドで、オスロのレインボー・スタジオでのレコーディングを行ったという。来年にはリリースされるのだろう。期待できそうだ。ぼくと同じ1960年生まれのテナーサックス奏者の活動には、これまで同様ウォッチしていきたいと思っている。

2008年10月04日

ミュージック・フロム・ノルウェー第2弾

 5組のアーティストが来日する10月の連続ライヴ。今夜はピアノ&ヴォーカルのスサンナ・ヴァルムルーを中目黒「楽屋」で観た。スサンナは2004年10月に東京で初来日公演を行っており、ぼくは原宿で開催されたステージを観ている。その時はアルバムと同じスサンナ&ザ・マジカル・オーケストラ名義だったのだが、オーケストラとはいってもキーボード奏者のみで、実質的にはデュオ・チームというギャップのユニークさが北欧ジャズ・ファンにアピールした。その後スサンナはオーケストラとの活動を解消したようで、今回は3人編成の個人名義バンドである。
 ギター、ドラムスとの演奏はスロー・テンポを基調としながら淡々と進んだ。リリースを控える『Flower Of Evil』の収録曲を中心としたと思われるプログラムは、ハリー・ニルソンの名曲「ウィザウト・ユー」を含み、スサンナのスロー・ライフを自身の音楽にも反映させた内容となった。若い音楽ファンが客席の多数を占めていたのは、ジャズのカテゴリーにとらわれない音楽ファンが集ったからなのだろう。

2008年10月08日

今年最大のイヴェント

 1年前から決まっていたスケジュールである。ついにこの時が来た。「引越し」という言葉の響きには「大変」というネガティヴな響きが付きまとうのではないだろうか。ぼくはこのイヴェントの本番に向けて、ポジティヴなイメージで進行するようにモチベーションを高めていた。引越し業者の下見で2日間を設定されたが、実際の作業は予想以上であった。すべての荷物を無事、新居に移動できただけでもほっとした。でも本当に大変だったのである。200箱のダンボールを荷解きしながら、部屋を作るのが緊急の課題となる。人生のリセットと、今後のスムーズな仕事環境を得るための大仕事だ。その成果は徐々に現れるだろう。

2008年10月09日

ビッグ・ネームのリユニオン・ライヴ

 ジョン・スコフィールド&ジョー・ロヴァーノ・カルテット@ブルーノート東京。80年代末にジョン・スコが結成したバンドのサックス奏者がロヴァーノであり、ブルーノートを舞台に数枚のアルバムを制作。その後オールスターズのスコロフォホでも共演しており、相性のいい関係を築いてきた。ロヴァーノは欧米での評価と人気が高い割りに、日本では過小評価状態ゆえ、人気者のジョン・スコと組むことは訴求力がアップする側面があるはず。ぼくはライヴでこのチームを観るのは初めてだったのだが、お互いに気心が知れている雰囲気を醸し出し、大物同士の特別感よりも親和性が前面に表出した。もう1つの“初めて”が、ロヴァーノ使用のAulochrome。ソプラノサックスを2本くっつけたような楽器は、エジプトの工房が製作した特注品で、メロディ/ハーモニー表現の幅が広がる優れもの。バド・パウエルとマイルス・デイヴィスの共作「バドゥ」等、約1時間半のステージを堪能した。
 終演後、御茶ノ水へ移動。西山瞳@NARU。今日はギタリストが加わったカルテットだ。これまでトリオのステージは何度も観ているが、このバンドは初めて。西山が好んで共演する馬場孝喜はパット・メセニーやパット・マルティーノからの影響を感じさせる繊細なプレイヤーだった。西山は馬場とのデュオ・チーム“Astrolabe”も始動させるというから、そちらも楽しみである。

