Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー
セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。
カナダ出身の新進シンガー・ソングライター
2008年05月31日
今春、日本でのデビュー作『海、そして空へ』をリリースしたライラ・ビアリを、丸の内Cotton Clubで観た。ヴォーカル&ピアノのビアリはクリス・ボッティやポーラ・コールのツアーに参加し、今年1月にはスザンヌ・ヴェガの来日公演にも帯同。「同じ年に2度も日本にやって来るとは思っていなかったわ」と語ったビアリは、クラブの客席を埋め尽くした満員のオーディアンスにもさぞや驚いたことだろう。このクラブにはよく足を運んでいるが、ぼくの経験で1,2を争うほどの高い集客である。その要因は土曜日だからだけではあるまい。同作のレコーディング・メンバーでもあるジョージ・コラー(b)、ラーネル・ルイス(ds)とのトリオによるステージは、清涼感溢れるビアリの歌唱が会場を優しく包んだ。そのミュージシャンに関する事前情報があまりない場合、多くの観客は器楽奏者よりもヴォーカリストにシンパシーを示す。わかりやすいということだ。今夜これだけの集客を可能にしたのは、初心者でもとっつきやすいビアリの音楽性にあったのだと思う。演奏中のビアリが裸足であることを発見した時、自然体で音楽に向かう姿勢がそこに重なった。