Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー
セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。
衝撃的な舞台
2008年07月14日
松たか子の舞台に通うようになって10年あまり。1年に3回の演目がほぼ定例になっている。「ラ・マンチャの男」に続く今年2回目の舞台は、「SISTERS」。渋谷・パルコ劇場に足を運んだ。この小屋には5年前に幸四郎さん、紀保さんと共演した「夏ホテル」以来の来場となる。役者がマイクを使用しないので、地金が明らかになる点でも、演劇ファンにはたまらないのだろう。阿佐ヶ谷スパイダースを主宰する作・演出家=長塚圭史の舞台を観るのは、今回が初めて。ということでほとんど先入観なしに臨んだのだが、内容は衝撃的だった。たかちゃんは暗い過去を抱える新婚さんという役柄で、次第にその過去が明らかになる設定。そこに近親相姦とエディプス・コンプレックスが絡み合い、終盤に向けて舞台は壮絶なシーンが展開される。
これまでの舞台でもフットワークの良さを実証済みのたかちゃんが、今回は男を刺殺する役を見事に演じ切った。この芝居でなければ聞けないセリフの数々にも圧倒された。トラウマに火がついて、狂人へと変貌する様の壮絶な演技はかつてなかったほどの熱演。決してハッピー・エンドではなく、重い感覚が残るのだが、家族や人間関係のあり方を再考させられる点で、たかちゃんのキャリアにもプラスになったはず。この役を引き受けたたかちゃんに拍手を送りたいと思った。