2008年10月10日

第35回スカンジナビアン・コネクション

 スウェーデンに移住して四半世紀。94年の発足以来、北欧のミュージシャンを数多く日本に紹介するライヴの企画・運営を続け、この分野では最大級の貢献を果たしているベーシストが森泰人だ。今夜はオランダのピアニスト、マイク・デル・フェロー・トリオが出演した新宿「ピットイン」公演を観た。メンバーは森(b)+オランダ人ドラマーのセバスティアン・カプティーン。マイクは今回「スカンジナビア・コネクション」では4回目の来日となり、他にトゥーツ・シールマンスGで「ブルーノート東京」に出演するなど、日本での人気が定着しつつある。今夜の演奏ではスタンダード・ナンバーのアレンジに独自性を発揮。これまでにぼくが観たマイクのパフォーマンスで、最上の演奏を聴かせてくれたことを特筆したい。
 またゲスト・ヴォーカリストとして、イェーテボリ音大で学ぶ25歳のサラ・リーデルが客演し、ステージに華を添えた。サラはスウェーデン・ジャズ界の重鎮であるベーシスト/作曲家ゲオルグ・リーデルの愛娘。スウェディッシュ・ビューティーとして日本に正式紹介される日も、遠からず訪れることだろう。

2008年10月11日

オランダ大使館でのパーティー

 この時期、神谷町のオランダ大使館を訪れるのは今日が初めてではない。今回はジャズ・オーケストラ・オブ・ザ・コンセルトヘボウの来日を記念したビュッフェ・ディナーが開催された。定刻の18:00に到着すると、全権公使ゲラルド・ミッヘルス氏がエントランスで出迎えてくれた。そのまま歩を進めると、まだ会場内は閑散としている。ウエルカム・ドリンクを片手に所在無げにしていたところ、報道・文化担当官バス・バルクス氏と名刺交換。そのまま様々な話題の英会話へ。そうこうするうちに知人の関係者が来場し、盛況のディナー・タイムとなった。同オーケストラのディレクターやメンバーとも挨拶。今回ソロイストを務めるジェシ・ヴァン・ルーラーとも談笑。閉会後はフィフティファイヴレコード五野氏、評論家成田氏、写真家土居氏と場所を移動して2次会を楽しんだ。

2008年10月15日

恵比寿から南青山へ

 「Yebisu de Jazz」と題したイベントのため恵比寿に向かう。先月、東北のジャズ・スポット取材をご一緒した中平穂積さんの写真展と、記念のライヴである。初めて訪れた会場の「アート・カフェ・フレンズ」はビルの地下にある、約100名集客可能な新しいスペース。「ギター・デュオ・ウィズ・ベース」として小沼ようすけ+荻原亮+日野賢二が出演した。共演する機会が多いミュージシャン同士ゆえの、インティメイトな雰囲気を醸し出し、会場を占めた女性客はうっとり。「ソー・ホワット」「ドナ・リー」といったジャズ・ナンバーに加えて、パット・メセニーの初リーダー作収録曲「ブライト・サイズ・ライフ」が個人的な収穫となった。終演後、小沼君と談笑。
 ファースト・セットを観た後、南青山へ移動。ジャズ・オーケストラ・オブ・ザ・コンセルトヘボウ@ブルーノート東京。96年に発足し、現在はオランダ屈指のビッグ・バンドに成長している若手ミュージシャンの集合体だ。今回は最新作のフィーチャリング・ギタリストでもあるジェシ・ヴァン・ルーラーとの共演ステージ。驚いたのは開演前、客席がいっぱいになり、通常は開放しない2階バルコニー席にも観客を入れたこと。BNTでは一夜限りの公演だったことも集客の背景にあると思うが、同時に近年のビッグ・バンド・ブームを反映したものだとも言えるだろう。選曲の中では「ホーリーランド」が印象的。10年前に作曲者のシダー・ウォルトンと共演したことがきっかけとのこと。ピアニスト=ピーター・ビーツの好演も光った。

