Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー
セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。
亡き天才ドラマーへのトリビュート・バンド
2008年12月15日
60年代にマイルス・デイヴィス・クインテットでその天才性を全世界に知らしめたトニー・ウイリアムスは、69年にライフタイムを結成し、ジャズとロックを融合した重量級のサウンドによって、シーンに大きな反響を巻き起こした。97年に51歳の若さで他界したトニーの輝かしいキャリアであるライフタイムに捧げた特別プロジェクトが「ブルーノート東京」に出演。ライフタイムのメンバーだった英国人で、マイケル・マントラーらジャズ人脈も持つジャック・ブルース(b,vo)、プロジェクトの提唱者でリヴィング・カラーのメンバーとして名を上げたヴァーノン・リード(b)、メデスキ、マーティン&ウッドのメンバーで近年ジョン・スコフィールドとのコラボレーションが話題のジョン・メデスキ(key)、トニーのファンでドラマーとしても同じ流派に属するシンディ・ブラックマン。一見つながりがわかりにくい4人だが、思いは同じということで、濃密な音楽空間を現出した。ヴォーカルも披露したブルースがヴェテランらしい存在感を発揮。メデスキの技ありのキーボード・プレイも特筆したい。おそらく2度と実現しないであろうスペシャル・プロジェクトのステージは、ぼくが知る限りBNTでは最長の1時間40分に及んだのだった。