Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー
セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。
30年ぶりの異例なデュオ・ライヴ
2008年04月30日
チック・コリア&上原ひろみ@日本武道館公演が発表された時、真っ先に反応したのはぼくの知人独身30代女性だった。いまやひろみちゃんは、ジャズ・ファンではない女性をも虜にするポテンシャルを持っている。同館でジャズ・デュオ公演が開催されるのは、チック・コリア&ハービー・ハンコック以来、30年ぶり。ぼく自身、ここでコンサートを観るのは実に久しぶりである。共に1960年代のマイルス・デイヴィス・グループ出身者のチック&ハービーに比べると、チック&上原は出自もキャリアも違うパートナーシップ。一昨年の「東京JAZZ」およびアルバム化された昨年の「ブルーノート東京」公演を経て迎えた、この大ホール・コンサートである。
チック&ハービー公演ではアリーナ中央にステージが作られ、全角度に集客したが、今回は通常の北側にセッティング。その代わりステージ両側にプロジェクターを設置して、2人の手の動きが楽しめるという趣向だ。『デュエット』収録曲を中心とした演奏は、最新作の世界を再現する趣でありながら、予定調和に終わらない2人の決意とアイデアが感じられて、嬉しく思った。それぞれ5000人の集客力があるとしても、日本武道館のキャパシティは難関。今回、そのハードルに果敢に挑んだことも評価したい。日本のジャズ史に大きな足跡を刻んだ一夜となった。