2008年10月17日

恵比寿から丸の内へ

 今月初めから続く「ミュージック・フロム・ノルウェー」も、いよいよ最後の出演アーティストとなった。今夜はザ・コア@恵比寿・天窓スイッチ。ザ・コアは2001年に結成された同国の新世代カルテットで、編成はサックス+ピアノ・トリオ。開演前、旧知のスタイナー・ラクネスと談笑。スタイナーはぼくが2003年にコングスベルグ・ジャズ祭に招かれた時、現地で会って以来の関係で、その後アーバン・コネクションやトロンハイム・ジャズ・オーケストラのメンバーで来日を重ねている。今夜のステージはまず30分ノンストップで演奏。60年代のジョン・コルトレーン・カルテットからの影響が濃いサウンドに、当時のフリー・ジャズが現在のノルウェー・ジャズに大きな影を落としていることを改めて感じた。それはソニー・シモンズや、5月にスタヴァンゲルで観た米国人ベテランと同国若手との共演でも実証されている。2曲目はチック・コリア「マトリックス」を想起させる18分のナンバー。ヨルゲン・マティセン(ts)のサーキュラーブリージングを含め、メンバー全員のテクニシャンぶりも強く印象に残った。
 その後、丸の内へ移動。デューク・エリントン楽団@Cotton Club。約2週間の出演はスケジュール前半と後半に異なるゲストをフィーチャーした編成だ。今夜はマーサ&ヴァンデラスのマーサ・リーヴス(vo)が登場。「ストーミー・ウエザー」「アイ・ガット・イット・バッド」等のエリントン・ナンバーを熱唱し、ショー・ビジネス界での経験豊かな実力を発揮した。エリントン楽団と所縁の深いクラブ名を冠した同店での公演には、特別感が漂っていた。客席が満員だったことも、ビッグ・バンド人気の証しと共に特筆したい。

2008年10月18日

ヨーロッパ在住の女性デュオ

 海外に拠点を置いて音楽活動を行っている邦人女性ジャズ・ミュージシャンは、年々顕著になっている。ピアニストではアメリカで世界最高のビッグ・バンドを作り上げた秋吉敏子が説明不用のパイオニア。世代をさらに下ったヨーロッパでの先駆的存在が高瀬アキだ。ドイツ、ベルリンを本拠地とする活動は、コンスタントなレコーディングや帰国公演を通じて、独自の道を切り開いてきたことを日本のジャズ・ファンに伝えている。今夜は若手女性サックス奏者ジルケ・エバーハルドとのデュオ公演を、新宿「ピットイン」で観た。2人は『オーネット・コールマン・アンソロジー』をリリースしており、オーネット初期楽曲をレパートリーとするユニット・コンセプトに興味をひかれた。作曲家=オーネットのジャズ・ミュージシャンにおける人気は改めて述べるまでもないほど高く、そんな中で彼女たちがどのようなオリジナリティを発揮してくれるのかに注目した。
 アルトサックス、バスクラ、クラリネットを操るエバーハルドは、「ターンアラウンド」「ブロードウェイ・ブルース」「ロンリー・ウーマン」等の名曲で、そのスキルを全開に。高瀬との息の合った演奏は、数多いオーネット・カバーにあって独自性をアピールするものだった。アンコール曲「エンジェル・ヴォイス」のカリプソ演奏まで、ピアニスト高瀬アキに新しい一面を感じた点も指摘しておきたい。

2008年10月19日

カメルーン出身の人気ベーシスト

 リチャード・ボナというベーシストをぼくたちが知るプロセスを振り返ってみると、本人にとっては日本での理想的なファン獲得の図式が反映されたものだったと言えるだろう。数多くの無名のアフリカンを紹介してきた渡辺貞夫が自分のバンドに起用し、パット・メセニーが抜擢。近年はマイク・スターン・バンドでの来日公演でも、個性を輝かせている。今夜は6人編成のボナ・バンドを「ブルーノート東京」で観た。5弦ベースを主体とした演奏にあって、「スリー・ヴューズ・オブ・ア・シークレット」では唯一の4弦ベースを披露。ジャコ・パストリアスへの思慕を表明してくれた。それにしてもボナが観客の笑いを誘うほど日本語が堪能なことが驚き。ピーボ・ブライソンに匹敵するかもしれない。アンコールではヴォーカル多重録音をその場でループ状にし、リアルタイムでユニゾン・コーラスを作る技で、観客を楽しませてくれた。過去に観たボナのステージで、最もエンタテインメント性の高い内容であった。

