Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー

セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。

ジャンルを越境した音楽家のホール・コンサート

2008年01月23日

 「ジ・アート・オブ・ボビー・マクファーリン・スーパー・オーケストラ・コンサート」と題したステージを、「すみだトリフォニーホール」で観る。今夜は2日連続公演の2日目。ジャズ・シーンで80年代にデビューした時は、ヴォーカルの歴史を変えるほどのインパクトがある驚異的なテクニックで一世を風靡。その後「ドント・ウォーリー・ビー・ハッピー」の大ヒットで、広く一般的にも知名度を高めた。ここまではアル・ジャロウと並ぶ新感覚の男性ジャズ・ヴォーカリストというポジションだったが、90年代に入ってクラシックの指揮者としての活動にも積極的に取り組むようになり、完全に独自の道を追求。現在はジャンルを越境した音楽家としての評価を確立している。数年前に東京で観たステージは、ソロのヴォイス・パフォーマンスを中心に日本人のゲストを迎えた内容だったが、今回は完全にコンセプトを変えたオーケストラとの共演となった。
 ファースト・セットはマクファーリンが新日本フィルハーモニー交響楽団を指揮するレナード・バーンスタイン「《キャンディード》序曲」でスタート。ステージにマクファーリンが現れて指揮棒を振り、オケの音が出た瞬間から、会場は生き生きとしたサウンドに包まれた。しなやかで力強いストリングスの響き。これはマクファーリンならではの身体感覚がそのままオケ全体に反映されたものと聴いた。欧米各国の主要オーケストラでタクトを振ってきたキャリアが、初共演となる日本のオケとのナチュラルな共同作業を可能にしたのだ。次にスモール・オーケストラに移って、モーツアルトの「ヴァイオリン協奏曲第5番」を演奏。フューチャリング・アーティストのジョセフ・リン(vln)が卓越した技巧の持ち主であることを知るまでに、多くの時間を必要としなかった。その後マクファーリン&リンのデュオを経て、ヴォイス・ソロへ移行。途中客席に降りて、観客と1対1で即興のデュオを演じると、会場は大いに盛り上がった。セカンド・セットは再びオケを指揮したメンデルスゾーン「交響曲第4番」。アンコールでは楽団員に指示をして、即興的に「ツァラトゥストラ」のテーマを演奏。さらに観客を巻き込んだ「新世界」で本領を発揮し、ジャズとクラシックの垣根を見事に取り払ってみせたのだった。

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