Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー
セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。
ストイックなスイス人ピアニストの異色舞台
2008年04月26日
ニック・ベルチュ@新宿ピットイン。先頃ECM第2弾『ホロン』をリリースしたばかりの、タイミングのいい再来日である。前回、2006年の来日ではスイス大使館の関係者向けイヴェントで初めて会い、直後のクラブ公演でステージをレポートした。今夜は前回のグループ公演ではなく、ダンサーとのデュオ。会場は若い音楽ファンを中心に満席となった。ファースト・セットはニックのソロ・ピアノで、武士道に傾倒し日常的に心身を鍛えている成果が表現されたパフォーマンスであった。自己を律する表現者の姿勢というものを改めて考えさせられたステージ。セカンド・セットに進むと、場内の照明が落とされ、後方からダンサーが登場。いわゆる白塗り系の舞踏家が、ゆっくりとステージへ歩を進める。観客は固唾を呑んで、ダンサーの一挙手一投足に注視。その間、ニックはピアノで伴奏者を務め、自らが主役になる場面はなかった。
終演後、本人に話を聞くと、数年前からコラボレーションを続けている関係だとのこと。ファンからサインをせがまれるなど、日本でも着実に支持者を増やしている様子を目の当たりにして、ぼくも嬉しくなった。