Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー
セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。
自己のポジションを確立した邦人女性ジャズ・ミュージシャン
2008年12月17日
藤井郷子に関しては、この日記でもたびたび触れてきた。アメリカでの研鑽生活を終えて帰国後のこの10年間を振り返ると、誰も成しえなかった道を切り開いてきた闘いの連続だったと言えよう。既存のレコード会社との関係も作りながら、自主制作でのアルバム・リリースも積極的に進めるスタンスは、常識破りの発想が結局は意欲さえあれば可能なモデルケースを構築する形になったのである。今夜は独Enjaにもレコーディングしている日米混成トリオ+1によるお馴染みのカルテットが、新宿ピットインに出演した。数日前に藤井さんから受けた連絡によれば、ベースのマーク・ドレッサーが家族に不幸があったために出演をキャンセル。代わりに藤井オーケストラのメンバーでもあるケリー・チュルコ(g)が穴を埋めた。楽器編成的には初めてということと、チュルコの好演によって興味深いシーンを体験できたのが収穫。ピットインは年初にピアノ弦を張り替えて、調律師による特別なピアノ・メンテナンスが施されたこともあり、藤井のピアノに関しては過去最高の鳴りを体感した。