Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー

セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。

「ニューヨークのため息」のラスト・コンサート

2008年09月23日

 長い間活躍しているミュージシャンには、これ1枚で一生ファンを引き付けられるというくらいの決定的代表作を持っている者が多い。その意味でクリフォード・ブラウンとの共演作を残したヘレン・メリルは、日本で絶大な人気を誇るこのジャンルのトップ・ヴォーカリストと言えるだろう。60年代には日本に居住し、アルバムを残しているメリルは、毎年のように来日公演を行って、ファンに健在ぶりを示してきた。今夜は「さよならコンサート」と題したコンサートを、五反田ゆうぽうとで観た。メリルがさよならとは。引退するということなのだろうか。誰もが思ったに違いない疑問を抱えながら、会場へ向かう。
 ファースト・セットはスコット・ハミルトン(ts)+ウォーレン・ヴァシェ(cor)+テッド・ローゼンタール(p)+スティーヴ・ラスピナ(b)+テリー・クラーク(ds)によるインスト。トリオ、カルテット、クインテットと曲によって編成を変えながら進行した。ヴォーカリストのライヴの場合、バンドが1,2曲演奏した後に主役が登場するのが通例なのだが、結局メリルは姿を現さなかった。セカンド・セットに時間的にも厚みを置く構成なのか。ようやく登場したメリルは「ボーン・トゥ・ビー・ブルー」「ユード・ビー・ソー・ナイス」「アントニオの歌」等、お馴染みのレパートリーを披露。アンコールでは当たり曲「ス・ワンダフル」でファンのニーズに応えてくれた。ここまでメリルの出番は1時間足らず。「さよなら」と冠したコンサートにしてはあっさりしていたのは何故なのか。1929年生まれのメリルは来年80歳という節目の年を迎える。もう何も思い残すことのない音楽家人生だったということなのだと思った。

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