Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー
セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。
ジャズ・トランペット界の性格俳優がクラブ出演
2008年09月17日
トム・ハレル@有楽町Cotton Club。大学時代に神経衰弱を患って以来、肉体的なハンディキャップを負いながら、第一線で活躍してきたのは、トランペッターとしての優れたスキルばかりでなく、人間として同じジャズメンを惹き付ける何かを持っているからだと想像できる。今夜のクインテットのメンバーは、ハレルを除く全員が黒人。敢えてそうした人選なのか、たまたまそうなったのかはわからないが、少なくともハレルが新世代ニュ?ヨーカーに目配りをして自己の音楽を作っていることは間違いない。モーダルなオープニング・ナンバーや60年代マイルス・デイヴィス・クインテットを想起させるナンバーは、ハレルがモダン・ジャズの伝統にも目配りをしている証と聴いた。
ハレルは終始、直立不動で、出番のない時間はうつむいていたが、ひとたびトランペットを吹き始めると別人のようにミュージシャン・モードにチェンジするのが凄い。ベースとのデュオで演じた「ボディ&ソウル」では、フリューゲルホーンを使用し、バラード・アーティストリーの真髄を聴かせてくれた。アンコールでは「ライク・サムワン・イン・ラヴ」を演奏。ハレルのマナーを遵守したバンド・メンバーも好ましく感じたステージであった。