Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー
セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。
国境を超えた超強力トリオ
2008年05月16日
ヘヴィーウエイツ@新宿ピットイン。ペーター・ブロッツマン(ts,as)+佐藤允彦(p,electronics)+森山威男(ds)は、グループ名に違わぬ重量級トリオだ。ブロッツマンは昨年3月に八木美知依(筝)+ポール・ニルセン・ラヴ(ds)とのトリオでピットインに出演しており、ぼくが先日訪れたスタヴァンゲルの「Tou Scene」では同トリオでのステージを務めている。おそらく初めての出会いだと思われるこの3人は、意外にもブロッツマンと佐藤が同じ1941年生まれ。“200歳トリオ”の異名も取る彼らは、しかし年齢から抱く枯れたイメージとは正反対の、暴力的なサウンドでセカンド・セットの幕を開けた。ひたすら疾走し続けるブロッツマンは、一見過剰にカオスを発散するかのような即興演奏だ。しかし一瞬たりとも気が抜けないプレイを聴きながら思ったのは、カオスそのものの奥に存在する主張こそがブロッツマンの企図であること。疲れを知らない森山の演奏はドイツの巨人を迎える日本人ドラマーとして、最適だと体感できた。それにしても今夜のピットインは立ち見まで出る超満員状態で、改めてこのクラブのフリー・ジャズ人気の高さを裏付けた。筋金入りと思われる年長者ばかりでなく、チケットぴあで購入したような若い音楽ファンまで。ジャンル聴きしない彼らにとって面白い音楽がそこにある、ということなのだと感じた一夜であった。