Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー
セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。
クラシック界で話題のピアニストを初鑑賞
2008年12月05日
1970年トルコのアンカラ生まれだから、ブラッド・メルドーとは同年。同じピアニストではあるが、もちろん両者にそれ以外の共通点はほとんどない。多くのアルバムや来日公演で、日本でもファンをつかんでいるファジル・サイの名前は、今回初めて知った。「ファジル・サイ・プロジェクト in Tokyo 2008」と題して、すみだトリフォニーホールで3日連続の公演が企画されたのは、今サイが旬のミュージシャンだからこそ、なのだろう。デュオ・ライヴの第2夜に足を運んだ。発表されていたのはブルハン・オチャル(per)とのデュオだったが、急遽第3夜に出演予定のヴァイオリン奏者パトリツィア・コパチンスカヤの参加が決定。期待が膨らんだ。なるほどサイのスキルの高さは、すぐに理解できた。そこにタブラの名手が加わると、即興色が増してスリリングな場面が現出する。ジョー・ザビヌル、クロノス・カルテット、スティングといったジャズつながりのミュージシャンとの共演歴があるオチャルが、これまたサイに劣らぬテクニシャン。高速テンポを持続してタンバリンを操る指の動きは、まさに神業だ。クラシックを逸脱し、現代音楽的なスキルも披露したコパチンスカヤの共演が、プログラムの色合いを豊かにしたことは間違いない。ジャズ・ファンにも聴きどころの多いステージであった。