Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー
セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。
ヨーロッパ在住の女性デュオ
2008年10月18日
海外に拠点を置いて音楽活動を行っている邦人女性ジャズ・ミュージシャンは、年々顕著になっている。ピアニストではアメリカで世界最高のビッグ・バンドを作り上げた秋吉敏子が説明不用のパイオニア。世代をさらに下ったヨーロッパでの先駆的存在が高瀬アキだ。ドイツ、ベルリンを本拠地とする活動は、コンスタントなレコーディングや帰国公演を通じて、独自の道を切り開いてきたことを日本のジャズ・ファンに伝えている。今夜は若手女性サックス奏者ジルケ・エバーハルドとのデュオ公演を、新宿「ピットイン」で観た。2人は『オーネット・コールマン・アンソロジー』をリリースしており、オーネット初期楽曲をレパートリーとするユニット・コンセプトに興味をひかれた。作曲家=オーネットのジャズ・ミュージシャンにおける人気は改めて述べるまでもないほど高く、そんな中で彼女たちがどのようなオリジナリティを発揮してくれるのかに注目した。
アルトサックス、バスクラ、クラリネットを操るエバーハルドは、「ターンアラウンド」「ブロードウェイ・ブルース」「ロンリー・ウーマン」等の名曲で、そのスキルを全開に。高瀬との息の合った演奏は、数多いオーネット・カバーにあって独自性をアピールするものだった。アンコール曲「エンジェル・ヴォイス」のカリプソ演奏まで、ピアニスト高瀬アキに新しい一面を感じた点も指摘しておきたい。