Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー
セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。
話題の2世ヴォーカリストが登場
2009年07月04日
先月「ブルーノート70周年記念パーティ」で生パフォーマンスを観たチャイナ・モーゼス。母親がディー・ディー・ブリッジウォーターという血筋の良さは、先月国内リリースされたジャズ・デビュー作『フォー・ダイナ』で存分に発揮されていた。今夜は同作の重要メンバーでもあるピアニスト、ラファエル・ルモニエを含むカルテットを従えて、「ブルーノート東京」に登場した。ソウル/R&Bでのプロ・キャリアがあるということで、ステージ度胸は申し分なし。2週間前のパーティ@代官山でも感じたが、マイペースなマナーは“新人”の枠を超えている。同作がダイナ・ワシントンのトリビュート作ということもあって、曲間のMCではダイナにまつわるエピソードを披露。ジャズ・デビュー作なのにダイナをテーマにしたアルバム作りの必然性を、次第に観客に浸透させた点は特筆できる。個人的に注目していたのはドラマーのアン・パセオ。まだ20代の若手女性は、トリオのリーダー作をリリースした成長株。同作のレーベルLaborieのプロデューサーと先月ビジネス・ミーティングをした時に推薦されたこともあって、等身大の実力をこの目で確かめたかった。中盤にメンバー全員が楽屋に下がると、ドラム・ソロ・パートに。パセオはここぞとばかり、モーゼスのバッキングでは発揮できないスキルを全開に。その後メンバーが復帰すると、アップテンポの「ティーチ・ミー・トゥナイト」で最高潮を迎えた。今夜のセカンド・セットは、通例の演奏時間を超えた1時間半に及んだのであった。