Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー
セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。
老舗ユニットが待望の初来日
2008年09月29日
オレゴン@ビルボード・ライヴ東京。70年代半ばに初めて聴いて以来、約30年間このユニットのファンであり続けている。ところが不思議なことに、オレゴンが来日公演を行う機会はこれまでなかった。去る5月にノルウェーのジャズ・フェスティヴァル“MaiJazz”に招待された時、たまたまブッキングされていたので、ステージを観ることができた。ぼくにとっての初体験となったオレゴンのパフォーマンスは、数多くの作品を通じて認識していた印象に比べて、いい意味で違う部分もあった。その一番の理由は故コリン・ウォルコットに代わって加入したドラムス&パーカッション=マイク・ウォーカーの存在による。管楽器担当者が1人抜け、打楽器専任のミュージシャンが加わったことは、バンド・サウンドに大きな変化をもたらした。
今夜は思いがけない形で実現したオレゴンの初来日公演である。MCを務めたポール・マッキャンドレスは「結成38年にしてようやく実現した」と言っていたが、会場に集ったファンにも万感の思いは同じだったに違いない。2つのデュオ・ナンバーを盛り込んだプログラムは、オレゴンの名曲選ではなく最新作を中心としたものだった。初来日を勘案するのではなく、現在の等身大のオレゴンを示してくれたのは、それはそれとしてファンには嬉しい。ラルフ・タウナーがキーボードを、ウォーカーがエレクトリック・パーカッションを使用し、アップ・トゥ・デイトな音作りを見せてくれたのも収穫。終演後、マッキャンドレスに話を聞いた。初来日まで何故こんなに長く時間がかかってしまったのか。「誰もぼくたちを呼んでくれなかったんだよ」。