Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイリー

2012年05月18日  アジアの架け橋となるイヴェント

2012年05月18日

日本のジャズ史をさかのぼると、戦前からフィリピンとの交流が始まり、現在に至るまで脈々と続いている。今夜は第1回となる《東京?マニラ・ジャズ&アーツ・フェスティヴァル》が、渋谷さくらホールで開催された。実績・実力共、日本在住の女性ヴォーカリストの代表格であるフィリピン出身のチャリートが、長年の夢を実現させたのである。フィリピン共和国大使を迎えた客席は、同国人の祝賀会とも言える様相を呈して、新鮮な風景となった。オープニング・アクトに青山学院大学ロイヤル・サウンズ・ジャズ・オーケストラを起用したのは、渋谷つながりだったのかもしれないが、海外のジャズ祭を踏まえれば好ましい選択。ジャコ・パストリアス・ワード・オブ・マウス・ビッグバンドの「ソウル・イントロ?ザ・チキン」の選曲も秀逸で、トロンボーン全員のみならずエレクトリック・ベースも女性だったのが、昨今の大学ビッグバンド事情を反映していた。初めて観たフィリピン人ミュージシャンでは、柔らかい女声が好感のシティと、ヴェテラン男性歌手のモン・デヴィッドが収穫。デヴィッドは「ネイチャー・ボーイ」と「フットプリンツ」のメドレーで歌手としての高いスキルを示し、スティングの「フラジャイル」でヴォイス・パーカッションを盛り込むなど芸達者ぶりをアピールした。終盤には日野皓正がエネルギッシュなトランペットで、本祭に貢献。ラストは出演者全員が登場し、「A列車で行こう」でステージのハイライトを現出した。
 フィナーレの途中で会場を後にし、新宿へ移動。ラーゲ・ルンド4@ピットインのセカンド・セットを観た。会場は立ち見も出る満員の盛況。ノルウェー出身で米国に移住した30代半ばのルンドは、モンク・コンペで優勝し、日本制作の2タイトルで名前を広めた。そのギター・スタイルはコンテンポラリーなセンスと、生真面目さが同居したもの。客層を見ると、ギター・プレイヤーでもあるような若い男性が多い。このあたりはカート・ローゼンウィンケルのファン層と重なっているのだろう。選曲は「ダーン・ザット・ドリーム」ほか。アンコールではアーロン・パークスとのデュオで「風と共に去りぬ」を演奏した。
■ラーゲ・ルンド(g) アーロン・パークス(p) ベン・ストリート(b) クレイグ・ウェインリブ(ds) 

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