Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー

セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。

サックスの巨匠の強烈なメッセージ

2009年06月29日

 通称coastaljazzことVIJFの4日目。今日は一点豪華主義ということで、夜の部のソニー・ロリンズ6を観る。会場のオーフィアム劇場は1930年代に建設されたホールで、クラシカルかつ重厚な雰囲気。現在はバンクーバー交響楽団の本拠地でもある館内には、カナダの音楽芸術界にその名を残す著名人のポートレイトが飾られていて、由緒正しい格式を感じさせる。ロリンズは日本でラスト・コンサートと銘打った公演を行ったわけだが、その後も活発にライヴ活動を続けているテナー・サックスの巨匠だ。ステージにロリンズが登場すると、それだけで観客はスタンディング・オヴェーション。背中が丸くなり、足取りが重そうな御大の姿を見て、一瞬不安がよぎった。オープニングは意外にもバラード・スタンダードの「マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ」。全盛期に比べると、さすがにテナーの鳴りには衰えが浮かんでいる。近年の定番レパートリーである「ゼイ・セイ・ザット・フォーリング・イン・ラヴ・イズ・ワンダフル」やカリプソなどを演奏。すると次第にテナーのフレーズが逞しさを取り戻し、調子を上げてきたではないか。曲によってクリフトン・アンダーソン(tb)、ボビー・ブルーム(g)ら各メンバーのソロもフィーチャーされるのだが、セクステットの図式はロリンズ+バックの5人であって、その傾向はプログラムが進むにしたがって色濃くなってゆく。今も毎日3時間の練習を欠かさないロリンズが、観客の熱狂的な声援と拍手を受けることによって、本来の姿を示すプロセスを目の当たりにして、78歳の大ヴェテランの底力を体感させられた。ラストに名盤『サキソフォン・コロッサス』収録曲「ストロード・ロード」を演奏してくれたのも収穫。吹き出したら止まらないロリンズのスタイルは、いくつになっても変えるつもりがないということなのだろう。90分以内に収まるステージかと思いきや、この時点ですでにそれを超えている。アンコールに応えて再登場したロリンズが選んだ曲は、「テナー・マッドネス」。最後の最後にバップ魂を見せてくれたシーンに、再び感動が押し寄せた。現役では数少ないジャズ・ジャイアンツの1人であるロリンズが、これでもかというほど持てるエネルギーを全力投球する。すべてが終わると、2時間近い自分自身のパフォーマンスに満足したロリンズは、ガッツ・ポーズを繰り返しながらステージを後にした。

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