Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー

セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。

JazzNorway In A Nutshell 2009 二日目

2009年05月22日

 午前中に電車でヴォスへ北上。ナットシェル・コミッティーが用意した今回のリクリエーションは、ラフティングだ。初めて経験した川下りは、想像以上にハードなスポーツであった。昼食後パーク・ホテル・ヴォッセヴァンゲン内に併設するイヴェント・スペースで、我々ゲストのために準備されたシゼル・アンドレセン(vo)&ホーコン・コーンスタ(ts)・デュオを観る。それぞれのライヴは別の形で体験しているが、2人の共演を観るのは初めて。まずコーンスタがアタッチメントを使用して、ディレイとオーヴァーダブによるサウンドを作り、そこにアンドレセンの歌詞付きヴォーカルが加わる。息を吹き込まずに音を発するコーンスタの奏法に、前日のアルヴェ・ヘンリクセンとの共通点を発見。圧巻だったのはアンドレセンの独唱だ。マイクに電気処理などをせず、声の出し方だけで多彩な効果をあげており、相当のテクニックとスキルがなければできない表現力の豊かさがまさに驚異的。近年ノルウェーからは次々と女性シンガーが登場しているが、広くジャズ・ヴォーカリストのカテゴリーではやはりアンドレセンが第一人者であることを再認識した。
 21:00からのNattjazzはボボ・ステンソン・トリオでスタート。昨年リリースされた新作『カンタンド』のレコーディング・メンバーだ。ステンソン主導のインタープレイ曲を皮切りに、3人が絡み合う場面ではキース・ジャレットのヨーロピアン・カルテットを想起させるメロディが飛び出したり、トリオの即興で進みながら全員キメのユニゾンでフィニッシュするなど、生のステージに接したからこそわかる発見があった。長年のパートナーであるアンダーシュ・ヨルミンとステンソンがアイ・コンタクトを交わしたり、それぞれが自由なスタンスでトリオに貢献している様子を目の当たりにしたのも収穫。3年前にレギュラー・ドラマーとなったヨン・フェルトは、シンバルをスティックでゴシゴシ擦ったり、演奏中に声を出すなど、トリオに新風を吹き込んでいた。ステンソンが時にアグレッシヴなプレイを見せたのは、フェルトの刺激を受けた反応とも言えよう。終演後ステンソンと談笑。前回ECM関連のイヴェントで来日して以来、かなりのご無沙汰になっている。本人も再来日に意欲的だった。
 次のステージに登場したのはバンガロー。2003年にベーシストMagne Thormodsaeterが結成した2管クインテットだ。マイルス、コルトレーン、マッコイ・タイナーから影響を受けた音楽性が特徴というだけあって、60年代のジャズを想起させるモーダルなサウンドを繰り広げた。その後急いで別の会場へ移動し、オーラ・クヴァーンバーグ・トリオ+1を観る。今春Jazzland第2弾『フォーク』をリリースしたクヴァーンバーグ(1981?)は、現在のノルウェー・ジャズ・シーンでは数少ないヴァイオリン奏者。4人編成のバンド・サウンドは、リーダーのルーツであるフォーク・ミュージックをベースに、部分的にウッド・ベースのスタイナール・ラークネス(エフェクター使用)を含むエレクトリックの要素も導入し、即興性を重視した音作りはなかなかスリリングだった。2枚のアルバムは日本未発売のためこちらではほとんど無名だが、生演奏を体感して要注目の若手ノルウェー人だと確信した。

090522-1.jpg
090522-2.jpg
090522-3.jpg

Editorial Office

エディトリアル・オフィスの仕事を紹介します。

Work's Diary

エディトリアルスタッフの取材ダイアリーを紹介します。

Kimono Gallery

染物・着物に関する情報をお伝えしています。

Jazz Diary

音楽評論家・杉田宏樹のライブダイアリーです。

Hachi Diary

セブンオークスのボーダーコリー「ハチ」のフォトダイアリーです。

セブンオークスへのお問い合わせを受け付けております。
メール:hachi@7oaks.co.jp
住所:〒134-0081 東京都江戸川区北葛西2-10-8
Phone:03-3675-8390
Fax:03-3675-8380