Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー

セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。

丸の内のジャズ・クラブに初出演

2009年03月27日

 昨年新作『リトル・ガーデン』をリリースした米国出身の歌手エリン・ボーディーが、「Cotton Club」に初登場。3日間連続講演の2日目、ファースト・セットを観た。多くのジャズ・ヴォーカリストが好むスタンダードと、ビートルズ、スティーヴィー・ワンダー等のポップスをレパートリーとする、新世代共通の嗜好を持つ点で、ボーディーはやはりノラ・ジョーンズ以降の流れに位置する女性歌手と言えるだろう。今夜はトリオをバックに、これまでアルバムを通じて知っていた彼女の世界を日本のファンに披露するセッティングだ。次々と曲が進む中、曲紹介のMCで耳に止まったのが「ホワイ・ドゥ・アイ・ラヴ・ユー」。器楽ではマイルス・デイヴィス、シャーリー・パーカーらがカヴァーしているこのガーシュイン兄弟作曲を、ボーディーはマーガレット・ホワイティング歌唱ヴァージョンで知ったという。ラジオから流れてきたのか、たまたま自宅にレコードがあったのか、そのあたりは定かではないが、いずれにしてもジャズ・ヴォーカルのマニアックなアイテムに親しんでいたのが意外だ。母親がノルウェー人で、子供の頃はよく同国の食事が食卓に並んだという。あるいはその点にボーディーの独自性の基礎が隠されているのかもしれない。タイトル未定の新曲やボブ・ディランのナンバーも披露。アンコールではジャズ・ミュージシャンの間で益々人気上昇中の「エスターテ」を、作曲者と同じイタリア語で歌唱。優しさに包まれたステージであった。
 終演後、六本木に移動。「ビルボードライヴ東京」でスティーヴン・ビショップ公演を観る。以下に、ミュージック・ペンクラブ・ジャパンのHPで発表したライヴ・レポートを転載しておく。
 昨年に引き続き、“ミスターAOR”が来日した。最新作のブラジル・プロジェクト『ロマンス・イン・リオ』で、このジャンルを代表するヴェテランの魅力を改めて印象付けたビッシュ。当夜はキーボード&ヴォーカルのジム・ウィルソンとの2人だけのステージで、これまでのキャリアをシンプルなセッティングで凝縮する形になった。50代後半になっても、70年代にファンを魅了したスウィート・ヴォイスは変わらず。映画『トッツィー』のために書いた「オール・オブ・マイ・ライフ」や、オスカー・ノミネート曲「セパレート・ライヴス」等を披露。新曲「ヴェイカント」を含め、聴き進めるにしたがって、ビッシュには哀しい曲が多いのだなと、今さらのように実感した。でも本人は陽気なキャラターで、ビリー・ホリデイの歌真似は思わぬ収穫。ラストは「オン・アンド・オン」「雨の日の恋」の2大ヒット曲で締め、長年のファンも大満足であった。

Editorial Office

エディトリアル・オフィスの仕事を紹介します。

Work's Diary

エディトリアルスタッフの取材ダイアリーを紹介します。

Kimono Gallery

染物・着物に関する情報をお伝えしています。

Jazz Diary

音楽評論家・杉田宏樹のライブダイアリーです。

Hachi Diary

セブンオークスのボーダーコリー「ハチ」のフォトダイアリーです。

セブンオークスへのお問い合わせを受け付けております。
メール:hachi@7oaks.co.jp
住所:〒134-0081 東京都江戸川区北葛西2-10-8
Phone:03-3675-8390
Fax:03-3675-8380