Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー
セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。
東京JAZZ第2日
2008年08月30日
13:00開演の昼の部は「GREAT AMERICAN STANDARDS」をテーマに、4組が出演。人気急上昇の邦人アカペラ・ユニット=ジャミン・ゼブが露払い役を演じた後、上原ひろみ&熊谷和徳が登場。ピアノ&タップダンスだけのステージは、他のジャズ・タップダンサーが活躍していることを考えると新奇ではないものの、演者がひろみちゃんとなれば何か新しい部分を期待してしまう。両者の共演は即興的な要素を盛り込みながら、ジョージ・ガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」がたびたび顔を出す流れを作り、結果的にこの名曲が全体の通奏低音になったことを明らかにした。その中でチャーリー・パーカーの「ドナ・リー」やスティーヴィー・ワンダー『キー・オブ・ライフ』収録曲「ラヴズ・イン・ニード・オブ・ラヴ・トゥデイ」を盛り込んで、パフォーマンスを構成した点に、ひろみちゃんの音楽家としての奥深さを知ったのが収穫。ザ・グレイト・ジャズ・トリオにデヴィッド・サンボーンが2曲加わったステージは、初共演ならではの興趣がフェスティヴァルらしさを醸し出した。昼の部のハイライトになったのがハンク・ジョーンズ&ロン・カーターwith NHK交響楽団。ペイトン・クロスリー(ds)が加わり、オルジナルGJT&現カーター・グループが重なるトリオとオーケストラの共演、という図式となった。出てきた音楽はスタンダード・ナンバーを中心としながら、ガーシュイン・メドレーを配する練られたもの。ドン・セベスキーの編曲が光った。60年代にCBSのスタッフ・ミュージシャンを務めたハンクにとって、日本のステージでは珍しいセットだったかもしれないが、自分の経験では余裕でこなせる仕事だったに違いない。
夜の部は「DRAMATIC NIGHT」と題して3組が出演。1番手の上原ひろみ?ヒロミズ・ソニック・ブルームは新作『ビヨンド・スタンダード』からのナンバーを日本でライヴ初披露。本フェスティヴァルで欠かせないアーティストであることを実証した。リシャール・ガリアーノ&ザ・タンガリア・カルテットは、ヴァイオリン奏者が欠場のアクシデントに見舞われ、急遽寺井尚子がピンチ・ヒッターを務めた。驚いた。譜面を確認しながらの演奏だったが、初見的なぎこちなさがないどころか、過去何度もガリアーノと共演を重ねていたようなスムーズさで、立派にステージを完遂。これまで寺井が実践してきた音楽が、本場のガリアーノと自然に溶け合って、感動を呼んだのであった。