Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー
セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。
フィンランドの人気バンドのリリース記念ライヴ
2009年01月15日
2005年にデビュー作『チェイシン・ザ・ジャズ・ゴーン・バイ』をリリースするや大反響を巻き起こし、翌2006年2月の「ブルーノート東京」のワン・デイ公演は立ち見の盛況となったファイヴ・コーナーズ・クインテット。ヨーロピアン・ニュー・ジャズ?クラブ・ジャズの若手旗手に名乗りを上げた格好となり、ジャンル人気の底上げに多大な貢献を果たしたことは改めて評価されていい。今夜は東京ミッドタウンの「ビルボードライヴ東京」での再来日公演を観た。座席数はBNTと近い感じだが、造りの違いはFCQのメンバーにとっても新鮮だったに違いない。新作となる第2弾『ホット・コーナー』は前作の成功例要素を踏襲しながら、新味も盛り込んだ仕上がりだ。アルバムはヴォーカル、ヴィブラフォン、ストリングスを盛り込んだカラフルなプロダクションだが、ライヴはあくまでFCQのコア・メンバーだけのステージ。つまり彼らの地金で勝負し、魅力をアピールしようとのセッティングだ。ハードバピッシュ&ファンキーな2曲が終わったところで、ドラムスのテッポ・マキネンがアナウンスした。「ぼくたちは“フィンランドのジャズ・メッセンジャーズ”です」。とてもわかりやすいキャッチ・フレーズだが、しかしそれが彼らの音楽性のすべてを物語っているわけではない。つまりライヴではシンプルに60年代主流派へのトリビュートをメインにすることによって、ストレートなメッセージを伝えるとの企図である。300近い座席がほぼ満席になったことで、3年前と変わらない人気を保っていることを証明したFCQは、若い音楽ファンにジャズの魅力を伝えてくれた点で、再び大きな仕事を成し遂げてくれた。終演後には旧知のトランペッターであるユッカ・エスコラと、バック・ステージで談笑。