Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー
セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。
もうひとつの武満徹
2008年06月15日
春と秋の年2回の定期公演(コンサートホール)を継続している角田健一ビッグ・バンド。東京を拠点に活動する楽団はいろいろあるが、メンバーを確保するだけでも大変なこのジャンルを維持するリーダーには、本当に労をねぎらいたい。今日は平成19年度文化庁芸術祭優秀賞受賞記念公演『スイングから武満徹まで』を紀尾井ホールで観た。角田は生前の武満と知己を得なかったが、その後感銘を受けて、他界後の2001年から本格的にレパートリーとして取り組んできた経緯がある。今やファンにはすっかりお馴染みだ。ファースト・セットは武満のナンバーで構成。武満は一般的に現代音楽の作曲家と認知されているが、実はデューク・エリントンに私淑したジャズ・ファン。そんなジャズつながりが下敷きとなって、角田の編曲は原曲のメロディを会場に集った観客にもわかりやすくその魅力が伝わる形で翻案してみせた。セカンド・セットでは「ビッグ・バンドの醍醐味」と題して、デューク・エリントン等の名曲を演奏。こちらのパートではメンバー紹介を兼ねてソロイストのプレイをたっぷりとフィーチャー。各人のキャラクターも浮き彫りになって、客席が沸いた。ぼくはここ4年ほど角田公演に通っているのだが、今回は特にリピーターが多かったようで、メンバーに対する声援がこれまでになく大きかった。アンコールに応えて「ワン・オクロック・ジャンプ」を演奏。さらに予定外のアンコールにまでサービスし、「スイングしなけりゃ意味ないね」で“ビッグ・バンドよ、永遠なれ”のポリシーをアピールしてくれた。