Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー
セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。
あの感動を再び!
2008年07月03日
第24回<東京の夏>音楽祭2008のオープニング・アクトとしてエグベルト・ジスモンチが、オーケストラ・コンサートを行うという告知がされた時、ぼくは飛び上がるほど喜んだ。期待以上の感動を味わった昨年のソロ・コンサートの興奮が冷めやらぬタイミングでの、再来日である。同音楽祭の今回のテーマが「森の響き・砂漠の声」であることを踏まえると、ブラジルに生まれ、アマゾンでの体験を通じて独自の音楽性を獲得したジスモンチは、初日を飾るにはうってつけのアーティストと言えるだろう。ファースト・セットはオーケストラのみの「Strawa no Sertao」からスタート。続いてジスモンチが登場すると、ピアノ独奏でたちまち自己の世界を現出する。オーケストラが加わったサウンドは、自然と大地が目の前に広がるようなもの。聴き手の視覚的想像力を刺激して止まないジスモンチの世界に、どんどん引き込まれる。ピアノを奏でるリズミカルなジスモンチ節とダイナミックなオーケストラが共鳴した「Forrobodo」に感動。セカンド・セットはギター独奏で、もう1つのジスモンチ・ワールドを披露。ステージ右側と左側のミュージシャンがコントラストを描くストリングス・オーケストラ曲「One Movement of Sertoes Veredas Suite」、弦楽器奏者全員のピチカートがユニークな「Lundu」、ジスモンチの多彩なギター・テクニックが光る「Danca dos Escravos」。ここまででも十分に感動的なステージには、さらなるサプライズが用意されていた。あの名曲「Frevo」のピアノ&オーケストラ・ヴァージョンである。昨年のソロ・コンサートでも演奏したこの曲に感動を新たにしたのだった。