Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー
セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。
祭日のホール・コンサート
2008年03月20日
平日のライヴは午後7:00以降の開演が多いのだが、日曜日と祭日はもっと早いスケジュールが設定されることが少なくない。本日は2つの会場をハシゴした。まず午後2:00開演のイヴェントが青柳いづみこ「ドビュッシー・シリーズふたたび」第1回。青柳さんはミュージック・ペンクラブ・ジャパンの会員同士ということで、これまでに何度かお話する機会があった。ピアニストであるばかりでなく、文筆家としても活躍されている才人だ。日本におけるドビュッシー演奏の第一人者は、武満徹の楽曲との2本立てにより、東洋と西洋の時間の流れに関して、独自の視点を明らかにした。後半ではジェラール・プーレ(vln)とのデュオ&トークで、観客に得難い時間をもたらした。
終演後、青山1丁目へ移動。鈴木良雄『ラヴ・レター』コンサート@草月ホール。新作のリリース記念ライヴであり、鈴木の音楽活動40周年記念コンサートでもある。“チンさん”の愛称で親しまれている鈴木は70年代に渡米し、ニューヨークでアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズに参加するなど、本場でベースの腕を磨いたことでも知られるパイオニア。自身のバンド=イースト・バウンス以降は、「心地よいサウンド」を一貫して追求しており、今夜のステージを務めたグループ“ベース・トーク”もその音楽性を体現している。メンバーの中で特に印象に残ったのが井上信平。各種フルートを駆使した演奏は、ジャズでは持ち替え楽器のイメージもあるこのジャンルの使い手として、強く存在感をアピールしたのだった。節目を迎えた鈴木にはこれを機に、さらなる活躍に期待したい。