Jazz Diary 杉田宏樹のジャズダイアリー

セブンオークスとコラボレートしている音楽評論家の杉田宏樹さんによる「ライブ・ダイアリー」です。

現役最長老ピアニストのソロ・コンサート

2008年01月11日

 平均寿命が伸びているとはいえ、89歳の男性となれば世界標準での長寿も長寿。まして各国を仕事で飛び回るジャズ・ピアニストならば、一般人よりもリスクは高いはず。今夜は親日家としても人気者であるハンク・ジョーンズのコンサートを「すみだトリフォニー・ホール」で観た。このホールでは過去にブラッド・メルドーやゴンサロ・ルバルカバのピアノ・ソロ公演を企画しており、今回はその流れでのイヴェントである。ビバップ期にチャーリー・パーカーと共演し、70年代にザ・グレイト・ジャズ・トリオで時ならぬ注目を集めた超ヴェテラン。ハンクの音楽性とメルドー、ゴンサロの実績からすると、このソロ・コンサートはやや場違いな印象を抱いていたというのが正直なところだ。そんな気分で臨んだステージのファースト・セットは、デューク・エリントンの「A列車で行こう」でスタート。スタンダード・ナンバーによる約50分で構成。セカンド・セットはソニー・ロリンズの「セント・トーマス」で始まり、やはり名曲の数々を演奏した。このようなプログムは事前に予想できたもの。ではなぜトリフォニー・ホールがハンクをブッキングしたのか、を念頭に置きながら演奏を聴いていたある瞬間、合点がいった。1曲終わるごとにハンクがマイクを手にして演奏曲の作曲家やエピソードについて話をする。このステージがジョージ・ガーシュイン、ジェローム・カーン、ジミー・ヴァン・ヒューゼン…ら、20世紀のポピュラー音楽を代表するコンポーザーへのトリビュートという大テーマの下にプログラムが構成されたことが浮き彫りになった。いや実際は無数のスタンダード・レパートリーを持つハンクの裁量に委ねられていたのだろう。ただそうだとしてもこのタイミングでハンクがこの企画コンサートに関わったことは、重いメッセ?ジを持つ。2度目のアンコールに登場したハンクは、1曲目と同じエリントンの「イン・ア・センチメンタル・ムード」を演奏。観客のアンコールを受けて再度、姿を現したハンクは、ピアノ近くにあったマイクを上着の中に入れて退場。無制限のアンコールに区切りをつけるための、有効な対応策だと納得した。

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