Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー

セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。

カナディアン・アーティストとオールスターズ

2009年06月28日

 VIJF3日目。今日も昼間はギャスタウンでのフリー・コンサートからスタート。会場のウォーター通りは東西500mほどの舗道で、通り沿いには土産物店やレストランが軒を連ねる。フェスティヴァル期間はエリアの両端にステージを設置し、その間を露天やグッズ販売のテントが並び、大道芸人が人々を楽しませる。昼の部最初のアクトはサン・ステージでのヤニック・リュー。ケベックを拠点に活動するテナー&ソプラノ奏者だ。ギター、エレクトリックベース、ドラムスとのカルテット“スペクトラム”の演奏は、過去のいくつかの著名バンドを想起させるものだった。リーダーがサックスでピアノレス/ギター入りからのマイク・スターン=ボブ・バーグ、エレベが活躍する点でのウエザー・リポート、ギタリストのフルアコ使用による初期パット・メセニー・グループ。たぶんここに集った大半の観客は、そんなことを意識していない。それが生活に密着したジャズ・フェスの姿なのだと思う。次に登場したのはルイ・マリオ・オチョア(g,vo)のラテン・プロジェクト。その後、場所を移動して、通りの東端に設置されたメープル・ツリー・スクエアでデリリウムを観る。ミッコ・イナネン(as)とキャスパー・トランバーグ(tp)が中心のカルテットは、フィンランドとデンマークの合体ユニット。クールでシャープなアルトと、ドライ&エネルギッシュなトランペットのホーンズが、カナダ西海岸の野外ステージで共鳴する興趣を体感した。2曲を聴いたところで慌ただしく次へ移動。メロディ・ディアチュン@CBCラジオ・カナダ。ラジオ局の番組収録を兼ねたスタジオ・ライヴだった。このシンガーは以前CDを聴いていたのだが、さほど強い印象を抱いていなかった。今日は生で聴いたらどうか、という期待感で足を運んだ。ジョニ・ミッチェル、レディオヘッドといったポップ・ナンバーも取り入れたプログラムは、スタンダード中心のシンガーとは一線を画している姿勢の表れ。サックスに輸入盤市場で注目されるコーリー・ウエルスが参加。ガッツプロダクションから届いていたCDが、カナダの最新情報と重なることを改めて実感した。
 19:30からは一昨日のデヴィッド・サンボーンと同じザ・センターで。オープニング・アクトは現在のカナダ・ジャズ・シーン若手の最注目株というオクトーバー・トリオ+ブラッド・ターナー(tp,flh)。ターナーはトリオの最新作のプロデューサーを務めており、両者を含めて今回のフェスにおけるカナダ・サイドの超オススメであることは、事前に知っていた。終始クールでシリアスな約50分間のステージは、観客の静かで熱い拍手を呼び起こした。メイン・アクトのモンタレー・カルテットは最年長のデイヴ・ホランド(b)を中心に、クリス・ポッター(ts)+ゴンサロ・ルバルカバ(p)+エリック・ハーランド(ds)という編成。2007年9月録音のライヴ盤がこちらでリリースされたばかりのタイミングでの、ホール・コンサートである。聴く前から凄いとはわかっていたが、このバンドの協調関係は本当にすさまじい。全員にスポットが当たったことはもちろん、フロントを務めたポッターの素晴らしさを改めて浮き彫りにしたのだ。その演奏を聴きながら日加(日米、日欧にも適合可能可能だろう)の温度差を感じずにはいられなかった。たぶんポッターは故マイケル・ブレッカーのポジションに一番近く、それを本人も意識しながら日々の仕事も全力でこなしている。ポッターに対する世界的な高評価に日本が追い付くのは、いつになるだろうか。来日予定は不明なだけに、このタイミングで彼らのライヴを体験できたことに感謝したい。

090628-1.JPG
090628-2.JPG
090628-3.JPG

Editorial Office

エディトリアル・オフィスの仕事を紹介します。

Work's Diary

エディトリアルスタッフの取材ダイアリーを紹介します。

Kimono Gallery

染物・着物に関する情報をお伝えしています。

Jazz Diary

音楽評論家・杉田宏樹のライブダイアリーです。

Hachi Diary

セブンオークスのボーダーコリー「ハチ」のフォトダイアリーです。

セブンオークスへのお問い合わせを受け付けております。
メール:hachi@7oaks.co.jp
住所:〒134-0081 東京都江戸川区北葛西2-10-8
Phone:03-3675-8390
Fax:03-3675-8380