Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー
セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。
結成20年を迎えた日米トリオ
2008年11月08日
邦人ピアニストが欧米のベーシスト&ドラマーとレコーディングやライヴを行うトリオは、今や日常的な光景になっている。しかし2リズムが固定メンバーで継続的に活動する例はさほど多くはない。ましてやそれが20年もたゆまなく続いているのは、前例のない偉業と言っていい。今夜は結成20周年を記念した山下洋輔ニューヨーク・トリオ@ヤクルトホール。3月にリリースした『トリプル・キャッツ』収録曲を中心とするステージとなった。繰り返すが山下NY3が偉いのは、日本在住の山下が2人の黒人ニューヨーカーと定期的にアルバム制作とツアーを重ね、日本ばかりでなく欧米にも積極的に進出したこと。つまり国内向けのプロジェクトではなく、本場NYでもその存在をアピールしてきたわけで、そのような姿勢が日本での所属レコード会社が移ってもトリオ運営を維持できた大きな理由なのだと思う。最新作には収録されていない曲では、チャールズ・ロイド・カルテット在籍時の1966年にセシル・マクビーが書いた「クロース・トゥ・ユー・アゲイン」が収穫。山下がMCで紹介したように、確かにユニークな曲だ。ラスト・ナンバーに選ばれたのは山下の当たり曲「ボレロ」。NY“イリディウム”公演で友人の舞踏家、麿赤児が白塗り姿で踊ってくれた時のハチャメチャなエピソードが演奏にオーバーラップして、面白さが増した。アンコールはいつもだと「クルディッシュ・ダンス」となるのだが、今夜は「マイ・フェイヴァリット・シングス」だった。ぼくの記憶だと山下NY3がこのホールに出演したのは初めて。だが休憩をはさんだ2部ステージの2時間が、実際よりも早く過ぎた感覚だったのは、過去の公演と同様であった。