Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー
セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。
カメルーン出身の人気ベーシスト
2008年10月19日
リチャード・ボナというベーシストをぼくたちが知るプロセスを振り返ってみると、本人にとっては日本での理想的なファン獲得の図式が反映されたものだったと言えるだろう。数多くの無名のアフリカンを紹介してきた渡辺貞夫が自分のバンドに起用し、パット・メセニーが抜擢。近年はマイク・スターン・バンドでの来日公演でも、個性を輝かせている。今夜は6人編成のボナ・バンドを「ブルーノート東京」で観た。5弦ベースを主体とした演奏にあって、「スリー・ヴューズ・オブ・ア・シークレット」では唯一の4弦ベースを披露。ジャコ・パストリアスへの思慕を表明してくれた。それにしてもボナが観客の笑いを誘うほど日本語が堪能なことが驚き。ピーボ・ブライソンに匹敵するかもしれない。アンコールではヴォーカル多重録音をその場でループ状にし、リアルタイムでユニゾン・コーラスを作る技で、観客を楽しませてくれた。過去に観たボナのステージで、最もエンタテインメント性の高い内容であった。