Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー

セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。

カナダでも大人気の邦人ピアニスト

2009年06月27日

 VIJF2日目。プログラムをチェックすると、本JFはフリー・コンサートが非常に充実していることがわかる。今日は日中、事務局オススメの野外ライヴに出かけた。会場のギャスタウンはバンクーバー発祥の地で、現在は観光名所となっている。メインストリートの一角にステージが設置され、人々は石畳の道に座るか立ったままで鑑賞するスタイル。小型の折り畳み椅子を持参する人が結構いたあたりは、リピーターが多い証拠だろう。街のシンボルである蒸気時計に程近いサン・ステージのトップ・バッターはジャン=ピエール・ザネラ(as,ss)。ケベックを拠点に活動する中堅だ。2番目に登場したBrandi Disterheftは若手女性ベーシスト。デビュー作が2008年ジュノ・アワード最優秀アルバムに輝いており、カナダで現在注目株の1人である。トランペット&テナーを含むクインテットのリーダーとして、バンドをぐいぐいと牽引する力強い演奏が頼もしく映った。ゲストに女性ヴォーカリストが加わって華やいだ雰囲気に。事前にCDを聴いていない状態だったが、ヴォーカルもこなす才能を含めて、エスペランサ・スポルディングに続く人材に成長するかどうか、ウォッチしていきたい。終演後HMVに立ち寄って、店内をチェック。内装、ディスプレイ、値引きキャンペーンのすべてが東京のHMVとほとんど同じ雰囲気だ。世界的に統一されたマニュアルがあるのかもしれない。
 1度ホテルへ戻り、改めて夜の部が行われるPerformance Worksへ。上原ひろみを海外で観る機会が得られたのも、今回の大きな楽しみであった。ソニックブルームのパフォーマンスはカナダのファンに、どのような形で受け入れられるのだろうか。約500席というのは、現在の彼女のアーティスト・パワーを考えると、日本ではあり得ない小規模会場。それだけでも贅沢な空間だ。「朝日のようにさわやかに」で始まったプログラムは、昨年末の東京国際フォーラムA公演とほぼ同じ。しかし異なるのは上原のMCが英語で、しかしも慣れた調子だったことだ。当たり前の話だが、音楽活動の時間としては日本よりも多くを過ごす海外で、彼女は立派にやっている。何だか親心のようなものを感じてしまった。圧巻だったのはセカンド・セットの中盤。他のメンバーが下がると、オスカー・ピーターソンとのエピソードを披露し、ソロで「アイ・ガット・リズム」をプレイ。様々な角度から原メロディに変化をつけると、観客からはやんやの歓声が上がる。会場に集った老若男女のほとんどが知っているこの曲を、自由な発想で演奏する姿に誰もが驚き、感動していた。ぼくはその様子を同じ場所で体験して、別な意味を含めて感動したのであった。メンバーが戻ってからの「キャラヴァン」も強力。本編が終わると、アンコールを求めて観客は総立ちに。疲れを知らないかのように鍵盤に向かう上原ひろみ。観客の興奮度で言えば日本と同じ、あるいかそれ以上かもしれない。終わってみれば、休憩を入れて2時間40分の長丁場だった。終演後にバックステージを訪れ、上原さんと談笑。新加入のドラマーMauricio Zottarelliは前任者マーティン・バリホラのスタイルと重なる実力者で、バンドに違和感なく溶け込んでいた。

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