Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー
セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。
梅雨時に癒される恒例のホール・コンサート
2008年06月08日
「ジャズ・エリート2008」@五反田・ゆうぽうとホール。秋の「コンコード・ジャズ祭」と並ぶ、富士通協賛のジャズ・イヴェントである。今回は「世界のスーパー・レディ」と題して、3組の女性アーティストが出演。日本、オーストラリア、イタリアと、国際的な顔ぶれが揃った。トップ・バッターを務めたのは予想に反して、3人の中では最もキャリアがあって世界的な名声を獲得している秋吉敏子だった。約30年間にわたって率いたビッグ・バンドのメイン・メンバーで、公私共に最良のパートナーであるルー・タバキンとのデュオだ。すべてのファンが惜しんだビッグ・バンドの解散に際して、トシコは「もっとピアノの腕を磨きたい」旨のコメントを発表。音楽家として理想を追求する飽くなき姿勢に、誰もが感服した。そんなトシコのモチベーションは1曲目から全開。ピアノを最大限に鳴らすことに全力を傾ける姿には、本当に驚かされた。タバキンも全力で呼応した、濃密な50分のステージに酔った。今月、彼らのデュオ作『ヴィンテージ』のリリースが控えている。休憩をはさんで2組のヴォーカリストが登場。本国以上に日本で人気が高い(?)ジャネット・サイデルは、実兄のベーシスト=デヴィッド・サイデルとウクレレもこなすギタリスト=チャック・モーガンを従えて、親しみやすい歌唱を聴かせた。トリを務めたロバータ・ガンバリーニはトリオをバックに、ワイドレンジな歌声で魅了。持ちネタの口真似トロンボーンに、少女時代からの生粋のジャズ・ファンぶりを感じさせた。アンコールではサイデル・グループとガンバリーニ・グループの共演が実現して、観客を大いに喜ばせたのだった。