Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー

セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。

JazzNorway In A Nutshell 2009 三日目

2009年05月23日

 ホテルで朝食を済ませてほどなく、ナットシェルのゲスト一行は小型ボートに乗船。ランチ・イヴェントのため30分の船旅ののち、小島の「Cornelius pa Holmen」に到着した。我々を待っていたのは、レストランのシェフによる「クラブ・ショー」だった。クラブとは貝・甲殻類のことで、新鮮な食材をその場でさばきながら客にふるまう内容。このシェフの口上が役者かお笑いタレントばりの上手さで、たちまち引き込まれてしまった。ホタテの殻を開いた時、「この周りの紐の部分は普通食べないんだけれど、日本人は食べるんだよ」と発言。直後にその紐をぼくは美味しくいただいて拍手喝采。レストランに移動すると、我々のための特別ライヴが始まった。ECMからリーダー作をリリースしたばかりのニルス・エクラン(1961?)のソロ・パフォーマンスだ。過去に2枚のリーダー作をリリースしており、ECM作はエクランを世界的にアピールするための満を持したアルバムなのだろう。ナットシェル・スタッフのそんな思惑が、この昼下がりのライヴに結実。最新作ではハルデンダンゲル・フィドル、ヴァイオリン、ヴィオラ・ダモーレの3本を使用したが、この時はさらに1本を加えて、曲ごとに楽器の由来を解説しながら、玄妙でニュアンス豊かな弦楽器を響かせてくれた。直後に海老とカニが盛りだくさんのランチを堪能。
 夜のフェスティヴァル、1組目はユニークなユニットであった。プラタグラフというグループの取材を選んだ決め手は、ヨン・バルケだった。90年代のオスロ13から昨年の取材時に観たシワンまで、ハイブリッドなサウンドを常に追求してきたシリアスな音楽家だ。ところが今回は様相が異なる。事前に関係者から仕入れた情報では、2人のスタンダップコメディアンによるシャベリを中心としたステージだとのこと。一体何が飛び出すのか、との疑念を抱きつつ入場。蓋を開けると、数秒に1回の割合で笑いが起きるパフォーアンス。そこではバルケが黙々とパーカッションを演奏している。2005年リリースのバタグラフ/ヨン・バルケ名義作『ステイトメンツ』と楽器編成的には共通するのだが、このステージはもちろん様相が異なる。何よりバルケがこのようなセッティングのステージを務めていることが驚きだし、おそらくバルケのキャリアを知っているであろう現地の観客がこれはこれとして演奏を楽しんでいる様子も衝撃であった。バルケにとっては遊び心満点の仕事だったのかもしれない。

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