2008年10月21日

スウェーデンからやってきたピアニスト

 スティーヴ・ドブロゴスは20代初めにアメリカからスウェーデンに移住し、悲劇的な最期を遂げた女性ヴォーカリスト=ラドカ・トネフとの共演作によって、その名を知らしめているピアニスト。今日はドブロゴスを招いたソロ・コンサートを午後2:00から松涛美術館B2ホールで観た。無料の招待客が集った平日日中のコンサートということもあって、客席は女性が中心。ドブロゴスのアルバム『エボニー・ムーン』を国内配給しているブルーグリームの神山氏から、ぼくの前列にいたシャンティを紹介された。2部構成のステージは「星影のステラ」「ブラックバード」「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」等、スタンダードやビートルズ・ナンバーを取り混ぜた選曲で楽しませてくれた。セッティングとマニアックな人選のギャップを踏まえれば、これを機会に新しいジャズ・ファンが増えることを願いたいばかりだ。
 19:00からはJZ Bratに場所を移して、「モジョ・レコード1周年」を観る。才能ある邦人アーティストを紹介することで知名度を高めている新興レーベルのショーケース・ライヴ。トップ・バッターの敦賀明子トリオは、最新作『ニューヨーク・シティ・セレナーデ』収録曲を主体に、本場で揉まれてきたミュージシャンならではの実力を発揮した。第2部はボサノヴァのカレン(g,vo)。小野リサに続く人気アーティストに成長するかどうか、今後を見守っていきたい。トリを務めたのはファブリッツイォ・ボッソ参加の新作『ワン・ウエイ・トゥ・ローマ』をリリースしたばかりのトミー(tb)。音の大きさで存在感を発揮した点に、日本人ミュージシャンとしての頼もしさを感じさせてくれた。

2008年10月22日

老舗ビッグ・バンドの第2夜

 デューク・エリントン楽団@丸の内Cotton Club。約2週間公演の後半にあたる今夜は、オマー・エドワーズをフィーチャーしたステージだ。オマーはトニー賞を獲得したタップ・ダンサーで、iPodのCMに出演したことでも広く知られる。楽団が「A列車で行こう」等を演奏した後、オマーが登場して客席の間をタップで移動。これだけでつかみはOKだ。エリントンの名曲「キャラヴァン」を通路でプレイしたオマーは、エリントンの音楽を深く理解しているからこそ、このコラボレーションが実現できたのだなと納得できた。ジャズ・ビッグ・バンドとタップ・ダンサーとの共演で言えば、ぼくが観るのはマッコイ・タイナー楽団&セイビアン・グローバー以来。やはりこれはアメリカが誇る文化としてリスペクトすべきものだと再認識した。

2008年10月23日

スウェーデンを代表するビッグ・バンドが来日

 ヨーロッパ各国が質の高いビッグ・バンドを擁し、それが広く欧州ジャズ界のレベル・アップにつながっていることは、今や斯界の常識となっている。今夜は日本でDVD作品がリリースされているスウェーデンのボーヒュースレン・ビッグ・バンドを、赤坂Bbで観た。スカンジナビア・コネクションを主宰するイェーテボリ在住のベーシスト、森泰人がブッキング。ただでさえ人数が多いバンドを日本に連れてくるのは、経費等を考えるとたやすい事業ではないわけだが、近年のビッグ・バンド人気が追い風になったのかもしれない。
 今回のステージは2本立ての構成となった。世界的に活躍した同国のポップ・グループ=ABBAのカバー・プロジェクトやザ・クルセイダーズの来日公演で、日本でも知名度が広がっているニルス・ラングレン(tb)が音楽監督を務め、若手ヴォーカリスト=ジャッキーが華を添える趣向だ。前半はビリー・ホリデイ集をリリースしたばかりのジャッキーをフィーチャー。後半にはラングレンが登場してキース・ジャレット「マイ・ソング」、スティング「フラジャイル」といった意外な選曲で自身の歌唱と共に楽しませてくれた。改めてBBBの実力の高さを認識。偶然、席が隣になったビデオアーツミュージック海老根氏とのビッグ・バンド談義も収穫であった。

