Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー

セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。

日本が誇るベストセラー・アーティストの年末ライヴ

2008年12月28日

 本年度ジャズ部門のベスト・セリング・アーティストは上原ひろみに決まった。これまでオリジナル曲1本で勝負してきたところ、初めて有名曲に挑んだ『ビヨンド・スタンダード』と、日本武道館公演を成功させたチック・コリアとの『デュエット』が、際立った売れ行きを示したのだ。これはジャズの枠を超えて、音楽ファンからの支持を集めた結果にほかならない。
 今夜は昨年に続いて「東京国際フォーラムホールA」で行われた、ヒロミズ・ソニックブルームのツアー最終日を観た。ファースト・セットは新作からスタンダードを中心とした構成。本人も記していたが、英語題「スキヤキ」で全米No.1を獲得した坂本九の名曲を、原題にこだわってクレジットした「上を向いて歩こう」や、ジェフ・ベックのギター・インストゥルメント傑作からの「レッド・ブーツ」は、世界を舞台に活動することが自然体である上原のスタンスを実証するパフォーマンスであった。バンド・コンビネーションがすっかり熟成しているだけあって、セカンド・セットで即興的に繰り出した「チキン」(ジャコ・パストリアスで有名)は和やかなムードが伝わってきた。アンコールに応えて再登場した上原は、「年末のお忙しい時にわざわざお運びくださいまして」と感謝の言葉を述べながら、今まで見たことがないほど長く深々と頭を下げた。邦人ジャズ・ミュージシャンのトップを極め、世界的に活躍する人気ミュージシャンになった今も、感謝の念と謙虚な気持ちを忘れない姿勢は、本当に素晴らしい。ピアノ独奏の「プレイス・トゥ・ビー」に続き、他のメンバーも加わって「XYZ」を演奏。これで終演という雰囲気になって客電も点いたのだが、拍手が鳴り止まない。果たせるかな、メンバーが再びステージに姿を現した。そして始まったのが「カンフー・ワールド・チャンピオン」。この曲が聴けなければ終わらないとばかり、興奮したファンがステージ前に押し寄せて通路もいっぱい。有楽町がフジ・ロック状態になって、客席で観ている自分も興奮した。ジャズ・プロパーではない若者を引き付ける上原の力に感嘆すると同時に、ジャズに興味を持ったこれらのファンを誘導する役割が自分にあると痛感したのである。終演後バック・ステージを訪れて、1年ぶりにひろみちゃんと談笑。さらなる活躍を確信したステージであった。
 その後お茶の水に移動し、「NARU」で西山瞳トリオの最終セットを鑑賞。東京トリオと呼んでいい佐藤泰彦(b)+池長一美(ds)とのコンビネーションも上々で、魅力的な新曲共々、今後の西山の新展開を予感させるパフォーマンスとなった。

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