2008年10月24日

取材とライヴで多忙な1日

 午後いちで山中千尋インタビュー@神田TUC。『一個人』のための取材である。山中とは過去に何度も取材で話を聞いていることと、今回は自薦するライヴ・アルバムというテーマだったので、良いインタビューになる予感があった。前回、『男の隠れ家』のためにインタビューした時に、現在のNYジャズ・シーンをわかりやすく解説してくれたからだ。今日も思い入れと共に愛聴盤を紹介。ライヴ会場に足を運ぶのが好きという、いちジャズ・ファンの素顔を見ることができた。
 六本木のコロムビア本社へ移動。アルトサックス奏者=矢野沙織の取材だ。新作『グルーミー・サンデイ』は矢野が小学生の時からあこがれだったビリー・ホリデイへのトリビュート。椎名林檎のアレンジャーでもある斎藤ネコが参画したことでも話題性十分だ。高校3年生の時にインタビューして以来、4年ぶりに話をした矢野は、ジャズ・エリアを超えた名声を獲得しても驕るところはなく、初対面と同様のフレッシュな感覚で応対してくれた。自分のポジションをわきまえた受け答えに、スマートなキャラクターを感じた。
 夜はがらりと変わって六本木でのクラブ・イベント。今日のノルウェー実験音楽@スーパーデラックス。ジャズではほとんど馴染みのないアーティスト3組なれど、会場には100名ほどが集まった。スーパー?のイベントなら面白い、との好集客なのだろうか。ラップトップ+PVのパフォーマンスは、グリーンランドの冬の海の風景映像と、自然音を利用したミニマル・サウンドによるヤナ・ヴァッツが印象的だった。 

2008年10月26日

スウェーデン大使館でのジャズ・イベント

 3日前に赤坂で観たボーヒュースレン・ビッグ・バンドのコンサート&レセプション@スウェーデン大使館・大使公邸。BBBは西ヨータランド県の文化政策の一環として2003年に建設されたヴァーラ・コンサートハウスに所属し、イェーテボリを中心に活動中。同ハウスは今年レーベルを立ち上げ、その第1弾『Swallow Songs』、第2弾『Letter To Billie』をリリースしている。今夜は後者のフィーチャリング・ヴォーカリストであるジャッキーが加わり、音楽監督のニルス・ラングレンが進行役を務めた。1時間のステージは、3日前の選曲をコンパクトにした趣だったが、ノンPAというのが何と言って魅力。100名超の招待客は至近距離でのビッグ・バンド・サウンドを堪能していた。ビュッフェ・ディナーに移って関係者と談笑。宴は予定を1時間オーバーし、21:00に閉会となった。

2008年10月27日

人気ミュージシャンにインタビュー取材

 サックス奏者のみならず、文筆家、音楽講師としても活躍する菊地成孔は、ジャズ・プロパーではない音楽ファンの目をジャズに向けさせた点で、大きな功績を果たしている。今夜は男性誌『一個人』のための取材で、新宿のイタリアン・レストランに向かった。21:30過ぎから始まった取材は、まずフォト・セッションから。カメラマンのリクエストに応えて色々なポーズをとる姿は、場慣れしている様子。その後インタビューに移る。ライヴ・アルバムのベスト10を選んでコメントをしてもらうという企画だ。事前にこちらの趣旨を伝えてあったので、サクサクと応えてくれたのが嬉しい。
 上位8枚がマイルス・デイヴィスになったのは、マイルス本を上梓したほどの研究家ゆえだが、興味深い視点で語ってくれた。ぼくもそうだけれど、ジャズ好きの多くに自分なりのマイルス論があることが、逆説的にマイルスの偉大さなのだと再認識した。取材終了後は、お疲れ様を兼ねて編集者、カメラマンと深夜まで痛飲。

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